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サッカー指導者がフットサルを考える①

フットサルとは?

発祥についてはウルグアイやブラジル、アルゼンチン出身の指導者によるもの…といった南米の説や、イギリス起源で各地に広まった説などあるなか、
バラバラだった各ルール(壁当てアリ等)がFIFAにより統一され現在のかたちになったのは1989-1994であるとのこと。(ウィキペディア等参照)

いずれにしてもサッカーをアレンジし様々な環境や場所に応じて楽しめるようにしたものがフットサルになったと考えて間違いなさそうだ。

環境に左右されずボールを蹴れる機会が増え、また統一ルールにより繋がりが増えたのはフットサルの大きな価値だろう。

その機会の増加による影響は様々だろうが、ここでは

「育成年代のサッカー選手にとってフットサルの性質・導入は成長に適しているか」

という観点に絞り話を進めたい。



我々が取り入れたキッカケ

我々の小学生サッカーチームが「フットサル」そのものを取り入れたのは大体今から5年前。
個々のプレー機会の増加等を考慮したスモールサイドゲーム…いわゆるミニゲーム形式をトレーニングに導入することは既にサッカーの指導業界では当たり前のものとして認知されており当然のごとく行っていたところ
(参照https://www.jfa.jp/news/00028980/…こちらは更に近年整備されたもの)
そのなかであえて「フットサル」がサッカーに有効だという主張があることが気になりフットサル大会に参加した。

当時は特にその主張を掘り下げず「足裏」「トーキック」といった技術面とその活用法にサッカーとの違いを感じ覗いてみたいという認識があった。



チョンドン祭りとモデルとなるフットサルチームとの遭遇

大会は3チームリーグ。
相手はサッカーではさほど大きな成績を残していないフットサルと並行して活動しているチーム(初戦)と、フットサル専門のチームで全国にも顔を出すチーム(ニ戦目)。
フットサルを知るにはもってこいな状況だった。

初戦で洗礼を受けたのはいわゆる「チョンドン」
外に出るたびにほぼチョンドン(キックインを軽く転がし即シュート)をされ、ルールに不慣れなことから事あるごとに後手に回りリズムが掴めない。
個々の能力では上回る様子だったが向こうのほうがやるべきことを絞っている分判断負荷が少なく動き出しが早く引き分けるのがやっと。
サッカーとの違いに戸惑い攻守の切替えに苦戦する一方、フットサル特有の要素をアドバンテージ?にして判断も絞るマシーンのような相手選手とその戦い方からはサッカーや育成に活きる要素を見つけづらかった(あくまでこの日の彼らの戦い方には)。
しかし見習う必要性は感じなくとも、対戦する分にはその不慣れ戦い方への対応に切替の早さが必要となることからその重要性を感じられることは貴重な機会であった。

ニ戦目の相手はより印象的なチーム
こちらもフットサルへの慣れの部分でまず差を感じたが、
プレーの土台はサッカーでも良く見られる戦術と技術をもってポストプレー等で崩していくスタイル。
それを狭い中で切替早く行う様子は間違いなくサッカーの局面打開にそのまま活かせるもので、
またそれはフットサルという狭い局面が日常な環境だからこそ研ぎ澄まされていきやすいのではないかと感じられた。
彼らのスタイルは未だに我々のひとつの見本として記憶に残っている。

この大会を通じて、
フットサルの練度が高いチームからは技術的な要素よりも個々の判断…特に攻守の切替について考えさせられ、
また「フットサル特有の戦術に拘りすぎずサッカーとフットサルに共通する要素」のなかで局面での攻防に焦点を当てれば、それらはサッカーのみでプレーするより必要性を強調でき効果的な成長に繋げることができるのではないかと感じられたので、
以後も引き続きフットサルに取り組むようになっていった。




現段階での効果

・1分間あたりのボールタッチの回数がサッカーの6倍
・狭いコートでサッカーより判断・決断のスピードを要求される
…世で言われているこのあたりの性質から攻守の切替と足元の技術・個人戦術の精度を高めるという育成年代に必要な個のベースを作るのには確かに適しているように感じているが、
そのなかでも切替については、少人数制ということもあり動かない選手がサッカーより明確になり結果にも響きやすく焦点を当てやすい。
またそれはフットサルの対外試合を行うことにより狭いコートを主戦場として突き詰めていった彼らと対峙することで明らかになった部分だと考える。

