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第10回 展覧会 「モネ 連作の情景」(上野の森美術館)

どうも自家焙煎珈琲パイデイアです。
今回は展覧会に行ってきたって書き留めです。

私は中退しているとはいえ、一応、大学の芸術学科に席をおいておりましたので、美術に関しても入門的なことはやりました。
西洋美術は歴史とその研究に関する演習みたいなものが必修だったので、なんとなくでも話は聞いていました。

で、今回は上野の森美術館で開催されていたモネの展覧会「モネ 連作の情景」へ行って参りました。
まあ、思っていたよりもよかったです。いや、これはかなりよかったです。行っておいてよかった。

途中、西洋美術館の「パリポンピドゥーセンター キュビズム展 美の革命」という大きな垂れ幕が掲げられていて、モネって結構よくやるしこっちにしようかな、なんて心が揺らいだのです。
確かにモネはいつでも見れるっちゃ見れる、なんなら「睡蓮」のうちの一作は箱根のポーラ美術館にもあるしな、なんてことを思っていましたが、これがとんでもない間違いでした。
いやいや、モネにしておいてよかった。

今回の展覧会は、モネの絵が見れた、というある種のミーハーな満足感よりも、展示の仕方や企画趣旨そのものにかなりの意義があったと思います。
つまり、モネという作家の大きなアイデンティティである「連作」にとことんまで力を入れて、作品がかき集められていた企画意図がすごくよかったのです。

教科書で観たことあるような有名な作品を前面に押し出して、集客できるなら、美術館としてはそれに越したことはないでしょう。
しかし、そこに美術研究としての意義は見いだせません。

今回の展覧会では「ウォータールー橋」や「積みわら」「睡蓮」など、一つのモチーフを時間、季節、天候ごとに描き分けるといったモネの連作シリーズが、作家自身がこだわったコンテクストの中で鑑賞できるように、今はてんでんばらばらに所蔵されてる連作が集められていました。
これらの連作は元々は一つの個展で鑑賞される前提でモネによって描かれていました。
モネは一つの部屋に並んだ連作を意識して、写実性と他の作品との調和とのバランスを取りながら描かれました。

普段のモネの展示で観ることのできない、モネという作家の代表作の、ある意味で本当の姿が観れたのではないかと思います。

鑑賞する者への影響は、作品そのものよりも展示のされ方の方が大きかろうというのが、今まで展覧会に足を運んで見えてきた経験です。
美術の展覧会は、作品や作家の名前が全面に出て宣伝されますが、そこで謳われているのは、あくまで何が展示されているか、でしかないのです。
カレー屋で言えば、「ターメリック、クミン、コリアンダー、レッドチリペッパー」って看板を出しているようなもんです。
大切なのは、それらを使って、何を作っているかでしょう。先の4つのスパイスを使って、カレーを作っていることが分かるから、みんなお店に入るのです。

「モネ」「キュビズム」と大々的に謳う宣伝は「4つのスパイス」を宣伝していることと変わらないのです。
大切なのは、その作品たちをどう展示して、そのような展示をすることにどんな意味があるのか、ということです。
そんなことを気にして展覧会を選んでみると、ただ有名な絵を見た、だけでは終わらない、ちょっとステップアップした楽しみ方へ幅が広がります。
そんな選び方をすると、例えば、今回「モネ」の展覧会に行ったからもうモネはいいや、で終わるのではなく、違う美術館の「モネ」展はどんな展示、どんな順番で展示しているのだろう、と気にしてみる面白さもあります。
同じ絵でも見えてくる作品の背景、感じ方が変わってくるので、これも一興でしょう。

というわけで、最後は展覧会の選び方を偉そうに説教する蛇足がございましたが、今回は「モネ 連作の情景」についての書き留めでした。

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