この気持ちもいつか忘れる(住野よる著)
目的や特別であることやなしたいことや俺の人生をどうしたいかということや何のために出会ったのかということや意思で捻じ伏せられるのかということとは一切なんの関係もなく。
チカを、思う。
想う。
相手の言っていることをちゃんと理解できているか分からない。
本当の名前すら知らない。
ただ互いの世界が交差するこの場所で、互いの存在を確かめ合うだけ。
俺よりチカに近い人間があちらの世界にいる。
俺よりチカに会っている人間があちらの世界にいる。
俺よりチカを理解している人間があちらの世界にいる。
そんなことは分かっている。
でも、チカと共有するこの瞬間、今、生きている今だけは、誰よりも俺が彼女と繋がっている。
そう信じている。決して思い過ごしじゃない。
命が混じるほど近くにいてほしいと、誰かに願うなんて初めてのことだった。
主人公のカヤとなり、光しか見えないチカにどうしようもなく心惹かれる。
顔が見えないからこそ、気恥ずかしさを感じすぎず、いつも以上に心のままを言葉にすることができる。
心惹かれるひと、ものと出会ったときの心の揺れ動き、言動に触れ、自分の記憶の彼方にあった思い出とリンクして、読んでいて気持ちが高まっていった。
運命という言葉で表することもあるのだろうが、線香花火のような儚くて尊い思いを感じることができる小説だった。
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