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それは必要なタイミングで起きた

新卒入社2年を過ぎた頃。

ルーチン作業中に突然、上から降ってきた。


「会社、辞めよう」


それまで、考えたこともなかった退職という2文字が、

まるで天からのお告げのように、私の頭をぐるぐる回り始める。

午前10時のことだった。




作業を終え、退職希望を話す相手を探しに行くことにした。

相手は2人。

1人は社長。

社長は1階フロアの、隅の机にいつも座っている。

探さなくても、そこに行けばいる確率が高い。


問題は。

もう1人の、部長の方。

部長はどこにいるか分からない。

会社内にいるとしても、探し回らないといけない。

見つかっても、手が離せない場合が多い。

会社内にいない可能性もある。

明日もいないかも。

すぐには約束を取り付けられないと思った方がいい。




とりあえず、部長を探してみよう。

そう思って、社長のいる1階へ階段を下りていくと。

階段横のトイレから社長が出てきて、

階段横の給湯室から部長が出てきた。

3人が、鉢合わせ。

『おう』

「あ、あ、お、お疲れ様です…」

不意をつかれた。

探さなきゃと思って30秒後に、

探し相手の方から、しかも2人とも、私の前に現れるとは。

これはもう、導かれたとしか思えない。


「すみません。お2人に話したいことがあるんですが、今よろしいでしょうか?」

午前10時半のことだった。