隠れた名作を隠れさせたくない【スーファミ末期のスクウェアソフト】
「ルドラの秘宝」をご存知でしょうか。
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1996年(平成8年)4月にスクウェアから発売されたスーパーファミコンソフト「ルドラの秘宝」。ジャンルはRPG。
キャッチコピーは「神への挑戦、16日間。」
結構、インパクトのあるキャッチコピーだと思います。
しかし、売上は15万本と少ない…
同年に発売されたソフトで、最多売上は822万本。
比較すれば、圧倒的な差。
いったい何故こんなことになったのか?
その背景は、実に切ないものでした。
売上が少なかった背景
1994年に初代プレイステーションが発売されました。ほぼ同時期に初代セガサターンも。そして、1996年はニンテンドー64が発売に。
そう、ゲーム機の移行期が来ていたのです。
さらに、ルドラの秘宝が発売される前後に出てきたゲームソフトたち。
有名どころを挙げると、
95年11月「ロマンシングサガ3」
95年12月「ドラゴンクエスト6」
96年2月「ポケットモンスター赤・緑」
96年3月「スーパーマリオRPG」「星のカービィ スーパーデラックス」「バイオハザード」
96年4月【ルドラの秘宝】←ココ!
96年5月「ファイアーエムブレム 聖戦の系譜」
96年6月 「スーパーマリオ64」
96年9月「女神異聞録ペルソナ」
96年11月「アークザラッド2」
97年1月「ファイナルファンタジー7」
こんな感じ。当時の感覚を思い出していただけたでしょうか。
ルドラの秘宝は完全に有名どころに挟まれてしまっています。
ルドラは宣伝を前もって大々的にしていなかったみたいで。「緊急発売」ってチラシに書くくらい、発売直前でのお知らせだったのです。
そんなこんなで、埋もれてしまった不運。
ちなみに、前述した売上822万本は、ポケモン赤緑です。
しかし、なんだかんだルドラは、スクウェアのスーパーファミコンソフト末期を代表するRPG作品のひとつで、現在では【隠れた名作】と言われています。
いや、名作なら隠れないでくれ。
という訳で、わたしは全力で推していきます。
ルドラの秘宝 最大の魅力「言霊(ことだま)システム」
言霊、つまり魔法のこと。
ルドラでは、レベルアップしたら新しい魔法を覚えるシステムではありません。レベル1でも、バリバリ使えます。
いや、使えると言うか、プレイヤーが思いのままに言霊を作ることができるんです。
アからンまでの50音、プラス濁点、半濁点、小さい文字、伸ばし棒を組み合わせて作成。最大6文字。
初見プレイが当時小学生のわたしを例に出せば、スクウェアのソフトだから、ファイナルファンタジーの魔法を入力してみました。ファイアなら火の魔法かな? サンダーは雷? ケアルは回復? みたいに。
それから、エニックスからドラクエの魔法も。メラ、ホイミ、パルプンテ…
まったく意味のない単語でもいいのです。「オベペヌヤフ」でも全然OK。
なんやねん、オベペヌヤフって。聞いたこともないし、今、初めて書いたわ。
どんな効果の言霊になるかは、作成してみないと分からない。
どうしたらいいかわからないって人のために、前もって作成されている言霊があるし、道中キャラが教えてくれる言霊もあって、ちょっとしたフォローがあるにはありました。
ただ、ゲームを攻略するに当たっては、MPを大きく消費しない、強力な言霊が欲しいわけで。
「言霊の文字の配列には法則があるはず」
プレイヤーはそう考えたと思います。
ファイアは強くなればファイガになるし、イオはイオナズンになる。
そういう語尾変化なり、語句の組み合わせなりがあるはず...
