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【Twitterスレッド和訳】機甲突破に対するロシア軍の対抗戦術(@Tatarigami_UA氏)

以下は、ウクライナ軍予備役士官の@Tatarigami_UA氏が投稿した上記Twitterスレッドの和訳になります。

私は最近、価値あるロシア軍文書を入手した。そのタイトルは「敵側戦車・機械化縦隊への推奨対抗法」だ。このスレッドでは、この教本の一部の分析を行い、その内容から得られる見解を示すつもりだ。

この教本では、ウクライナ軍が諸兵科連合部隊編制を活用していることを強調している。それによると、ウクライナ軍の戦術はNATO戦略を基盤に、現地状況を加味したうえで、ウクライナ軍指揮官の頭に叩き込まれた「NATO流戦闘アルゴリズム」に沿って遂行される。

今回のテーマの章タイトルは、「『貫通』回廊経由の装甲車両を伴う正面攻撃」である。より明確に示すため、私はこの本記載の図像に私自身による図像を加えていくつもりだ。

この教本によると、ウクライナ軍は最初の段階で小規模偵察グループによる偵察活動を実行するという。

このグループは小隊規模(30人)の部隊であることが多く、そこに戦車1〜2両とBMP歩兵戦闘車2〜3両が増強で加わる。注目点として、火器を搭載したピックアップトラックのような代用車両への言及がある。各グループは、防衛線の手前5〜10km以内で任務を遂行する。

それに続く段階は、偵察チームによる防衛線の脆弱点特定に続く、攻撃部隊による突破予定地点に向けての迅速な前進だ。また、ウクライナ軍攻撃縦隊の2つの異なった構成内容について言及されている。

  • 8〜10両の戦車縦隊。歩兵は4両目もしくは5両目以降の装甲車両に跨乗する。

  • 混成縦隊。5〜9両の戦車を先頭にIFV(歩兵戦闘車)が後続するという形をとる。

突破地点に向かって進むなか、砲兵は防衛線の横幅全域に対して攻勢準備射撃を行う。その目的は2つある。一つは攻撃の主方向軸を曖昧にすること。もう一つは防衛側戦力の機動能力の阻害である。

ウクライナ軍は戦闘隊形に転換したり、歩兵を降車させることなく、縦隊のままで行動する。ウクライナ軍は行軍序列のままで迅速に進み、開けた地形を通る最善ルートに沿って移動する。その目的は前線部隊のすみやかな突破であり、それによる防御部隊の崩壊を予期している。

そのあと、ウクライナ軍攻撃部隊はロシア軍第二梯団部隊を迂回し、最も近い町の制圧を目指す。そこへの接近を行うなか、ウクライナ軍車両はスピードを上げ、町の外周部を激しく砲撃する。それによって、防衛部隊を町の内側深くへ追い込み、その結果、歩兵の安全な降車を確保する。

ロシア軍はこの戦術の強みを分析したうえで、対抗措置を示している。ロシア軍の分析によると、ウクライナ軍の目的はロシア軍部隊を圧倒し、協調のとれた防衛を妨げることにある。攻撃方向は、偵察グループが特定した弱点に基づいて決定される。

言及されている弱み

しっかりと確立された偵察活動によって、ウクライナ軍攻撃縦隊の機動を事前に察知することができる。さらに、前進中の攻撃部隊は、火力投射能力と攻撃能力の制約を受ける。それは戦闘参加できるのが隊列先頭の2〜3両の戦車(またはBMP)に限られるからだ。

また、突破地点をすばやく選ぶことによって、地雷埋設箇所の発見が常にできるとは限らない可能性に言及している。それに加えて、攻撃をさらに進めていくことを諦めさせることになりうる要素として、司令部もしくは支援砲兵との連絡途絶をあげている。

この戦術に対抗するために著者が強調しているのは、5km範囲で攻撃縦隊の機動を探知するための偵察活動実施の必要性だ。また、対戦車地雷原は少なくとも3列設けるべきで、部隊間の境界にそれぞれ、指定された責任ある指揮官を置くべきだ。

前進を遅らせるために、攻撃部隊の移動路になる可能性が高い場所に、砲兵火力の目標を設定しておくべきだ。指揮官は対戦車予備隊を用意しておくべきで、機械化歩兵小隊内に対戦車グループをつくっておくべきである。

それに加えて、ロシア軍指揮官は即応態勢にある航空戦力による空襲計画を立てておき、対戦車ミサイルと無誘導ロケット弾を装備したヘリコプターを活用すべきだ。加えて著者は、他の各種アセットの隠蔽とカモフラージュを最大限行うことも強調している。

ウクライナ軍が1000〜2000m範囲に接近したとき、戦車とMT-12対戦車砲による直接照準射撃を行い、それを対戦車誘導ミサイルが支援する。ウクライナ軍が地雷原を突破し、ロシア軍陣地から250〜300m範囲に到達したら、戦車駆逐チームが行動に移る。

突破が起きた際、対戦車装備は隊列を切り離すポジションに配置される。もしウクライナ軍が陣地突破に成功した場合、戦闘の影響が及んでいない地点にいる部隊による側面攻撃を開始し、間隙を埋める措置をとる。それによって、敵予備部隊の前進を妨げる。

まとめると、注意すべきなのは、ここに表されているのはロシア軍によるウクライナ軍の行動への認識ということだ。だが、戦場はしばしば予期しない形で立ち現れ、つくり上げられた計画とアルゴリズムから逸れるものだ。それは、とりわけ攻撃部隊の武装と行動に関係している。

ロシア軍の対抗措置は複数の構成要素に、例えば航空戦力、地雷原、偵察、砲兵、対戦車装備といったものに強く依存している。このような防御を効果的に実行するには、部隊間の一定水準の協同が必要になり、それにより有効な防御が確かになる。

ご注意願いたいのは、このスレッドでは教本に記載された特定の戦術的要素に絞って説明しており、文書全体の包括的分析を行っているわけではないということだ。今後のスレッドでは、さまざまな戦術とそれへの対抗措置を含む、他の章を分析する予定である。

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