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日々よしなしごと~京都ぶらり旅その3~

京都ぶらり旅もいよいよ最終回! ていうか、こんなに長くなると思わなかったんだけど・・・
ひとつひとつの出来事が、私的はこゆい?出来事だったので詳しく書いていくと3回シリーズになってしまった。前2回については、前回前々回のnoteを読んでいただければ幸いです。

宇治後半で、いよいよ二日目の目的である利招園茶舗さんに向かう。
利招園茶舗は、宇治から少し京都よりの三室戸というところにある。
しかも、バスと電車を乗りついで、さらに駅から徒歩で15分。こんな風に一軒のお茶屋さんを目指す人もいないだろうなあ、と思いつつ、なんとなくワクワクしていた。
平等院からJR宇治駅に戻り、そこからローカルバスに乗り京阪宇治駅まで行き、京阪電車で三室戸に行く。バス停で待つ間、暑くなってきたので着ていたパーカーを脱いでリュックに詰め込んでいると、一緒に待っていたマダムが
「こんな日は何着ていいかわからへんですね~」と話しかけてこられた。
「本当ですよね!日陰に入ればやっぱり寒いし、夕方になったら風も冷たくて」とお返事する。
こんな風に土地の方とのなんでもない会話がとても好きだ。土地の人の日常の暮らしがチラッと垣間見える瞬間、というと大げさかな。

それにしても、JR宇治駅と京阪宇治駅は、宇治川をはさんでこっちとあっち。もっと近かったら便利なのになあ、とちょっと恨めしいが、その間にバスを乗ることでこういう会話もできたんだなと思うと、それもいいかと思ってしまう。

バスに乗りほんの5分くらいで京阪宇治駅に着き、そこから三室戸までは一駅。小さな無人駅だ。さて、スマホの案内に従っては見るものの迷いつつ、歩いていけばスマホの案内通りになっているのでずんずん進んでいく。ぶらぶらと歩きながらの風景は、京都の街中とは違うどこかのどかな郊外の住宅地。茶舗というからには、古い商家に大きな暖簾・・・という漠然としたイメージで探していたのだが、真新しい住宅の建ち並ぶ一角に誘導されて、こんなところにそんな大店があるのかな・・と思った時にゴールとなった。
目の前に冒頭の写真のような普通の民家の前に看板が!!
ちょっとした衝撃・・・

「御用の方は押してください」というボタンを押すと、中からどうぞ~という元気な声が。では入りますという感じで入ると、本当にごく普通のおうちの玄関(・・・よりも少し狭いくらいかな 汗) 中からはい、こんにちは~と言って出てこられたのが写真(頭しか写ってないけど)の利田(かがた)さんだった。

なんだかしどろもどろになって、入江さんの本を読んで参りましたというと、ああなるほど~どちらから?といわれて、T県から来たというと、T県には利田(りた)というところがありますよね、と意外なお話の展開。聞くと、以前西本願寺で藪内流のお茶を習っていて(ここで、すかさず、昨日西本願寺行ってきました!と言ったのはいうまでもない)そこに、T県出身の方がいて利田に住んでたと聞いた・・ということから、同じ字でもうちは「かがた」と読むけど、実は「としだ」が一番多いんですよ、「りた」は初めてだったというトリビアチックな話から始まり、小一時間お茶にまつわる興味深いお話を伺った。
(その間も、三角巾をつけたスタッフの方が何度も出入りされて、大変活気があるお店のようだ)

中でも、やはり抹茶についてのお話は、さすがに宇治のお茶屋さんだからこそ教えてもらえることだと興味津々なことばかり!
(注:茶道をしている方には・・・かも)

例えば・・・抹茶の銘には、~の白、~の昔というものが多い。
それは、利休がある時「茶は白がよい」と言ったらしい。つまり、色の薄い白っぽい抹茶の方がよい、という意味らしく、以来~の白という銘にすることが多くなった。また、茶は八十八夜経ってから最初の二十日間に採れる茶葉が一番柔らかく上等と言われ、その茶葉で作った抹茶が高級品になる。だかれら比較的高級品は廿(漢数字の二十)の字を乗せた「昔」を銘に付けることが多い・・・と言われるんですよね、と。なるほど~と感心しきりな私

