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11月26日「今日も小麦屋のバイト」|取り立てて特徴のない18才フリーターと、彼の日記

今日のバイトは絶対に遅刻できなかった。
なぜなら、今日はヨシーがシフトに入っていて、オレはどうしてもパン場で「焼き」を担当したかったからだ※。

※補足1
オレはパン場専門で、ほとんどの場合 相方の中田っちと二人で回している。それぞれが「焼き」と「成形」を担当するのだが、どっちがどっちをやるかは決まってなく、朝早く出勤した方が焼きを担当するという流れが何となく決まっている。
店のレイアウト上、オーブンが表の方にあるので焼き担当はホールのスタッフやお客と会話する機会がある。一方、成形は奥で作業しているため会話するのは相方くらいだ。

…そう。ヨシーはホールなので、焼きをやらなければオレはほとんど会話する機会がなくなってしまうのだ。


ということで 今朝はいつもより少し早く起きて、無事に中田っちより早く来て焼きを担当することができた。というか 中田っちは遅刻してきた。
といっても、実際はそんな頻繁にホールの人と会話することもないので ヨシーが来ても「おはよー」くらいしか言葉を交わしていなかった。

さて、次に大切なのは 言うまでもなく休憩のタイミングだ※。

※補足2
長いシフトの場合、30分の休憩がある。ホールは1~2人づつ順番に取っていき、たいていはみんな休憩室でランチを食べたりダベったりしてる。パン場は自由なタイミングで取ってよいので、中田っちとの塩梅で決める。


オレはどうしてもヨシーと一緒のタイミングで休憩に入りたかった。
ついに、ホールの雰囲気的に 次はヨシーかな?となった時… 自分でも何だかうまく言葉にできない、とても嫌な感じを覚えた。
この、めっちゃヨシーと合わせようとしてる感じや、休憩をすごく期待してる感じを、認めたくないのか… よくわからんけど、衝動的にオレは「もういいやぃっ!」ってなって、中田っちに言ってすぐに休憩に入った。


休憩室にて。
やはりどこかヨシーを待っているオレがいた。
10分経ち、まだ来ない。
だんだんオレは気持ちが悪くなってきて、堪らず外に出た。

外の風に当たって、「小麦屋に入ったばっかの時は、誰かと一緒なのが気まずくてよく外で休憩してたなぁ」なんて思いながら寝転んでタバコをふかす。ヨシーを避けるように。

さらに10分が経つ。あと休憩は10分だ。

休憩室に戻ると、やはり そこにヨシーがいた。
やっと会えた。
内容は何でもよかった。とにかくヨシーと話したかった。それまで抑えていた震えのような感情が 一気に笑いになって外に出た。自分でも驚くくらい、アホみたいに笑っていた。
そっからは一日中、明らかにテンションが高かった。

これが、好きという感情かどうか自信がない。
信じられないのか、信じたくないのか。どちらにせよ、早く答えを出してしまいたい。
オレにはもう時間が残っていないから。

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