試行錯誤しながら、言霊を作成すること。
これが、ルドラの秘宝の最も奥深く面白く、難解で探求心をくすぐられるシステムです。
たまたま超強い言霊ができた時は、めちゃくちゃ喜んだし、重宝しました。
発売から24年経った今では、言霊について多くのファンが研究に研究を重ねており、十分すぎるほどの情報があるため、初見でも強い言霊が作れてしまいます。
つまり、言霊作成がただの作業になってしまうということ。
これは実にもったいない。
ぜひ初見は、自力でヘンテコな言霊を作って遊んで欲しいです。
余談。この言霊システム、特許を取得していました。わぉ、すごい… 納得。
ルドラの秘宝のストーリーとキャラクターたち
ここからは、肝心のストーリーとキャラクターたちを、オタク全開でお届けします。
マジでーと言っている彼らが主人公たちです。
主人公はこの4人。シオン、サーレント、リザ、デューンです。
ここまでで、ちょっとゲーム内の専門用語を出したので、そっちを先に解説しちゃいましょう。
では、主人公たちの関係性を見てみましょう。
ストーリーがある程度進んでも、成り行きで助け合ったり、お互いに顔見知り程度のつながりです。
『この4人で敵に向かっていく話じゃないの? 強い絆で結ばれてないの?』
そんな質問が聞こえてきそうです。
はい。ラストはそうなるんですが…
4人が主人公ってことは、それぞれのシナリオがあるということです。
プレイヤーは3人(シオン、サーレント、リザ)のうち1人を選択してシナリオを進めます。つまり、人間が滅亡するまでの同じ16日間を、3人の視点で見ることになるわけです。
誰から始めても構わないし、1人のシナリオを最初から最後までやって次のキャラに進んでもいいし、3人のシナリオを並行して進めてもOK。
じゃあ残りのデューンは? って話ですが、それはプレイしてみてのお楽しみ。
シナリオ全体を初見で全て理解できるかと言うと、なかなか難しいかもしれません。周回してみて、つながりや用語が分かってくると…
きっとそこは沼。
マニアックな世界があなたを待っています。
例えば「ルドラ」や「ラゴウ」の語源は、なんだ? とか調べ始めたら、もう、沼住人。
ぬるぬる動くドット絵
スーファミ後期ともなると、美しく細かいドット絵と動きが表現されるようになります。
ルドラは、バトルでキャラクターがよく動きます。忙しないくらいに動きます。ファイティングポーズをとって肩を上下させる。言霊を唱える時は口をパクパクさせる。言霊を放出している時は髪の毛がたなびく。クルッと1回転したり、手を振ったり。みんなカワイイ。
特に、敵キャラがぬるぬるブンブン動きます。
かっこいいやら、気持ち悪いやら。もう、惚れ惚れ。
名作ゲームの音楽にハズレなし
ルドラの魅力に、BGMが良いことも挙げられます。作曲は笹井隆司さん。
残念ながらストリーミングサービスにルドラのサントラはありません。
しかし、iTunesストアで視聴、購入はできます。
ストアで人気曲順にしてみると、上位は戦闘曲が占めています。
1位がリザのボス戦闘曲「The Flame and the Arrow」、2位がサーレントのボス戦闘曲「The Spirit Chaser」です。
個人的にはサーレントの方が好きかな。
ボス戦闘曲は主人公4人それぞれに用意されていて、どれもカッコよく魅力的です。
もちろん、フィールドにいる時の曲や、街中、しんみりした時、おちゃめなシーン、ダークなシーン... どれもハズレなしです。
オープニングデモが粋。
ゲームをONにして、そのまま何もボタンを押さないでおくと、オープニングデモが流れますよね。
内容はタイトル、ゲームストーリーの説明、イベントのカットなんかでしょうか。
これから、こんな風にプレイしていくんだなって世界観を想像させるもの。
テーマ音楽と共に流れる映像が、盛り上がって良いですよね。
ルドラの場合。
最初に、前述した世界観の説明が流れます。4000年ごとに...ってやつ。
そして、ゲーム内のシナリオカットをダイジェストで、と初見は思うところ。
でも、ちょっと違うんです。
確かに実際にプレイするシーンも入っているのですが、その割合が少ない。
じゃあ、なんのシーンが? ってことなんですが、クリアして2周目に、あるいは ある程度シナリオを進めてから見て初めて「あぁ、そう言うことか!」と分かるようになっています。
とっても良き演出なので、都度OPデモは見返してみるとGoodです。
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まだまだ語りたいマニアックな部分があるのですが、長くなってしまいそうなので、今回はこの辺で!
(その2につづく)