田中まさお先生の裁判資料を読んでみた

 2018年より、埼玉県を相手取って残業代の未払いを払うよう裁判で戦う田中まさお先生の裁判資料を読んでみました。田中先生は、教員の無賃残業に疑念を抱き、教員が残業代も出されずに無制限に残業をさせられている現状を後世に残してはならないとの信念から県を相手に訴訟に踏み切った素晴らしい先生です。下に田中先生の裁判資料が置かれているサイトを載せますので、原文を読まれたい方は是非。原告本人意見陳述書は3ページ程で読みやすいので、田中先生の訴訟への熱い思いは是非ご一読ください。

田中まさお先生の裁判資料のサイト (今回は第一回目裁判資料の情報をまとめています。)

 尚、裁判の資料では田中先生の主張と県教委の主張が別紙で用意されていますが今回の記事ではひとつにまとめてあります。参照段落をそれぞれ記すようにしますので、気になる方は該当箇所をチェックしてみてください。

田中先生 vs 県教委 主張まとめ

主張①(第1はじめに.第二段落.2行目)
田中「教員の勤務実態が一向に改善されていない。それのせいで心身の健康を損なう教師までいる現状がある。」
県教委「一般論として心身の健康が損なわれている教員はいるけど、それが勤務実態と関係あるかどうかはわからない。

主張②(第1はじめに.第三段落.4行目)
田中「給特法のせいで教員は無賃労働を強いられている。」
県教委「それは違う。教職調整額が支給されているが、これは教師の勤務態様の特殊性を勤務時間内外問わずに包括的に評価した結果として支給されている。だから今の超過勤務の状態も給特法が前提とするところである。」

主張③(第4公立学校の教員の~.1.(2)全体)
田中「給特法で労働基準法第37条(=残業代は割増賃金で払え令)は適用除外されているが、労働基準法第36条(=残業させるなら協定を結べ令)は明記されていないので公立教員に適用される。」(=訴状 p.5 2行目)
県教委「確かに36条については触れていないけど適用されない。給特法によって時間外勤務命令ができるのは4項目のみ。4項目以外時間外勤務など発生しないんだから適用されない。」(=埼玉県答弁書 p.4 イ(2)について)

主張④
田中「授業準備などは一般業務なんだから勤務時間内に処理すべきで自治体は原則勤務時間外に働かせてはいけない。」(=訴状 p.8 イ)
県教委「確かに一般業務ではあるけど、教職調整額は勤務時間内外を問わずに支給しているから、勤務時間外に及ぶ一般業務は給特法の想定範囲内。だから問題はない。」(=埼玉県答弁書 p.6 (ウ))

 ここまで見ていただいてわかる通り、県教委の主張は非常に非人道的。まだこれまとめ半分くらいしか終わっていませんが、既に労働者をなめている。労働基準法の目的は労働者が健全に働くことの最低基準を守るためですが、今回の県教委の主張を見ているといかに教員が労働者として軽視されているかがわかります。現代版奴隷ですねこれ。ふざけんな。

給特法解釈をめぐる決定的な両者の違い

 両者の給特法の解釈には大きな違いがありますのでそちらもまとめておきます。

田中先生「教職調整額は、超勤4項目による残業命令が来た際に時間外労働手当を支給する代わりに、支給されている。」
県教委「教職調整額は、教師の勤務態様の特殊性を正規の勤務時間の内外を問わず包括的に評価した結果支給しているもの。つまり勤務時間外に業務があったとしてもそれは教職調整額でカバーされている。

う~む、どちらが正しいのかは司法が決めることではあるけど、個人的に県教委が言っていることを司法が正しいと判断した場合もはや教員に時間外労働を止めるすべはなくなるんじゃないか...というかそうなったらもはや給特法が教員を守るために機能していないですね。

県教委の狂言まとめ

勤務時間を考慮せずに教育効果があるからという理由で無限に仕事を増やすことはしていない。ワークライフバランスに配慮している。勤務時間内に事務作業を終えることは可能」(答弁書=p.10 イ)
「給食指導などは最初みっちり指導をすれば、後は平行作業で事務作業ができるし、実際それをやっている教諭もいる。」(答弁書=p.10 ウ)
「校長の指示で休憩時間に会議が入ることはまずない。ある場合は、事前に休憩時間開始時刻変更して確保している。」(答弁書=p.11 オ)

まとめ

 なんだか県教委が必死に大嘘をついているのが情けないですね。校長が休憩時間を事前に変更することなんてまずないと断言できます。さらに校長が会議を休憩時間中に入れることはないと言っていますが、それは校長が実行すると決めた行事や教育活動を執行するために行われている会議であるため、会議をするよう直接命令していないにしても管理責任はあんたにあるんとちゃうんかい。
 県教委と校長を見ていると、屁理屈ばかり並べて必死に現状維持をしたがる姿に辟易します。埼玉県答弁書だけでも、読むと県がどのように法律や現状をとらえているかがわかるので、読んでみることをおすすめします。

 最後まで読んでいただきありがとうございました!

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