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【英文論考要旨】 “12カ月にわたるウクライナでの戦争が明らかした、市街戦に関する4つの基本的な教訓” (TWELVE MONTHS OF WAR IN UKRAINE HAVE REVEALED FOUR FUNDAMENTAL LESSONS ON URBAN WARFARE, by John Spencer & Liam Collins, MWI, 23.02.2023)

ロシアの侵略から1年を迎えるウクライナ。この地での戦闘は様々な様相を示しているが、それを特徴づけるものの一つが都市エリアでの戦闘だ。そこから導き出せる教訓は、過去の戦争からも見出せるものではあるが、しばしば無視されるか、忘れられるかのいずれかである。

教訓①:戦争において都市は重要だ。たとえ軍事的に無価値な都市でさえも。

都市は交通の要衝であるなど軍事的な価値を持つことがあり、また、首都など戦略的重要性をもつ都市もある。そうでない場合でも、バフムートやシェヴェロドネツィク・リシチャンシクのように、政治的象徴的な価値が付与される場合もある。それゆえに市街戦は避けられない。

教訓②:市街戦の基本的な任務は、掃討戦ではない。

密集した市街地に籠る対照的な戦力構成の敵軍を、一区画づつ、一家屋づつ、一部屋づつ掃討することは、市街戦の基本的な任務ではない。市街戦でより重要なことは、火力と機動を用いて、守備隊もしくは攻撃部隊を不利な状況に追い込むことだ。そうすることで、たとえばヘルソン市のロシア軍がそうであったように、相手は都市での戦闘を避けざるを得なくなる。

教訓③:都市において、軍部隊は攻守両面に対応できる必要がある。そして、その切り替えは迅速でなければならない。

現下のウクライナにおける戦争では、おおむねウクライナ軍が守備側であり、ロシア軍が攻撃側である。しかし、守備側も好機を捉えて反撃をする。市街戦においては、攻守それぞれの能力のみならず、攻守をすばやく切り替える能力も必要とされる。

緒戦期のホストメリ空港戦が好例だ。ロシア軍空中強襲部隊は、ヘリボーンによって空港を抑えたが、防御に対する意識を欠いた結果、制圧日の夜にウクライナ軍の反撃に遭った。なお、ウクライナ側はこの空港を奪還したのち、ここでの守備は困難と判断し、即座に撤退した。だが、滑走路に損傷を与えたことで、この空港を首都キーウへ向かうための空挺堡にするというロシア軍の企図は砕かれた。

教訓④:諸兵科連合機動戦術を実行できない軍隊は、損失に苦しむ。

市街戦は諸兵科連合機動戦術にとって、究極のテストの場である。戦車・歩兵・工兵・情報活動といった要素を一体化して任務遂行できる側が、市街戦で優位に立つ。ロシア軍にはそれが欠いており、唯一の優位性は物量だけだ。

ロシア軍のアプローチは、まずは大規模砲撃、その後に大量の歩兵の投入というものだ。これではいたずらに損害が増えるのみで、成功した場合ですら、その成果に見合わない犠牲が生じる。

ウクライナは広大な面積の国であるが、その一方で都市エリアは相対的に少ない。そのようなウクライナでさえ、マリウポリ、シェヴェロドネツィク、リシチャンシク、バフムート……と都市が焦点となる。今後の戦争に関する教訓を探す上で、この事実がすべてを物語っている。

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