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no.26 義母、空へ還る(その1)

義母の介護を通して、実感したことがある。
ひとつは、看取り期に入ると「食べられなくなる」というより、
「呑み込めなくなってしまう」ということ。

義母の場合も、呑み込む力が足りないために、いま食べたものがノドの奥から先へ進まず、行ったり来たりしていた。

もう一つ。
在宅介護は、ふだんの暮らしの傍にあるのだな、ということ。
在宅介護をしている間も、私は仕事に行き、夫は家事をし、義母の食事の介助をしていた。
義父は義母のとなりで、いつものように、大音量でテレビを観ていた。
宅配便が届くこともあるし、ときどき犬も吠える。
それから、日に4回、ヘルパーさんの巡回がある。
義母の周りには、常にばたばたとした日常があったと思う。


この頃、私の気持ちは、常にグラグラと揺れていて、義母の咽せや痰絡みの呼吸の様子が聞こえるたびに、
「今からでも入院できるところはないか」と焦っていた。

私は人を看取ったことも、医療に携わったこともない。
それは夫も同じで、ここから先は二人して、未体験ゾーンなのだ。

しかし、はたと気がついた。
だいたい、どのようにして義母を病院へ運ぶのか?
車椅子に乗せられる状態ではない。
寝たままの状態で、しかも、酸素吸入をしたまま運ぶとなると、救急車を呼ぶしかない。でも、救急車って、緊急の救命のために使うものだ。
入院という選択肢はない。覚悟をきめないとならない。

8/20(日) ※私のメモ
8: 00
お茶(とろみ付き)小スプーン3杯
シロップ 小スプーン3杯
ゼリー 小スプーン1杯
口にスプーンを入れることを嫌がる

義母の様子をみていると、食事は望めそうもなかった。
もし、義母の意思がわかっていたら、それを正解として対応できるのに。
何せ、絶対に死にたくない人だったので、わからないのであるw

ドラッグストアへ行き、何か良さそうなものを探す。ゆず風味の経口補水液のゼリーを見つけ、買ってみる。幸い、義母の口に合った(!)
(※記事の終わりにリンクを貼っておきます)

15:00
経口補水液ゼリー. 30㏄ほど

汗を大量にかいていたので、ヘルパーさんに着替えをお願いする。
ヘルパーさんによると
「声にならない声で、ありがとうとお礼をいわれました」とのこと。


片付けをしていたら、タンスの引き出しの奥の方から、畳んだショーツが1枚、ビニール袋入った状態で出てきた。
中にメモが入っていて、見ると義母の達筆なペン字で(縦書き)
「◯◯子(=義母のこと)が死んだら捨てる事」と、書いてある。
なんだこりゃ…?

もっと大事なことがあるのだろうに、なんでかなw
例えば、食べられなくなったら、どうしてほしい…とか(切実)
それから医療行為。してほしいこと、してほしくないこと、あったと思う。
お葬式も、どんな風にするとか、しないとか、誰に来てほしくないとか、
遺影に使う写真とか…
きっと、あると思うのだ。
このショーツは、メモにある通り、義母の望むタイミングで捨てることにする。
(気持ちが楽で良い)
本来、こうあるべきと思う。

21:00
経口補水液ゼリー. 30㏄ほど
ハイカロリーゼリー(66g入) 
4/5カップ

夜遅くになって再び発熱。
目に力がない。

今日は在宅介護215日目。

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義母の「いのちの水」! とても助かりました。

在宅介護*観察日記『義母帰る』

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