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私の好きなことと嫌いなことについて書いていきたい。健康で文化的な雪かきをつづけるため研…

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私の好きなことと嫌いなことについて書いていきたい。健康で文化的な雪かきをつづけるため研究教育で糊口をしのいでいます。分類されるのは苦手です。一生くよくよしてるのでしょう。 好き:各国料理, 宝塚, 哲学, 植物, 詩, 美容

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できなくなってしまったときは新しい現実の予兆の現れだ

しばらく長い文章を書いていなくて、もしかしたら私はもう長い文章を書けなくなってしまったのではないかと不安になって久しぶりにnoteになにかを書こうと思い立った。最近の私といえばツイートにしても140字も文章が思いつかず、ある程度の分量を仕事で書かねばならないときにはChatGPTに頼りきりなざまなのだ。 8月の下旬に風邪を引いてジムをしばらく休んだ後、久々にベンチプレスを上げようとするとたった30kgでもとても重く感じてしまった。「筋肉落ちちゃったのかな」とトレーナーさんに

    • 些事に煩わされずに生きること

      幸せで、些事に煩わされることなくこのところ生きている。だが、これは単に私がマジョリティ性を獲得しただけなのではないかと危惧している。 マジョリティ性とは、単に数が多いということではなく、強い立場にいることを意味する。男女は数の上ではほぼ同数だが、男性の方が社会的立場が強いためにマジョリティ性を持つとされる。 些事に煩わされて嫌な思いをするというのは凡そ人間関係において起こることだが、嫌な思いをするのは大抵、弱い立場の方だ。同じ発言であっても対等な友人関係なら何も問題になら

      • 旅の終わり——沢木耕太郎『深夜特急』を読みながら

        この冬から読んでいる沢木耕太郎『深夜特急』が、最終巻である第6巻にたどり着いた。香港から始まった旅はシルクロードを伝っていまやイタリアにまで到達している。 そこで主人公が感じたものは世界の美しさへの感嘆でも、旅で見つけた新しい自分でもなく、ウィスキーの空びんのような虚無感だった。ずっと掃除をしていない部屋の隅のように、長い旅の中で蓄積された疲れは、感動に躍動する心を失わせてしまったのだ。 旅は人生だ、といわれる。 しかし、長い人生の終着点付近で薄汚れた部屋に転がる空きびんの

        • 私は人間だ。ハラスメントとは、人をモノのように扱うことだ。

          ハラスメントに苦しむ友人の声を聞いた。以来、心身の平衡が崩れている。ゆるせない、と思うほどに湧いてくる醜い蛆虫が心にたかる。ずっと心身が優れない。 ハラスメントは、人をモノのように扱う行為だ。性的な消費物として、市場交換の商品として、政治の駒として。 しかし、私たちはモノではない。人間だ。私たちは人間として扱われたいと思っている。「この人と新しい物語を始めたい」と思ってもらいたいのだ。 友人は、信用していた人なのにどうして、と嘆いていた。 信用の一番の基盤は、相手を人間

        できなくなってしまったときは新しい現実の予兆の現れだ

        • 些事に煩わされずに生きること

        • 旅の終わり——沢木耕太郎『深夜特急』を読みながら

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          男性ばかりのゲームでうまくやれなかった友人のこと

          男性ばかりの環境に飛び込まないと叶えられない夢を持っている友人がいる。そして、それをいま諦めようとしている。どうして。悲しくなったからまじめに考えた。 ジェンダーギャップ指数の順位が低い、と言われる。「スコアを上げるには女性の管理職を増やせばいい」という短絡が起きている。数値目標は考えることの放棄に繋がる。美しさを体重の低さで測ったら、行き着く先は拒食症だ。数字を追いかけるのではなくて、その数字を生み出している、この社会を動かしているゲームたちを考えたい。この指数やスコアは

          男性ばかりのゲームでうまくやれなかった友人のこと

          「湿度」

          湿度とは、空気中に含まれる水分の程度。 温度が高ければより多くの水分を、 低ければ僅かな水分を含むことができる。 二人きりのこの部屋の湿度はどうすべきなの。 癒しの水を与え合って、私たちは潤い合った。 癒しの水は空気に溶けると、私たちを不快にする。 湿度が上がってきたら離れよう。 もう一度、心が渇き、熱くなるまで。

