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結婚しなきゃ、という呪縛

私は家庭環境が荒れていたし、物心ついた頃から生きづらさを抱えていたので学生の頃は結婚願望はなかった。付き合うことは結婚前提であることだと彼氏や好きな人に言われる度、違和感を覚えた。

けれども社会人になって発達障害の治療を受けて生きづらさが改善された時、ようやく「今の自分なら子供を育てられるかもしれない」と思った。それは26歳の頃だった。あまりにも遅すぎる結婚願望だった。

「女は30歳を超えたら誰にも見向きもされない」「30歳を超えたら女は終わり」インターネットにはびこる言葉の数々に怖くて震えた。一人ぼっちで人生を行きていくのは嫌だと思った私は、SNSでいくつかの婚活系アカウントをフォローしてアプリにも力を入れた。

色んな人と付き合って、沢山デートを重ねてきた。最高に素晴らしい夜も、泣き腫らした夜も、全部自分の人生を鮮やかに彩るスパイスでしかなかった。言い寄られたり、振ったり、振られたり。

でもそんな私は結局30歳になっても結婚できないでいる。
30歳をすぎたら女は孤独で惨めで終わりなのだろうか。婚活市場で心をすり減らして戦い続けなくてはならないのだろうか。

そんなことはなかった。
蓋を開けてみたら私は今が一番幸せで、日々大きな夢に向かって全力で走っていて、好きな人と戦友のような距離感で一緒に生きていて、大好きな友達は結婚して子供が生まれても一緒に遊んでくれて、なにより私は結婚に対する執着を手放すことができた。執着を手放せた理由は30歳になったから。人は夏休みの宿題をやり忘れた時、8/31に最も焦るのだ。9/1になってしまったらもう潔く諦めるしかない。

では婚活は無駄だったのだろうか?そんなことはなかった。私は婚活を少しだけ頑張ってみた結果、結婚相談所は自分に最も縁がない場所であることに気がつけた。これは大きな収穫だった。
私の目的は「戦友とも呼べるパートナーと人生を共に切り開いていくこと」であり、これは付き合ったり結婚したりすることで自然に手に入るものではないことを知った。1回目のデートで付き合うことも、交際0日婚もある世の中だが、深い関係を築くことは一切ショートカットできない。結婚しても、戦友になりきれなかった夫婦が一体世の中にどれほど多くいるだろうか。

以前の私に会えたら伝えたいことがある。それは「誰かと絆を結ぶ時、膨大な時間を共に過ごすこと無しに得られるものは何も無い」ということ。

私はきっとこう言い返すだろう、「男性は本気で好きになったらすぐに付き合ってすぐプロポーズしようとするでしょう、そうしてくれない男に時間をかける理由があるの?」と。
違うんだよ。あなたはある意味で「戦友とも呼べるパートナーと人生を共に切り開いていく」人生をもうすでに作りあげている。なぜならばあなたは一人ぼっちではないから。常に誰かがあなたの隣にいるから。そしてこれから先も、結婚しようがしまいがあなたには常にそのフェーズに合った戦友がそばにいる。

結婚しても、離婚することもあれば死別することもあるだろう。だから本当に大切なことは、その瞬間の私にぴったり合う戦友を見つけられること、そしてそばで一緒に生きていけること。私の人生、家庭を持つことが全てではない。私にとって大切なのは「戦友とも呼ぶべき親友」がいることであり、その人と一緒にいたいと願うときにだけ「結婚願望」が心に湧いて出てくる。私には常に「親友」が必要なんだよね。

結婚経験がない黒柳徹子さんは「寂しくないですか?」と質問されたときに
「人を愛したり愛されたりした経験があれば、いくつになっても、誰がそばにいなくても、生きていけると思います」と答えた。
この言葉の通り、誰かにとっての唯一無二になることができて、愛し愛される深い絆を結ぶことができれば、死ぬまできっと寂しくはない。そもそも結婚しても、死ぬ時はみんな(病院で看取られるとかでない限りは)一人ぼっちでしょう。

そんなわけで私は30歳になってとうとう「結婚しなきゃ」の呪縛から開放されたのだった。



…いや、正確に言えばある人に出会ったおかげでこの呪いが解けちゃった。この人に出会って、「なんだ、私のパートナーはみんな顔や性格がちょっと違うだけで同じじゃないか」と気が付いてしまった。きっと今一緒にいる人とさよならする日がきても、また同じ話題・同じ会話・似たようなやり取りをする親友で戦友でパートナーに出会ってしまう。それはこの先もずっと変わらない。なぜならそこが私の居場所だから。

だから今一緒に過ごせる相手と絆を結ぶことは、私にとってダンスを踊るようなもの。曲がかかっている間は全力で踊って楽しむ。曲が終わったら次の曲が流れ始めるまでに、私が迎えにくるのを待っているパートナーを探す。

いつ曲が終わるかで焦って眼の前のパートナーとのダンスに集中できないのはありえないし、次のパートナーが見つかるかどうか悩むのも時間の無駄。今を全力で自分らしく楽しんでいれば何も心配することはない。

追伸:
誰と結婚するかをKPIにしない。誰と共に今を生きるかをKPIにしよう。

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