話は変わるけど、今日は定休日だけど抹茶ジェラートの店を作ったのでぜひ今度食べに来てください、次元の違う抹茶ジェラートですから!
って言われれば異次元抹茶ジェラート!食べてみたいわ~
しかし、今度っていつ来れるかなあ・・・

そんなこんなで、もっとお話を聞きたかったけど、このあとは開化堂さんに行きたいんです、というと、開化堂さんにもうちのお茶を置いてますとのこと。そっか、入江さんつながりなのだなあと納得。

帰り際、玄関の前にある大きな茶壷の説明もしてくださった。茶葉ができると壺に詰めて都などに送られるが、その壺には利招園の茶師の花押が書かれているんですよと、花押を教えてくださっているのが冒頭の写真だ。
煎茶、抹茶2種、ほうじ茶といっぱい買い込んでお店を後にする。
ああ、本当に楽しい時間であったことよ。

来た道をそのまま帰ればいいと思ってスマホ見ながら行くが、途中であれ?こんなところ通ってきたっけ?とうろうろと迷ってしまったらしい。
と、そこに通りかかったマダムを呼び止めて、三室戸駅に行きたいのですがどっちの方向になりますかね?と尋ねると、じゃ分かりやすいところまで一緒に行きましょう!と言って同行してくださる。ありがたや~
(ていうか、バアサンほっとくとアブナイと思われたかもしれない・・)
おかげで無事三室戸駅までたどり着いた。

開化堂Caféは、ちょうど京阪七条駅が最寄駅。駅からは徒歩5分ほどにあり、とても趣のある建物。それもそのはず、元は京都市電(そう!京都には昔市電が走っていたのだ!)の「内濱架線詰所」という架線を修理する人たちの事務所兼車庫だったところだそう。40年間全く使われずにいたこの場所を、開化堂の6代目さんがこのような歴史的建造物の有効活用の提案をして、その後所有しカフェとしてオープンされたのだ。

開化堂は140年を超える茶筒の老舗で、6代目八木隆裕さん。私が宇治の利招園茶舗や開化堂に行こうと思ったきっかけとなった本「京都でお買いもん~御つくりおきの楽しみ」の著者入江敦彦さんと八木さんは親類のようなお付き合いをされているそう。
銅や錫などで手作りされている茶筒の蓋を筒に合わせて入れると、その自重で静かに落ちてぴちっと閉まる姿は、ほれぼれする美しさ。

テーブルに置いてあるのを実際に見て、これはやっぱり買って行かなくちゃ!と思ったのであった。

3本並んでいるのが銅や錫、ステンレスの茶筒

道に面した優しい光の入る古いガラス戸の席で、ゆったりとおいしいコーヒーをいただく。たった半日のことだけど、ものすごく濃く長い時間を過ごしたように感じる。初めての宇治、平等院への参道の商店街、絶景ポイントで食べた抹茶ソフト、上林記念館、おばんざいやさんでの買い物、いくつもの公共交通を乗り次ぎ、徒歩で訪れた利招園茶舗、そのご主人利田さんのお話、ここ開化堂Caféまで、その間に土地の方と交わした小さな会話。やっとここまで無事に辿り着いたなあと心地よい疲れを味わう。入江さんの本に出合えて本当によかったわ!

茶筒を購入して、お店のすぐまえにあるバス停から京都駅に向かう。
ここから京都駅はすぐだ。そういえばお昼を食べていなかったと気づき、
列車に乗る前に、駅のホームにある小さな食堂できつねうどんを食べることにする。
大きなお揚げがはいった美味しいお出汁のうどんは、エキナカの食堂と侮るなかれの味なのだ。久しぶりにいただき大満足の一杯。

ということで、私の二日間の京都ぶらり旅も終わり。
今回はとても印象深い旅になったなあ。電車やローカルなバス、徒歩で知らない町をトコトコ歩く。時に道に迷ったりもしたけど、先々で見知らぬ人と交わす言葉とか、何気ない風景や暮らしの営み・・・

あと何年何回こんな旅ができるか分からないけど、不便ともいえる道のりを
自分なりに楽しめたことが、とても嬉しかった。

さて、持ち帰った利招園茶舗さんのお茶の数々。抹茶はじめほうじ茶もとっても美味しかったのを報告しておきたい。さすがに三室戸まで買いに行くのは難しいので、次回はお取り寄せでね!

あ、でも異次元ジェラートもいつか食べに行かなくちゃ・・・


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