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帰路


生きているのが辛い帰り路は、道路の真ん中を歩きたくなる。満員電車に押し潰され、人が人を互いに傷つけぬ様に息を潜めている。後ろから車がこないか、人の迷惑ではいかと歩道を怯えながら進んでいる、そんな窮屈な場から、逃げたくなったのだ。逃げたいのに真ん中をいくとは矛盾しているようだが、それでも誰もよけずに、ただひたすらに、真ん中を歩きたくなる。

バックライトが当たり、自分が現れる。そんな迷惑なことしてお前は生きるべきではない、という。チャリンチャリンという音に耳の石がカラカラと動く。後ろも右も左も見ずに、ただひたすらに前を向く。真正面から来るバイクも人もカップルも何もかもの前に私が存在する。

半月が曇ってゆく。
照らす灯りはない。

地面にぼんやりと浮き出た自分はまだ続けている。お前の様な人間がいるから困るのだ、世の中にとって社会にとって勿体ない、などと、グダグダ続けている。

地面を踏み締めるように止まらないままただ歩いて暖かい光を目指す。暖かい光はやがて、私を呑み込む。


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