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売りたい私が売りたくない知人の出版について紹介する話

私は基本的に売りたい人間であり「いつかお前らに見つかってやるからな」という執念で本を出版した人間ですが、
「本を売る宣伝はしない、知られたくない」という正反対の知人が今夏に出版します。

色々なご縁があってのことですが、あまりにも正反対で面白かったのでnoteの記事にすることにしました。

その知人とは、島根県松江市にひっそりと存在する古本屋「冬營舎(とうえいしゃ)」の店主・イノハラさんです。

この記事を書くに至ったきっかけ

きっかけは2022年6月初め、私が以前経営していた「めしや巴李古(ぱりこ)」時代からお知り合いである細田さんからのメールです。

細田さんは冬營舎の常連であるとともに、めしや巴李古の常連、というか濃客(こいきゃく)の一人でした。

冬營舎のイノハラさんが本を出すことになり、その応援としてインタビュー企画をすることになったが、その中で「めしや巴李古」について言及している。その許可がほしい、という内容でした。

私は基本的に自分の存在をフリー素材だと思っているので、どうぞどうぞ、という感じで承諾しました。

で、出来上がったのがこちらのインタビュー記事です。

そもそもは今回イノハラさんに出版を持ちかけたハーベスト出版の沖田知也さんに細田さんがインタビューする、という記事でした。

しかし途中からなぜか「冬營舎について沖田さんが細田さんにインタビューする」という流れになっているんですね。そこに私の店の話が出てきます。
まあとにかく読んでみるといいと思います。
 ↓

出版を打診しても喜ばない人柄だからこそ出版が決まった

上のインタビュー記事を読んでいただければわかるのですが、イノハラさんは出版の話が来ても喜ばないかたです。

引用↓

細田 沖田さんが最初にイノハラさんに「あの連載を本にしたいんですけど」と打診された時、「きゃあ、嬉しい! よろしくお願いします!」という、喜びが爆発する感じでは絶対なかったと思うんですけど......。

私も冬營舎には何回か遊びに行ったり本を買ったり夜のイベントに行ったり、そもそも自分がイベントを主催してやらせてもらったことがあるので、当然ながらイノハラさんとは面識があります。

私が1000回くらい転生しても到達できないだろう域にいる、物腰の穏やかな素敵な女性です。
が、時々ちょっと意味がわからないというか(笑)、我々の住んでいる俗世とは全く別次元に住んでいるような印象を受けるのです。

だから出版の話を聞いた時も「えっ、あのイノハラさんが本を出すことを承諾したの……?」と一瞬思いました(笑)。

インタビュー内にもあるように“「きゃあ、嬉しい! よろしくお願いします!」という、喜びが爆発する感じでは絶対なかった”はずなんですよね。

私なんか自分が学研プラスさんで出版決まった時、「よっっしゃあああああああああああ時代が、世間が、ついにおれを見つけたああああああ!!! よろしくお願いしまッッッッッッす!!!!」と思いましたからね。

(※でも最初に編集さんから連絡が来た時は「自費出版の勧誘か?」「ニュータイプの詐欺か?」と思っていました)

でもそういう、執念の強いガツガツした人間だけでなく、「目立ちたくない、知られたくない」人が、そういう人であるからこそ面白いと思われて出版を打診される、という世界の構図が面白いですよね。

出版や成功の形はいろんな人の数だけあるんだな、と思いました。
方法や道はひとつではないのです。

計画立てをしない、著者自身が宣伝に協力しないという自由さの魅力

インタビュー内にある通り、イノハラさんはコンプライアンスがどうとか計画性がどうとかまったく気にしないかた、というか気にするとか気にしないとかとは別次元の世界に生きておられる感じがします。
 ↓

細田 そういう、計画の立ててなさっぷりが、沖田さんには魅力的に映ったんですか?

沖田 そうですね。今の時代、例えばコンプライアンスとか、細かな計画立てとか、随所に「こうでなくてはいけない」という息苦しさがあると思うんですけど、それに真っ向から対立するような自由さに救われましたね。

私も割と計画性はないほうで、今は流れ流れて島根県雲南市に住んでいるのですが、それでもイノハラさんのふわーーーっと生きている感じには度肝を抜かれます。

「こうでなくてはいけない」と思いすぎて精神疾患になり、克服とともに「こうでなくてはいけない」の鎧を脱ぎ捨てた私。
それでもたまに「こうでなくてはいけない」の小手とか「こうでなくてはいけない」の膝当てとかが残ってるんですよ。

