2023年 自由律俳句まとめ
無反応のスマホを息で湿らせる
夜に干したデニムが冷たすぎる
ポケットから差し出された飴が溶けている
言い間違いを聞き間違えてめちゃくちゃ
スノーブーツ履いてサンダル買いに行く
音の出ない拍手をする
おはようの代わりにクシャミ
自動音声に自動音声が応えている
潰せば入ると思ったんだろうビニール袋の穴
このちらし寿司は明日も食べるだろう
昨日の湯温だと熱い
外に出ぬ間に春が咲いている
右手指の絆創膏の過去を聞かない
自分の顔を探し数える卒業アルバム
出る家のがらんどうに在りし日の記憶を繰る
後について復唱するにはせっかちだ
老人の荷物を持つ順番で揉めている
傘を取りに帰るには進み過ぎた
鬱蒼としているがパン屋だ
多分同じ名字の人がいる
カーテン開けても灰色
次の日陰まで小走りしたい気持ちだけ
渡せなかったプレゼントを飾る
上着を脱いでも柄だ
毎日話すがどこの誰だろう
アから順に思い出そうとしている
遠くも近くも見えにくい
桜を口実に北へ行く
雨の日も楽しんでいく腹の内は土砂降り
素直な美味しいを言いたかった
名前を知らない人として座っている
ナショナル製なら動くだろう
目を合わせたくて眼鏡を外す
レザージャケットの裾にリボンを隠した
工作に貼られたセロテープ量が証
分かりやすく動揺している
2時間悩んで結局ベーシック
そんなに蟻に恨みがあるのか
傘をさすタイミングに息をひそめる
朝顔の青い鉢のプレッシャー
肩の重さが首へ移っただけ
履き潰した靴にすがる
嵐の前の静けさがひとりを廻る
言わないでの中身は覚えていない
年中閉店セールと知っていて入る
この歳で新しい味を知る
運ぶことを考えていなかった力作
タッパーの蓋だけ多すぎる
雷鳴を応援に駆ける夕暮れ
フリーマーケットの余香を喰らう
靴の中で靴下が行き場をなくしている