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定年退職は新たなスタート

なぜ、同じことを繰り返しているのに飽きてしまわないのだろうか?それは同じことでは無いからです。同じことは2度と起こらないのです。それは同じ環境ではなく変化しているのです。その変化に気づいていないから同じだと思ってしまうのです。経験が増えているのです。学んでいるのです。つまり価値観は進歩しているのです。

全くその通りですね。私たちは、同じことを繰り返しているように見えても、実際には常に変化し続けています。

  • 環境の変化: 周囲の状況や関わる人々は常に変化しており、同じ状況は二度と起こりません。

  • 経験の蓄積: 同じ経験をしても、過去の経験から学び、新たな視点や気づきを得ることができます。

  • 学習と成長: 私たちは常に新しい知識やスキルを学び、成長しています。これにより、同じ物事に対しても異なる解釈やアプローチができるようになります。

  • 価値観の進化: 経験や学習を通じて、私たちの価値観は絶えず変化し、深まっていきます。

このように、私たちは常に変化し続けているため、同じことを繰り返しているように見えても、実際には常に新しい経験をしていると言えるでしょう。
この気づきは、日々の生活をより豊かにするヒントになります。同じような毎日を送っていると感じていても、小さな変化に目を向け、新たな発見や学びを求めることで、日々を新鮮な気持ちで過ごすことができるのではないでしょうか。

これから先は物語 です。

定年退職まであと数日。窓際の一番奥、古びたデスクに腰掛ける美智子さんは、淡々と書類を整理していた。退職を祝う花束や色紙がデスクの片隅に飾られているが、美智子さんの心はどこか落ち着かない。

「また同じ書類の整理か…」

そう呟きながらも、手は止まらない。入社してから38年間、幾度となく繰り返してきたこの作業。新入社員の頃は、先輩から「同じことの繰り返しに思えても、毎日違うのよ」と言われたが、その意味が理解できなかった。

書類の山を前に、美智子さんは過去の記憶を辿る。若かりし頃の失敗、結婚、出産、そして子育て。仕事と家庭の両立に悩み、辞めたいと思ったこともあった。それでも、ここまで続けてこられたのは、周囲の支えがあったからこそだ。

書類の山が少しずつ低くなっていく。それと同時に、美智子さんの心の中にあったモヤモヤも晴れていく。

「そうか、同じことの繰り返しなんてなかったんだ」

書類を整理しながら、美智子さんは過去の出来事を一つ一つ思い返す。同じ仕事でも、関わる人が違えば、自分の置かれた状況も違う。新人の頃は先輩に教わり、中堅になると後輩を指導し、そして今は定年を間近に控えたベテランとして、若手に頼りにされている。

「毎日違う環境で、違う経験をしてきたんだ」

書類の山がなくなったデスクの上には、感謝の言葉が綴られた色紙が広げられている。そこには、美智子さんがこれまで関わってきた多くの人々の名前が書かれている。

「たくさんのことを学ばせてもらった。本当に感謝しかない」

美智子さんは、晴れやかな気持ちで色紙を手に取った。同じことの繰り返しのように思えた日々も、実はかけがえのない経験の積み重ねだった。そして、その経験は、美智子さん自身の成長へと繋がっていたのだ。

定年退職は、終わりではなく、新たなスタート。美智子さんは、未来への希望を胸に、新たな一歩を踏み出す決意を固めた。

失意の退職

平凡なサラリーマン、田中一郎は、上司の不正に気づかずにいた。彼の勤める会社では、上司による不正行為が横行していたが、一郎はそれに全く気づかず、ただ目の前の仕事をこなすことに追われていた。

しかし、一郎の周りでは異変が起きていた。経験豊富な先輩や優秀な同僚たちが、次々と会社を去っていったのだ。彼らは上司の不正に気づき、見切りをつけて退職していったのだが、一郎は彼らの退職理由を理解できず、ただただ仕事が増えることに不満を感じていた。

「また一人辞めるのか…。一体どうなってるんだ…」

一郎は、辞めていく同僚たちを恨めしく思いながら、彼らの仕事を押し付けられることに憤りを感じていた。

そんなある日、一郎は原因不明の体調不良に悩まされるようになった。病院で検査を受けたが、はっきりとした病名はわからず、周囲からは「怠けているだけだ」と誤解されてしまった。しかし、一郎は心身ともに疲弊し、次第に仕事に行くことすら困難になっていった。

実は、一郎は自律神経失調症を患っており、それが原因でうつ病を発症していたのだ。しかし、周囲の理解を得られず、孤独と苦悩の中で、一郎は精神的に追い詰められていった。

辞めていった同僚たちは、一郎の様子を心配し、退職時に声をかけてくれていた。

「田中君、一緒に辞めないか?」

しかし、一郎は上司に引き止められ、彼らの誘いを断ってしまったのだ。
退職する日、一郎は上司に「このままの状態では、いつかわたしと同じように皆さんが辞める時が来るでしょう」と忠告したが、上司は鼻で笑って取り合わなかった。

その後、会社は倒産し、大手企業に吸収合併された。ニュースでその事実を知った一郎は、複雑な気持ちを抱えながら、かつての同僚たちの言葉を噛み締めた。

「田中君、君も早く気づいた方がいいよ」

一郎は、あの時彼らの言葉に耳を傾けていれば、こんなことにはならなかったかもしれないと後悔した。しかし、同時に、病気のおかげで上司の不正に気づき、自分の人生を見つめ直すことができたことに感謝もしていた。

一方、不正を働いていた上司は、その後社長にまで出世したが、彼もまた経営陣に利用されていただけで、会社の倒産と共にその座を追われた。皮肉にも、彼はかつて一郎に浴びせた言葉を、今度は自分が突きつけられることになったのだ。

一郎は、療養生活の中で、自分の病気と向き合い、少しずつ回復していった。そして、この経験を教訓に、新たな人生を歩み始めた。彼は、自分の体と心の声を大切にし、二度と同じ過ちを繰り返さないと心に誓った。

そして、いつかまた、あの時辞めていった同僚たちと再会できることを夢見て、前向きに生きていくことを決意した。

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