だからもう「こうでなくてはいけない」が全くない(全くない訳じゃないかもしれないけど、そう見える)イノハラさんは、何度も言いますが別次元の存在のようです。

この話も笑いました。
 ↓

沖田 はい。まず正式にですね「著者自身は宣伝に協力できません」と明言されました......。

細田 わはははは。

沖田 前代未聞です(笑)。「売らないと駄目ですか?」とイノハラさんに聞かれまして。「僕のクビが飛びます」と答えました。なので今は「本を売らなきゃいけないのは沖田をクビにしないため」ということは理解してもらっています。

私なんかもう、前のめりで宣伝しますよ。
本を売るために書き下ろしの漫画まで描きましたし。

出すからには売れないと意味がない、というか出させていただくんだからそのくらいのお礼はするべきだろう、と思ったんです。

しかしイノハラさんはそれをしない。
なんか、出版社さんは困るかもしれないけど、「やりたくないことはやらない」とハッキリ言えるのはすごいなと思いました。

共通しているのは「声をかけてくれた編集さんのために売ろうとする」ということです。イノハラさんはやりたくないことはやらないけど、基本的に優しいんですよね。

お店でお話ししている時、イノハラさんがよく困り笑顔で「困るんですよ〜」と言っているのをよく聞いていました。
でもイノハラさんは他人を(私が見ている限り)拒否しない。
「困るんですよ〜」と言いながら受け入れてしまう。
そこも私には真似できないところです。

応援される才能のある著者・イノハラさん

そもそも今回の書籍は、冬營舎(とうえいしゃ)の店主であるイノハラさんが、日々「さしいれ」を頂いている記録をまとめたものです。

イノハラさんは仮に本が売れなくても、毎日誰かが食べ物やお菓子を持ってくるので、生命維持ができるわけです。
最初に聞いた時は「意味がわからん」と思いました。

イノハラさんには、人から応援される才能があるんですよね。

いずれSNSとかに書こうかなあ、と思っていたのですが、私は「人から応援される才能がないのがコンプレックス」です。
いや、もちろん私にも応援してくださっている方はいるんですよ。

でも万人に好かれるタイプじゃない。
いろんな人が私の生命維持のために差し入れを持って来たりはしません。

それはなぜかというと、私が「何でもかんでも一人でやろうとしてしまう」からだと思うんです。しかもそれで、やろうと思ったらわりと大体できてしまう。苦手なことをやるのも嫌だけど好きです。
苦手なことをやって自分が成長するのが楽しいからです。

イノハラさんは違う。苦手なことや、やりたくないことは基本やらない。
目立とうとも売ろうともしない。けど一人で生きようともしない。
ふわふわっと風の吹くまま生きて、「困るんですよ〜」と言いながらも他人を受け入れて、差し入れを素敵な笑顔で頂戴する。

それこそ細田さんが差し入れでたくさんお菓子を買ってきた時、イノハラさんが「あのお金でうちの本を買ってくれたらいいんですけどねえ(笑)」って言ったのを聞きました。
でもやっぱりありがたく頂戴して、そこにいる皆さんや、あとから来たお客さんに分けたりするんです。

私はもう自分ではない別人になろうと思わないのですが、それでもイノハラさんのようなかたを見ると「そういう風に生きられたらよかったなあ」と思います。

でもそれで嫉妬したり腹を立たせたりするような人じゃないんですよね、イノハラさんは。なんか応援したくなる。私にも微力ながら何かできることはないかと思わせる。だからこの記事を書きました。

今回出版される本を読んだら、あなたもその「ふわっとした癒し」を体験できるかもしれません。

本は今年(2022年)の7月末か8月上旬ぐらいに並ぶそうです。
ハーベスト出版は地元(島根県)の出版社さんなので、果たして全国の書店でこちらの本が並ぶのか私にはわからないのですが、お取り寄せや通販購入ができるはずです。

島根・鳥取のかたはおそらく地元の書店で購入できると思うので、ぜひご購入ください。というか冬營舎さんでも販売されるそうです。
古本屋なのに、新書が!

明確な発売日はハーベスト出版さんのサイトで告知されるのではないでしょうか。ぜひチェックしてみてください。
 ↓

それでは本日はこの辺で。
ごきげんよう、さようなら。

冬營舎さんの情報はこちら

★改めてインタビュー記事のリンクをもう一度張っておきます↓

★私の本もよろしくねーッ!電子書籍も紙の本もございます。↓

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アイキャッチ写真について

撮影:いしとびさおり(Tsubaki_Rokka)さん
a modo mio.
(いしとびさんホームページ)
Twitter@koto000

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