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足音【不思議で奇妙な話】

10年以上前に両親とわたしの3人で住んでいた、2階建ての家での話です。

その家の階段は間取りで言うと家の中心にあり、1階台所の勝手口と一直線上に位置していました。
わたしの部屋は2階。階段の真横にありました。真下は両親の寝室でした。

ある日の深夜。
誰かが階段を上ってくる雰囲気を感じて、わたしはうっすらと目が覚めました。「母が様子を見に来たのかな」と思ったのですが、そのまま再び寝入りました。

翌朝。
母がわたしに対して、こう聞いてきたのです。
「あんた、夜にトイレに行った?」

トイレは1階にあるので、行くには階段を下りなければなりません。しかし、わたしはトイレには行っていません。
「行ってないよ。お母さんこそ、夜に階段上がってきたんじゃないの?」と聞くと、
「階段は上がってないよ」と返事が返ってきました。

え?

…それって…

2人とも”同じ足音”を聞いていたってこと…?

それに、よくよく考えれば、母が夜中に2階に上がってくる理由は、そもそも無い…

なぜ、わたしは何の疑いもなく母だと思ったのか。



一体、誰が階段を上り下りしていたのでしょう。

勝手口から出入りする何者かが居たのでしょうか。

現在、その家は取り壊されて、別の家が建っています。

(了)