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私が初めてクレーマーになった日

今日が、長い旅行の最後のお宿。
大変疲れた。

往路
新潟→富山→石川→福井→滋賀→京都→大阪→兵庫→フェリー→福岡
復路
福岡→大分→フェリー→兵庫→大阪→京都→滋賀→福井→石川
で石川県のお宿で一泊

とても疲れていたところで
大変楽しみにしてたお宿の夕食。

満室でとても賑わっているところで
夕食がなかなか忙しいらしく
一品一品がとてもゆっくりなタイミングで
送られてくる。
でも、どう考えても遅いって思い始めたのが
夕食のコースの半分あたりで1時間が経ってから。

愛犬のぱんちゃんは
大きな音がとても苦手で、
夕食の会場が賑わっていたので、
それで案の定、ビクビクが止まらなくなり
ゼェゼェハァハァが止まらない。

この状態であと1時間はきつい。
さらに妻も体力的にキツくなり、
そして若干イライラもしてきて、
初めて、妻がクレームを言うのを見た。
「部屋に戻っててもいいですか?」

私もイライラこそしなかったものの、
2時間かかりそうな夕食に
何も言わずに、
というのも少し違和感があり、
妻のをきっかけに部屋に戻ることにした。

でも、クレーマーに思われるのも
ただただ自分達が不快な思いをするだけだが、
別に、何かして欲しいわけでもないし、
愛犬も妻もキツいのを我慢させるのも違う。

結果、妻は、迷惑をかけることになったことに
戸惑いを感じつつ、
この後どうこの感情を消化したら良いのか
困り、戸惑い、涙を流していた。

この旅の99%は妻が計画して、
最後の最後に、とてもいい旅館で
とても美味しい料理に感動して
帰れればよかったけど、
それが最後に台無しにされる形になり、
でも、そうしたのは自分きっかけなところもあるし
でも、それって、自分が我慢して
キツいのを耐えれば済むこと?
それも違う。

そういう想いが混乱して、涙をこぼしていた。

そんな矢先、
もう部屋に戻りますと伝えたスタッフの女性が
残りの料理を部屋に運んでくれた。
マニュアルでは、それはないらしく、
こっそりと持ってきてくれた。

そのことで妻が崩れ落ち、
涙が溢れてた。
その女性のスタッフが妻を抱いて、
頭を撫でて、
「お客さんが泣くことじゃないですよ。
申し訳ございませんでした。」

「ぜひ明日の朝食はいらしてください。」

とおっしゃってくれた。


何かをして欲しいわけじゃない。
土下座して欲しいわけでもないし、
お金を減額してくれ、とか望んでるわけではない。

私がこうして客観的に見ているのも
おかしな話なのだが。
私も妻の立場、忙しい最中で厳しい判断を迫られるスタッフの立場まで考えてた。
自分ながらに、冷たい人間だな。
薄情な人間だなあって心底思った。

でも、私が妻の立場なら、
ただ一つ。
この大切な時間を返して
だ。

でも、そんなことは無理。
覆水盆に返らずとはこのことだ。
でも、かといって、
何もないのは、おかしいだろ!
で、その女性スタッフの対応。
食事を持ってきてくれたことが
嬉しかったし、
そのスタッフが自分の立場も顧みず、
(上司?に報告してたかもしれないが)
やってくれたことが嬉しかった。
で、もう少し深掘りすると、
なぜ妻も私も、ネガティブな感情が
薄らいだのかと考えたが、
困ってて、
すごく残念に思ってる気持ちを
わかって欲しかったんだと思う。

こんなに楽しみにしてたんだよ。
忙しいのは知ってる。
それに対しても同情する。
でも、我々も楽しみを害されて
特に妻は傷ついて、悲しくなっていた。

忙しいので、すみませんねー
の一言で、
ただ作業として済ませられるのは納得いかない。
じゃーお食事を持っていけばいいんでしょ。
これで納得?
というわけでもない。

その時にそのスタッフから、
本当に申し訳ありません。
心からお詫び申し上げます。
的な気持ちが伝わって、
こちらの苦しみも
理解しようとしてくれていることが
わかったから、
妻もその場で泣き崩れるようにして、
そして、せっかくいただいた料理を
楽しんだ。

それから、
妻と話をした。
今回のこの一連のことで
残念な形になったけど、
あのスタッフさんは少なくとも
精一杯のことをやってくれた。

こっちもただただネガティブな気持ちで終わり、
もう2度とあんな宿に行くか!
となるより、
あの人に感謝の気持ちを伝えて、
ちょっとは
ほっこりした気持ちになって帰ろう。

次にまた行くかどうかはわからない。
もし、あのスタッフがいなかったら、
こうして書けなかったかもしれない。
もし、残念なサービスなまま終われば
きっとこの宿は続かない。

それはいいとして、
我々が単なるクレーマーで、
ネガティブキャンペーンをするのも
自由だけど、そんな暇があったら、
妻とぱんちゃんとの残りの旅を
楽しい気持ちで締めくくりたい。

だから、その後、私がフロントに事の顛末を伝え、
明日、もし可能なら妻から
そのスタッフに感謝を伝えたい。

ということで、約束できた。

次の日の朝、そのスタッフが対応してくれて、
妻は泣き虫なので、涙ながらに
感謝の気持ちを伝えてた。
ついでに、なんか仲良くなって、
いい気持ちで宿を後にした。

これはこれで、
一つのいい思い出にすることができたから、
夜のお食事のことは、いいことではなかったけど、
締めくくりが、ただ残念で終わらなくてよかった。

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