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七夕のタブー

七夕の日、友人と学校帰りにマクドナルドに行ったときのこと。友人が


「そういえば、今日、七夕やな。なんかお願いした?」


と訊ねてきた。


すっかり忘れていた僕は


「いや、してない。でも、べたやけど、織姫と彦星がもっといっぱい逢えますように。って、いつも短冊に書いてたわ。子供ん時とか。」


と答えた。すると、それを聞いた友人が驚いた顔をした後に、コーラの余った氷をバリバリ食べるのをやめて、真剣な顔で


「いやそれあかんで。」


と言った。


一瞬、何のことか分からなかったが、おそらく僕のお願いごとのことだろう。そう思い、


「いやいや、なんで?べつにええやん。」


と理由を訊ねると、友人が真剣な顔のまま、言った。


「星の寿命って、どんぐらいか知ってる?」


「知らん。」


「だいたいな、10億年ぐらいやねん。やから、あの二人はな、死ぬまでに、10億回も会えんねん。」


衝撃の事実に驚きながらも、僕は答えた。


「でも、一年間も逢えへんねんから、もっと、短いスパンで逢うてもええやん。」


「ちゃうちゃう、人間の寿命に換算したら、どうなると思う?3秒に一回やで?どんなラブラブカップルやねん。ずっと一緒におるようなもんやん。それやのに、これ以上会わしたら、二人とも病んでまうで。」


友人のその言葉に、今までの会いたくても会えない、切ないイメージとは真逆の、ラブラブ織姫・彦星カップルをイメージして、笑ってしまった。


「いやいや、笑い事ちゃうで。」


なぜか真剣な友人の態度も相まって、さらに笑う。夕暮れのマクドナルド。サラリーマンとか、他の学生とか、いろんな人がいるが、今日が七夕だと一体どれほどの人が気づいているのだろうか。ましてや、あの織姫と彦星が実はラブラブだなんて。謎の優越感に浸っていると、


「俺"ら"も早く彼女できへんかなー。」


不機嫌そうに友人が言った。


"ら"は余計や。

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