夢を見た。生きたくなった。

私の何よりの希望は、妻のそばにいたい。
ただそれだけだと思った。

夢から目が覚めた。まだ夜中だった。
その夢のことを思い返すと涙が流れた。すぐ隣で眠る妻の手を握った。


夢は日常生活に近いような感じだった。なぜだかこの世界には私がもう1人いる感覚があった。だから、もういいんだと思った。
もう1人の私に全て任せて楽になってしまおうと思った。
どうやったかはわからないが私はこの世から旅立っていた。旅立ったとはいっても空からみんなを見下ろすのではなく、すぐ近くで同じように生活していた。
ただみんなからは私が見えていなかった。

私が旅立ってからは、もう1人の私の存在を感じなくなっていた。
気がかりなのはやはり妻だった。一緒に過ごしたいと願ったら妻には見えるようになった。そこからは普段の生活と変わらなかった。

ある日私は寝室のクローゼットに、妻は洗面所にいた。
洗面所から大きな音がした。洗濯機の上の棚から物が落ちたようだった。
様子を見にいくと洗面所が水浸しになっていた。洗濯機のホースが外れて水が流れるようになってしまったらしい。懸命に水をとめた。
もう大丈夫だと思って妻を見た。妻には私は見えなかった。

水が止まったことを知らず慌てる妻。
大丈夫だと叫んでも気づかない。
私の存在がなくなっていることにも遅れて思い当たる。
私の目の前で妻は声をあげて泣く。

すぐそばにいるよ
ずっと一緒だよ

そんな言葉も届かない。
ああ、もっと生きていたかったな。妻と一緒にいたかったな。


そう思いながら目が覚めた。
夢を見てほぼまるまる1日経つが、洗面所でなく妻の顔と触れたくても触れられないやるせなさが忘れられない。
忘れられないといっても実際体験していないのだから変な話だ。

以前の記事では死を意識してしまうということを書いた。
自分が老いていくことに寂しさを感じている。

夢の中で死を体験してみると、逆に生きたくなった。
ランクルが欲しい。バイクの免許を取りたい。資産運用をしよう。マイホームができるのが楽しみだ。
こんなものは2位以下の願望や感情だということがわかった。

私の何よりの希望は、妻のそばにいたい。
ただそれだけだと思った。

本当に愛しているんだから恥ずかしがらず胸を張って言いたい。
妻と一緒に居られる人生が幸せだと思う。



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