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3手先を読む

自分の価値観を信じて他人の価値観を批判することは簡単です。でもそれは批判された人の反感を買ってしまうのです。たとえ相手に非があったとしてもそれは良い結果を生みません。批判せずに時を待つのです。そして新しい事実を積み上げて、相手が理解する時まで時間を惜しんではいけません。短気は損気となるのです。

自分の価値観を信じることは大切ですが、それを他人に押し付けて批判することは、相手との関係を悪化させるだけでなく、建設的な議論や相互理解の機会を逃してしまうことにも繋がります。

たとえ相手が間違っていると思っても、感情的な批判ではなく、冷静に事実を提示し、時間をかけて理解を促すことが、より良い結果を生む可能性を高めます。

「短気は損気」ということわざがあるように、焦らずじっくりと時間をかけることで、相手との信頼関係を築き、より良い未来を築くことができるのではないでしょうか。

結果を出さなければならないと思わずに、3手先の最善策を予想して一歩ずつ進めていく人生は目標が無いようであるのです。

常に3手先を読んで行動することは、一見すると目標がないように見えるかもしれません。しかし、それは必ずしも目標がないということではありません。むしろ、より大きな目標を達成するために、長期的な視点で戦略的に考えているとも言えます。

3手先を読むということは、目の前の結果にとらわれず、将来を見据えて最善の道を選ぶということです。それは、目標達成への道のりをより確実なものにするためのプロセスであり、決して無駄な時間ではありません。

目標を達成するためには、時に遠回りをしたり、足踏みをしたりすることも必要です。しかし、3手先を読んで着実に進むことで、最終的にはより大きな成果を手に入れることができるのではないでしょうか。
 
大切なのは、自分の価値観や信念に基づいて、目標を設定し、その達成に向けて努力することです。3手先を読むことは、その目標達成をサポートするための手段であり、決して目標そのものではありません。

これから先は物語です。

夕暮れの帳が下り始めた頃、古びた洋館の書斎で、暖炉の火がパチパチと音を立てていた。重厚な書棚には、歴史書から哲学書まで、様々なジャンルの本が所狭しと並んでいる。その一角にある、革張りのアームチェアに深く腰掛けているのは、白髪の紳士、賢治だ。彼は、一代で巨大企業グループを築き上げた伝説の経営者である。

その賢治の向かいには、真剣な眼差しでノートを手にしている若者がいる。翔太、20代半ばの青年だ。彼は、大学卒業後、賢治の経営哲学に感銘を受け、弟子入りを志願した。
 
「翔太くん、最近はどうだね?」

賢治が静かに口を開いた。
「はい、先生。おかげさまで、日々多くのことを学ばせていただいております」 翔太は、尊敬の念を込めて答えた。

「ところで、先生。以前おっしゃっていた『3手先を読む』ということについて、もう少し詳しく教えていただけないでしょうか?」

賢治は、目を閉じ、しばし黙考した。
「3手先を読むということは、単に先のことばかり考えているということではない。それは、目標達成のために、あらゆる可能性を考慮し、最善の道筋を描くことだ」

賢治は、ゆっくりと目を開き、暖炉の炎を見つめた。
「例えば、新製品を開発する場合を考えてみよう。ただ闇雲に開発を進めるのではなく、市場の動向、競合他社の動き、そして自社の強みを分析し、3年後、5年後の市場で成功する製品を構想する。それが、3手先を読むということだ」

翔太は、深く頷きながらメモを取った。
「しかし、先生。常に先のことばかり考えていては、目の前の仕事がおろそかになりませんか?」

賢治は、穏やかに微笑んだ。

「確かに、目の前の仕事に集中することも大切だ。しかし、3手先を読むことで、より効率的に、より効果的に仕事を進めることができる。それは、まるでチェスの名人が、数手先を読みながら駒を進めるように」 

賢治は、チェス盤を手に取り、駒を並べ始めた。
「チェスでは、目の前の駒を取ることにとらわれてはいけない。常に全体を見渡し、相手の動きを予測しながら、勝利への道筋を構築していく。ビジネスも同じだ。常に全体を俯瞰し、変化に対応しながら、目標達成に向けて戦略を練ることが重要だ」

翔太は、チェス盤に視線を落とし、賢治の言葉の意味を深く噛み締めた。
「先生、ありがとうございます。3手先を読むことの重要性が、よく理解できました」

賢治は、翔太の肩に手を置き、優しく言った。
「焦ることはない。一歩ずつ、着実に進んでいけばいい。しかし、常に先を見据え、目標を見失わないこと。それが、成功への道だ」

暖炉の炎が、二人の影を揺らめかせた。翔太は、賢治の言葉とチェス盤の教訓を胸に、未来への希望に満ちた表情で、洋館を後にした。

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