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座る女性【不思議で奇妙な話】

母の実家には、家族が集まる居間に大きな大黒柱があった。

ある夜、幼い頃の母はその大黒柱の元に座る、黒髪が長く白い和服を着た女性の姿を見た。

女性はただ座って居間を見ているだけで、こちらに何をしてくるというわけでもなかった。

その女性からは感情は読み取れなかったらしい。

別の日の夜、母の兄も大黒柱に白い和服の女性を見た。

やはり女性はじっと座って居間を見ているだけだった。



母の両親、つまりわたしから見ると祖父母は、その両親、わたしから見ると曽祖父母と険悪の仲だった。

「曽祖父母とは絶対に同じ墓には入らない」

祖父母の唯一の遺言だった。

そんな不和な状況を、白い和服の女性は大黒柱の元に座って、じっと見つめていたのかもしれない。

これは約50年前の話。

今、その家には誰も住んでいない。

しかし、白い和服の女性はまだ大黒柱の元に座っているかもしれない。

円満な家庭を見るまでは。


(了)