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第9回 音楽「南米のエリザベステイラー」(菊地成孔)


どうも。自家焙煎珈琲パイデイアです。

今回はジャズサックス奏者、菊地成孔さんの2005年に発表されたアルバム「南米のエリザベステイラー」の書き留めです。

菊地成孔さんは、もちろん、ジャズメンとして憧れがあるのもありますし、ラジオDJとしての選曲、喋り、コントへの憧れもあります。文筆家としての憧れだってあります。おおよそ、珈琲を焙煎していない、と言うことを除けば、菊地成孔こそ私のなりたい人、そのものと言って差し支えないと思います。

数ある菊地成孔作品の中でも、このアルバムに収録されている「京マチ子の夜」がとにかく素晴らしいのです。
妖艶で、ミステリアスで、ダメだとわかっているのに溶かされていく官能的なメロディに、各ソロが持ち合わせる独特の世界観が入れ替わり立ち替わりやってきて魅了していきます。

平成一桁生まれの私は、申し訳ないのですが、女優京マチ子を資料としてしかしません。たまさか大学の授業で映画学をとっていたので、何本か観たくらいです。
しかし、この曲に酔わされるのにそんなことはもはやどうでもいいのでしょう。

菊地なるよ史(なんてくだらない言い方)的コンテクスト(別に使わなくてもいい一語だし)でみると、「南米のエリザベステイラー」をソロ名義で発表後、このアルバムをライブで再現するために、「菊地成孔とぺぺ・トルメント・アスカラール」が結成され、「野性の思考」や「記憶喪失学」が次々と発表されます。
そして、2014年、私が思う日本のジャズシーンにおける一つの到達点であるアルバム「戦前と戦後」が生まれます。(もっとも、ジャズシーンの一つの到達点であるこのアルバムに『wの悲劇』が収録されていることについてもいつか考えたいのですが)
菊地成孔を持ってしてもここまで到達するのに、始まりのアルバム「南米のエリザベステイラー」発表から9年の年月が掛ったのです。

このアルバムの誕生は日本のジャズシーンを一つ上に押し上げたと言っても過言ではないと思います。

この先のぺぺ・トルメント・アスカラール(もうこの先「ぺぺ」と言いますね)の音楽性を考えると、このアルバムは比較的聴きやすい楽曲が多いのですが、中で、「Jorge  Luis Borges」は即興的で、パーカッションが音楽リードする、ぺぺの音楽観の片鱗が見られます。
終始、どこかで爆発しそうな沸々としたリズムが、乱暴で暴力的、だけども、繊細な不協的な音と絡まっていきます。
音楽はそのまま大きな展開を迎えることなく、萎むように、衰退するようにフェードアウトしていきます。

ジャズと言う音楽に敷居の高さや堅苦しさを感じてる人は、まずは菊地成孔でその概念をぶち壊して、続いてマイルス・デイビスでぐちゃぐちゃにされてしまえば良いと思います。

音楽系のサブスクで「南米のエリザベステイラー」を検索すると、芋づる式に菊地成孔作品がおすすめされると思います。
どうぞ、ジャズが艶やかに、崩れていく様を聞いて頂けたらと思います。


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