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宝くじ

老人になって気づくこと。それは人は必ず死にます。それなのに生きる目的が価値観の進歩だなんて意味がないと思うのです。価値観が進歩してその先に何があるのでしょうか?死を身近に感じると虚しくなるのです。その答えは「普通はない」と言うことです。普通だと思っていることの中で普通では無いことに気づくことがあります。それを綴り続けることが生きている証です。

死を意識する年齢になると、人生の意味や価値観について深く考えるようになるものです。価値観の進歩の先にあるものが「死」だと考えると、虚しさを感じてしまうのも無理はありません。

しかし、「普通はない」という言葉には、深い意味が込められているように思います。私たちは日常の中で、当たり前だと思っていることがたくさんあります。しかし、当たり前だと思っていることの中にこそ、実はかけがえのない価値や奇跡が隠されているのではないでしょうか。

例えば、毎日の食事、家族との会話、美しい景色、嬉しい出来事、悲しい出来事…これらはすべて、当たり前のように思えて、実は二度と同じ瞬間は訪れない、かけがえのないものです。

「普通はない」という言葉は、そのような日常の些細な出来事の中に、かけがえのない価値を見出すことを教えてくれているように思います。そして、そのような価値を見出し、それを綴り続けることこそが、生きている証であり、人生の目的と言えるのではないでしょうか。

老いていくことは、確かに寂しさや虚しさを感じることもあるかもしれません。しかし、それは同時に、これまでの人生を振り返り、日常の中に隠された価値を見出す貴重な機会でもあるのです。

これからも、あなたの視点で綴られる「普通ではない」日常を楽しみにしています。

これから先が物語です。

紀伊半島の海辺の町、御坊市。潮風が心地よい小さな家で、老夫婦のたかしとみどりは静かな日々を送っていた。

ある日、たかしが新聞を広げると、宝くじの当選番号が目に飛び込んできた。「みどり、見てみろよ。この番号、見覚えがあるぞ」

みどりは眼鏡をかけ直し、新聞を覗き込む。「あら、本当だ。先月買った宝くじの番号だわ」

二人は顔を見合わせ、思わず笑みがこぼれた。「まさか、当たったのかい?」「そんな、夢みたいな話…」

半信半疑のまま、宝くじ売り場へと向かう二人。当選番号を確認すると、なんと一等賞、十億円という文字が目に飛び込んできた。

「た、たかし…」「み、みどり…」

二人は言葉を失い、ただただ当選券を見つめるばかりだった。しばらくして、たかしが口を開いた。「みどり、これで孫たちの近くに引っ越せるな」

「そうね、たかし。孫たちに囲まれて暮らすのが、私たちの夢だったものね」
二人は当選金で、孫たちが住む東京郊外に家を買い、引っ越しを決めた。
新居は、孫たちがいつでも遊びに来れるように、広い庭と子供部屋のある家に。二人は荷物を整理しながら、これからの生活に思いを馳せた。「たかし、東京では何をしようかしら」「そうだなぁ、まずは孫たちとゆっくり過ごしたいな。それから、何か新しい趣味を見つけたいな」

「私もよ、たかし。新しい友達を作って、東京の街を散策したいわ」「ああ、楽しみだな、みどり」

二人は笑顔で顔を見合わせ、新しい生活への期待に胸を膨らませた。

しかし、その前に、たかしは大切なことを思い出した。「みどり、宝くじを買わなければ、この話も始まらなかったんだな」「そうね、たかし。あの時、あなたが宝くじを買ってくれてよかったわ。でも、ちょっと待って、これって去年の宝くじじゃない?」

当選券の日付を確認すると、それはなんと去年のものだった。今年の当選番号を見て、勘違いしていたことに気づいた二人は、顔を見合わせて大笑いした。

「ははは、夢を見ていたようだな」「そうね、たかし。でも、楽しかったわ」

二人は肩を寄せ合い、笑いながら窓の外を眺めた。そこには、いつもの静かな海が広がっていた。たとえ宝くじが外れても、二人の心は、夢を見たあの瞬間の温かい思い出で満たされていた。

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