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手にとらば 在りし日思ふ 紙のチケット

私は雨の中、カシマサッカースタジアムに向かっていました。
到着して係員から「ソレ」を受け取った瞬間、何故かとても懐かしい気持ちになりました。

「あ、なんか久しぶりだな。こんなところに”しかおファミリー”がいるぞ」

手荷物検査を終えて係員に「ソレ」を渡すと、係員がしかおが描かれた部分をビリっともぎり、半券を返してくれました。たまに上手くいかず、破れた半券が手元に戻ってくると、少しだけ残念な気持ちになります。

「試合前から縁起が悪いな」

そんな気持ちになるのを少しでも減らすため、入場前に切り取り線の折れ目にしっかりと跡を付けたりもしました。

スマホのアプリが主流になるにつれて、観戦の記録を残すためピッチをバックに撮影していた「ソレ」の写真が減って、代わりにアルバムには、ピッチをバックに撮影したお酒の写真が増えました。スタジアムでお酒を買うときに、プラスチックのコップにホームチームのエンブレムが描かれていると、テンションが上がってしまうのは、私だけではないはずです。

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昨シーズンは、コロナの影響で販売が休止されていたアルコールの解禁日を、キリンのような首で待ち続けました。私は梅干しが大好きなのですが、昨シーズンの終盤に訪れた日産スタジアムでは、梅干し入りのサワーが販売されていて、うっかり飲みすぎてしまうところでした。

話が逸れてしまいましたが、もうすでにピンときた方もいらっしゃるのではないでしょうか?

今日は私の大好きなお酒の話ではありませんよ。紙のチケットのお話です。

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忘れもしない2020年1月28日のことです。
大好きな鹿島アントラーズは、アジアへの切符をかけて、オーストラリアの強豪メルボルン・ビクトリーと対戦しました。 

浦和レッズに所属していた、ナバウト選手に先制を許してしまいます。そのゴールが決勝点となり、ACLの切符を手にする事が出来ませんでした。その時のチケットが、写真のチケットです。シーズンチケットを購入した人は、その試合の招待チケットが貰えました。雨が降り頻るなか、行列に並び受け取ったのは、どこか懐かしい気持ちになる「紙のチケット」でした。係員がもぎる部分に、しかおファミリーが描かれていて、名残惜しい気持ちで別れを告げたのを覚えています。

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いつしかJリーグのチケットは、QRコードが主流になり始めました。少し前までは、QRコードを使い、紙チケットを発券しないと入場できないなどの混乱も生じていましたが、今では携帯ひとつでスイスイと入場することが可能です。チケットを忘れるトラブルからも、解放されましたね。

昨シーズンにおいては、約10年ぶりにシーズンチケットを購入したことと、コロナの影響でアウェイでの観戦が制限されたことが重なり、紙チケットを手にしたのは1度だけでした。年末に部屋を掃除していたら、それまでに観戦した試合のチケットが沢山出てきました。

◼︎10年間で変わった「シーズンチケット」の姿

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