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【報告抄訳】ISW ロシアによる攻勢戦役評価 2030 ET 22.07.2023 “反攻作戦の進捗状況に関するウクライナ側評価”

※以下は、戦争研究所(ISW)の7/22付ウクライナ情勢報告から添付文書画像の部分を日本語に訳したものになります。

https://www.understandingwar.org/sites/default/files/July%2022%20Russian%20Offensive%20Campaign%20Assessment%20PDF_0.pdf

ウクライナ軍は7月22日、戦線上の少なくとも3箇所で反攻作戦を続けた。ウクライナ軍参謀本部の報告によると、ウクライナ軍はベルジャンシク方向(ザポリージャ州〜ドネツィク州地域)とメリトポリ方向(ザポリージャ州西部)で攻勢作戦を進めた。ロシア国防省は、クレミンナ南方、ルハンシク州、バフムート地区において、14回のウクライナ軍攻撃を撃退したと主張した。なお、ウクライナ軍参謀本部は7月22日、情勢報告を発表しなかった。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンシキー大統領は、ウクライナ軍反攻作戦がまもなくテンポを上げていく可能性に言及し、また、反攻作戦が捗らない理由の一端として、物資が限られていることを挙げた。7月21日、アスペン安全保障フォーラムの場でゼレンシキーが語ったところによると、ウクライナ軍は春に反攻作戦を発動する計画でいたが、地雷除去装備も含む軍事装備と弾薬不足、国外で続いていたウクライナ軍訓練により、延期を余儀なくされたとのことだ。ウクライナ軍反攻作戦の開始が遅れたことが、ロシア軍による多層防衛網及び地雷原の構築を許す結果になったと、ゼレンシキーは述べている。2023年1月にISWは次のような評価分析を示した。ウクライナへの西側製兵器及び物資の供与は、反攻作戦を成功裡に実施するために、ウクライナ側が作戦開始前に築いておく能力にとって必須事項であり、ウクライナに高性能の西側製システムを送るという西側の約束と実際の到着の時間的ずれが、大規模な反攻作戦を着手し維持するためのウクライナの能力を阻害する可能性が高いというのが、ISWが過去に示した評価だ。ゼレンシキーは、地雷処理作業が現在進められている結果、反攻作戦のテンポはまもなく上がっていく可能性があると述べた。米国のアントニー・ブリンケン国務長官は7月21日のアスペン安全保障フォーラムの場で、ウクライナ反攻作戦の結論を出すには早過ぎると述べたうえで、反攻用に準備した戦力すべてをキーウが投入した際、ウクライナは戦場において「相当に重要な影響を生じさせる」ことになる可能性が高いと語った。

複数のウクライナ当局者は7月22日、前線後方のロシア軍を狙ったウクライナ軍による阻止攻撃作戦が、ロシア軍兵站能力と対砲兵射撃能力を低下させることに成功しており、阻止攻撃は消耗の流れをウクライナ側有利に傾けることに貢献している可能性が大であると述べた。ウクライナ軍参謀本部のミサイル部隊・砲兵・無人システム総局の長であるセルヒー・バラノフ大佐は7月22日に、ロシア側損失の約90%がウクライナ軍ミサイル・砲兵部隊によるものだと述べた。西側製の精密誘導ミサイル・砲撃システムおかげで、ウクライナ軍ミサイル・砲兵部隊は長距離「打撃火力」を生み出しているとバラノフは述べ、ウクライナ軍の攻撃が強力かつ正確な結果、ロシア軍は効果的な対砲兵射撃がもはやできなくなっていると加えた。ウクライナ軍南部作戦管区報道官のナタリア・フメニュク大佐は7月22日に、ロシア軍の戦線後方弾薬集積地に対するウクライナ軍の攻撃が、ロシア軍の兵站問題を引き起こしていると指摘した。フメニュクはまた、この傾向はヘルソン州でのロシア軍砲撃の減少にあらわれており、この砲撃減少はこの地域のロシア軍が「砲弾飢餓」に陥っていることを示唆しているとも指摘した。7月13日にウクライナ軍タヴリーシク部隊集団司令官オレクサンドル・タルナウシキー准将はウクライナ軍反攻をボクシングに喩えて、ウクライナ軍は接近戦を避けるために「腕の長さ」の位置に敵をとどめておこうとしていると語り、その理由として、ウクライナがロシア軍を長距離から効果的に打ち破ることができる点を示した。この発言は、ウクライナが南部及び東部での阻止攻撃を継続していること反映したものである可能性が高い。バラノフ、フメニュク、タルナウシキーの発言から、ウクライナ軍が阻止攻撃作戦を上手く遂行していることが示唆される。この作戦は消耗の非対称的な偏りを生み出すウクライナ軍プランの中心的な側面であり、消耗の非対称的な偏りが生じることで、ウクライナ軍は領土奪還の進捗が遅れるという代価を払いながらマンパワーを保持でき、その一方でロシア軍のマンパワーと装備を徐々に削っていくことができる。

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