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セミ捕りを見て、思うこと

久々に日本の夏を経験して、暮らしていた頃はあまり気にもしなかった蝉の鳴き声をしみじみと感じた。

炎天下でも、夕方でも、ミンミンと響きわたる鳴き声を聞けて、たまらなく嬉しかった。東京の実家の周りは、土が表面に出た場所はほとんどないのに、野生の生き物はなんとか環境に順応して生き延びているのを感じたからだ。

一般的に知られている蝉の一生は、7年と7日だ。単純に日数にすると、2562日で、99.7%が土の中の生活ということになる。実際は、蝉の種類によって年数は違うし、蝉の生態はまだまだ知られていないことも多いらしい。でも、土の中の生活と地上の生活では、土の中の生活が断トツ占めるわりが多いのは間違いないようだ。

とすると、残り0.3パーセントに凝縮する思いは、想像できないくらい濃厚で凝縮されたエネルギーだ!長年の下積み、経験、サバイバルがそこに詰まっている。だからこそ、あの小さな身体から、脱皮後、地上でついにアクティブに転じる期間、あんなに大きな音を発することができるのだ。

しかもその大きい歌声?鳴き声は、オスがメスを引き寄せるために必要だからだそうだ。地上にいるたった1週間で、彼らは鬱積・蓄積してきたエネルギーを一気に爆発させる。彼らの一生は、人間の一生とは順序が違う感じで、青春が最後にくる感じか。自由に羽ばたき、歌い、恋をし、子孫を残し、そして、あっけらかんと死んでいく。

こんなことを考えながら散歩していたら、2匹の元気な蝉が捕まえられ、プラスチックのケースでバタバタとしているのを見た。あぁ、なんて酷いことをするの、愚かな人間よ!捕まえて、どうするというの?1週間もない彼らの青春をどうして奪うの?

蝉の声を聞くと、私は無意識に「ありがとう、今年の夏も生き延びてくれて。どうぞ、今年の青春を精一杯謳歌して、来年も戻って来て下さい!」とつぶやいている。



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