          「湿度」

          「ロープと輪っか」

          ロープで輪っかをつくる これで括ろうと思った ロープの端が目に入った この端はどこにつながっていたの 輪っかにその端を通した また輪っかをつくる そこにまた端を通した 繰り返すうちに網になった この網で木に橋を渡した 橋の上に寝そべってみる 空が青かったことに気づいた 橋はあちらとこちらの中間地点 あやふやになってまどろんだ 鼠色の雲が眩しかった空を翳らせた 雨粒に驚いて橋から転げ落ちた ちぎれた橋は投網となって私の上に降ってきた 絡め取られて動けないままにただ

          「ロープと輪っか」

          手のこんだ料理にしか愛はこもらないの?——一汁一菜にみる安心と信頼と愛情

          土井善晴の「一汁一菜」の提案には助けられている。 「「ダメ女」と「一汁一菜」」(三浦哲哉.『食べたくなる本』. みすず書房. 2019年. 77-95頁.)というエッセイを読んだ。 料理の中で一番億劫になるのは、「夕飯どうしよう」と考えているときだ。買い出しのタイミングなどを考えるとお昼ご飯が消化しきらないうちに考え始めなければならない。端的に苦痛だ。しかし、「一汁一菜」という型が与えられているだけで、スーパーマーケットに広がる無限の食材と無限の調味料からなる無限の組合せ

          手のこんだ料理にしか愛はこもらないの?——一汁一菜にみる安心と信頼と愛情

          赦しと約束の能力——パートナーと物語を紡ぎ続けるために

          私たちは物語を紡ぐことで生きている。ハンナ・アーレントというユダヤ人女性は私たちの紡ぐことのできる物語の中で最も尊いものについてこう述べた。 福音書が「福音」を告げたとき、そのわずかな言葉の中で、最も光栄ある、最も簡潔な表現で語られたのは、世界にたいするこの信仰と希望である。そのわずかな言葉とはこうである。「私たちのもとに子供が生まれた」。 (ハンナ・アーレント著、清水速雄訳、『人間の条件』、筑摩書房、386頁) 「私たちのもとに子供が生まれた」——まったく異なる二人が共

          赦しと約束の能力——パートナーと物語を紡ぎ続けるために

          「フォール・オブ・リーブス」

          秋は落ちる季節 葉は落ちる運命に紅潮する フォール 運命づけられていること 恋に落ちることは 私の自由意志の選択ではない 恋が実ると愛が生まれ 執着が生まれる 執着は愛の放射性同位体だ 愛を失うまいと 執着は放射線を撒き散らす 半減期はいつ 愛を失うと冬がくる 冬の陽射しはうっすらとした 希死念慮 葉を落とした木々は すがすがしくて むしろ美しくはないか

          「フォール・オブ・リーブス」

          「春の虫々」

          何かが書かれるはずだったページで口を拭う そこに憎しみの語彙を書き付けると 春の風がそれを吹き飛ばした —————————————————————— 春風に蕾は揺れて その振動に愛は蠢きだす 愛とは、あなたと新しい物語を始めたいと思うこと あなたとの物語の真新しい一ページ そこに触れたインクの滲む形を知りたくて この胸は弾むのだ ああ!鼓動を抑えなくてはならない 春に蠢く愛は狂気を孕むから 眠っていた虫々は腹を空かせている 手を重ね指を絡めてペンを持つ 空腹を悟ら

          「春の虫々」

          自殺は偶然なの?

           自殺とは、ある人の究極の行動の1つである。それにも関わらず、集計された自殺者数は毎年似たパターンに従う。これはなぜか。  私はここに数値化の暴力(数え上げの暴力)のさらに背後に潜む≪足し合わせの暴力≫の存在を主張したい。これを考えるために、統計そして統計学とはなにかという根本問題から話を始めたい。 平均値は現象の世界の概念であり、期待値はイデア界の概念である 平均という概念は数え上げenumerationによって生まれた(※ 詳細はイアン・ハッキング著『偶然を飼いならす

          自殺は偶然なの?

          花屋のような仕事――私なりの自己紹介

           花屋には幸せそうな人が訪れて、より幸せそうな顔になって帰っていく。後ろ姿を見送る店員さんも誇らしげな笑顔をしている。なんていう仕事だろうと心を打たれた。  対して自分はどうだろうか。文字だけ画面だけの世界で、疲れた無愛想な人の顔色を伺っている。幸せを作れた手応えも、自然な笑顔に誇らしくなったこともない。時には相手の顔すら見えない。健康診断の結果もどんどん悪くなった。僕のことを大切にしてくれない人に尽くしてばかりいるうちに、僕のことを大切にしてくれる人を大切にできなくなって

          花屋のような仕事――私なりの自己紹介