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アクセルと, 懺悔と, 時々ブレーキ

先輩から, 僕の同期について
「〇〇って, よくXXって言わない?」

と聞かれたことがある。


先輩曰く, 僕の同期の彼には,
お願いされたことをそのまま繰り返す癖があるらしい。


「この資料コピーして机に置いておいてくれない?」
「はい。コピーして机に置いておきます。


それがやや冗長に感じる時があるんだそうだ。


僕には全くピンと来なかった。

「あぁ, 彼にはそんな癖があるんですね。」
そんな感想しか言えなかった。


複雑な表情をしながら, 

「まあ分からないよな。
多分, 自分が細かい人間だから気になっただけ。」

先輩はそう言っていた。

君は優しいからな、と。



全く違う。


僕は興味がないのだ。
誰がどんな癖を持っていようが。


自分に影響がないのであれば, 
覚えている必要がない。

気にする必要がない。

だから忘れてしまう。


もしかすると, 忘れるどころか
視界にすら入っていないかもしれない。




僕は, 世間話ができない。


頭の中でずっと自分と会話しているからだ。


例えば, 大学に登校するとする。

そして, 前を歩いている人が, 
ゆっくり道の真ん中を進んでいるとする。

追い抜きたいけれど, 道が狭くて
絶妙に追い抜けない。

モヤモヤするシチュエーション。


これはつい昨日, 本当にあったシチュエーションだ。


そんな時, 僕の頭の中はこうなっている。


あ, 追い抜けない。
すごい邪魔だなぁ。

僕はこんなことしないようにしないと。

次から狭い道を歩くときは
端っこを歩くようにしよう。


あと, ちょこちょこ後ろを振り返って
迷惑をかけていないか注意しないといけないな。


ところで, なぜ前の人は
こんなに狭い道の真ん中を歩くのだろう?

過去に道の真ん中を歩かれて
迷惑だなと思ったことはないのかな?

これは他人に対する
想像力の問題なんだろうか?


あ, でも僕が, 僕の視点からしか
世界を見られないのと同じで, 

目の前の人も, その人の目線からしか
世界を見られないんだな。


この視野の狭さ,
固有の視点に縛られてしまうことで

あらゆる闘争が起こっているのかもな。


あ, それと, 僕はなぜ
こんなに迷惑がっているのだろう?

電車に乗り遅れても10分後には次が来るし。 

登校が遅くなっても
実験はいつやっても特に影響がないものだし。


うーん, 自分の思い通りに歩けないことに
怒っているのだろうか?

それとも配慮がない他人の行動に
悲しさを覚えているのだろうか?



こうして, うだうだ考えていると, 

次第に駅が見えてきて,
気づけば学校に着いている。


ただ生きているだけで, 
脳内で騒ぎ続けている。

だから, どんどん注意が目の前の対象から
逸れて逸れて, 最後は宙に浮いてしまう。


冒頭に戻ると,

他人の癖を覚えるほど, 
目の前の相手に注意を割けないのだ。



弊害はないのか。

もちろんある。


一度, 家族に注意されたことがある。


少し前, エコバックを持って, 
近所のスーパーに買い物に行った時があった。

母からLINEがあり, お使いを頼まれたのだ。


帰る頃には父が帰宅していた。

買い物袋を片手に持つ僕を見ながら, 
父は聞いた。

「どこに行ってたの?外は雨降ってた?」


読んでいる人からすると, 
至って普通の問いなのだろうか。

とりあえず, 僕の頭の中は
「?」でいっぱいだった。



どこに行ってた…?

買い物袋からネギが飛び出ているが…?
近所にスーパーは一軒しかないが…?

聞くまでもなくないか?


というか, 24にもなった息子が
買い物袋持ってどこに行ってようが

どうでも良いのでは?


仮にコンビニに行っていた時と, 
スーパーに行っていた時と, 

友達と遊んでいた時で, 何か変わるのか?


外は雨が降ってなかった…?

さっきまで自分も外にいたのでは?

しかも, 近くに窓があるから
カーテン開ければ外が見えるが?


というか, 外に出るわけでもないのに
聞いてどうするんだ?


なぜ質問をされているのか, 
一切理解できなかった。


僕の中では,
「話す = 何か次の行動につながる」

のイメージが強い。


よっぽど要件がないと, 人に話しかけない。

というか, 話しかけることができない。


基本的には,
意識を脳内の会話に割いているからだ。


話すことは, 僕の脳のリソースを大きく削ぐし, 

同時に相手の時間と,
思考のリソースを奪う行為だと思っている。



スーパー行ってたよ。
ほら。(買い物袋を見せる)

あと, 外は雨降ってなかった。
カーテン開ければ見えるよ。

で, 何で聞いたの?


僕にとっては何の悪意もなかった。
全く機嫌も悪くない。

純粋に質問された意味がわからなかったから, 
返事をして聞き返した。


「なんか嫌なヤツになったな。」
親から注意をされた。



先日, とある人にこの話をしたところ, 
「めちゃくちゃ感じ悪いね」と言われた。


どこ行ってても, どうでも良くないですか?

天気知りたきゃ, カーテン開ければ良くないですか?


この考えのどこがダメなのかわからず, 
質問をしたところ, 相手は頭を抱えていた。

「そうじゃないじゃん…」とのことだった。

結局よくわからなかった。


それ以降, 自分の中に, 
もう一つのキャラクターを持つようになった。

人と話す機会がある時は, 
明確にスイッチを入れて意識を切り替えている。

切り替えの目安は非常にわかりやすい。
言葉遣いが露骨に変わるからだ。


一応, それ以来, 対人関係で困ったことはない。

初めて会った人には,
多少は明るい人間に映ると思う。


でも根本は変わってない。

相変わらず, 人に意識を割けない。

頭の中は自分の声でいっぱいでも
心の中身は空洞のままだ。


僕は, つねに前に前に話を進めようと
してしまう節がある。

人間としての情緒が無いと言われるのは
きっとそういうところなんだろう。


だからたまには, 懺悔とともに
ブレーキを踏む時間も作らないと。

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