今の自分からどうしようもなく生まれてくるもの〜中高生のための「演技」ワークショップ

今回は2023年2月18日(土)に東山青少年活動センターにて開催した、「中学・高校生のための演劇ワークショップ「演技」ワークショップについての記録です。

この「中学・高校生のための演劇ワークショップ」全体の趣旨は、前々回記事「トライ&エラーでいいじゃない〜中高生のための「脚本の書き方」講座」の冒頭をご参照ください。

「脚本の書き方」「演技」「演出」の3部門で開催しました

脚本の書き方」「演出」はそれぞれ劇作家・演出家の方に講師を依頼しましたが、今回の「演技」はわたし自身が本職ということで、自ら講師を担当しました。
そういうわけで、内容については少し客観性に欠けるので、東山青少年活動センターブログの方で、センターの方に報告記事を書いていただいていますので、そちらもご参照ください。

今回は5名の中学生・高校生が参加してくれました。
まず最初に自己紹介と、それぞれが演劇に触れるなかで感じている自分にとっての課題や深めていきたいことをインタビューします。

私はこの時間がとても好きで、もちろんその後のワークの流れの参考になるということもありますが、参加者の皆さんもそれぞれの課題に共通点を見つけたり、あるいは人による視点や切り取り方の違いに感心したり、貴重な気づきを得られる、わたし自身にとっても刺激的な時間です。

今回の参加者が語ってくれた課題には、共通点がありました。
それは「声」と「身体」と「感情」をちゃんとつなげるにはどうしたらいいのか、ということです。
演劇は「せりふ」があるので、どうしてもそれを「どう言うか」にフォーカスが当たりがちです。でもそのせりふを発する前にはそこに演じる「役の気持ち」があり、リアルな現実として「今の自分」という身体がある。この複雑な構造のなかに演技は成り立つのだということに、みんな気づいています。まずそれがすごいことだなと思いました。

みんなからの課題を踏まえて、この日はできるだけ頭で考えるのでなく、自分以外の相手にも集中して、相手のその瞬間の出方で自分のなかから自然と出てくる気持ちや声に着目するワークを中心に行いました。

自分がどう発信するかを考えるよりも、まず相手に注目することで瞬間瞬間で変化する自分をキャッチしてみる。そうすると、普段の生活で自分がそうしているように「身体」と「感情」と「声」が自然と連動してくるのではないかという仮説です。
実際に、客席にどう伝えるかを一旦置いて「相手の目をしっかり見て話す」変化をつけただけでも、ぐっとやりとりの深みが変わる瞬間がありました。


演技ってうまくなるの?
てゆーか「いい演技」ってなに?

わたしも一生かけて考える課題です。
答えは出せないけれどきっとほぼ確実なことは、演技がうまくなる魔法はないということと、そこに自分と自分じゃない誰かがいること(お客さんも含めて)。
自分なりの「いい演技」を見つけるための道は人の数だけあって、ひとりとして同じ道は無いんじゃないかなと思うのです。

わたしが企画する「演技」ワークショップでは、「うまく演じられる」ことを目的とするよりも、
それぞれの課題を意識しながら参加者同士であらゆるやりとりを試していくなかで、今すでにある自分の身体と感覚をフルに使うこと、
そうしたことでどうしようもなく生まれてくるドラマがそこに起こることを感じること、
そしてその向こうに「それぞれにとって」大切な引き出しを見つけてもらえるような時間になればいいなと思っています。

「演技」についてのワークショップも、「脚本の書き方」「演出」などなどと同じく、2023年夏にふたたび開催できるよう準備を進めています。
参加者の皆さんそれぞれの演劇への意欲とチャレンジを後押しできる時間をつくっていきたいと思います。


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