サッカー協会が周知したスモールサイドゲームでもそのゲーム形式は似たようなものなのだが、
これまで協会から発信され出回っていたそれはどちらかというと個々のボールタッチの回数増加・判断の回数増加とそこから来る楽しさに焦点が置かれており、
プレーの土台を形成する切替の早さについてまで話が及んでいなかったように記憶している(間違っていたらすみません)。
この部分に気付け意識が高まったのは大きな成果であると考えている。

そしてゴール前の動きも向上しているように感じている。
これは協会の指導者研修でも取り上げられた「ダブルボックス」と同じ効果が考えられ、
お互いのゴールが近くゴール前のシチュエーションが多々あり「シュート」に対する攻守の意識がより求められることが理由だろう。
これもサッカーボールとミニゴールで行うスモールサイドゲームだとゴールが小さくなるだけな分シュートレンジもミニチュア化していくが、
フットサルボールで行うことでそこは解消されるように感じている。
そしてキックフェイントやトーキック等のバリエーションを身につける選手が増えた気がする。

また平面でのプレーもサッカーのベースと考えているのだが、
フットサルではバウンドをしないボールを使うことでバウンドに戸惑う低学年を中心にした選手達にとっては戦術面でボール以外に気を配りやすく適切な負荷の環境下であると考える。

サッカークラブでも普段の練習での対人形式ではスローイン制ではごちゃつく時間が多々生まれることからキックイン制を多用しているケースは特に低学年では多いのではないか。



デメリットについて

今回のまとめは、デメリットを主張される体験談をSNSで拝見したことがキッカケ。
そこではサッカーとフットサルの両方を別々に所属することに対するリスクをお話されており、これは心に留めるべきだと考えたからである。

まとめると、以下の問題が発生したとのこと
・サッカーとフットサルの両方の戦術を使い分けるのは小学生には難しい。似ているからこそ間違った持ち込みをしてしまう
・プレーエリアが狭くなる
・スプリントが短くなる
・サッカーボールへの対応が下手に

ポイントは最初に参加したフットサル大会から感じている「サッカーとフットサルの共通点」のところなのだろうと考える。
両方を意識されている場所(両方を取り入れているチームや、両方の向上を目的にしているどちらかの…特にフットサルスクール)であれば、
戦術面でどちらかにしか使えないものは控えたり、偏った指導はしないだろう。
先の意見の方は「フットサルの戦術を教える本格的なチームはサッカーをしっかりやりたいなら入らせないほうが無難」とも話されているのだが、
そのあたり偏っていた部分があったのではないか。
フットサルとサッカーの両方をただやれば良い訳ではないことを示す貴重な意見だと考える。

また育成年代ではチーム独自の「チーム戦術」に時間をかけすぎてしまうとチームの勝率は上がるが個の成長には結びつかない(その後のチームには必要のないものになる可能性があるから)…という考えが基本だが、それにも通ずるものを感じる。

低学年ではフットサルのサイズや弾まないボールが成長に適している部分が大きく感じられるが、
高学年では広くグラウンドを見渡せる視野を要求する広めのコートでのポゼッション練習も必要だし、スプリントもそこで質の違いが出るだろう。
ヘディング含めた浮き球の対応も年齢が上がるにつれ増えていき避けられない要素だ。
このあたりの使い分けには指導するうえで注意を払わなければならない。

またこの話は似通っている2つの競技の話であり、「マルチスポーツ」という考え方とはまた別で考える必要もあるだろう。こちらもいつか掘り下げていきたい。



最後に

以上が現在のまとめであり、
現状は「取り入れ方次第では適している」という答えにたどり着いている。

しかしこちらはフットサルについてはサッカーより経験が浅い分、本来もっと得られるものを無駄にしてしまっている可能性や、もしかしたらデメリットに気づいていない点があることも否定はできない。

引き続きこの取り組みは試行錯誤をしながら継続していくつもりである(だからタイトルは①なのである)。
今は多少リスクも感じながらフットサル寄りの戦術をサッカーに取り入れたりしてみている。

その継続した活動のなか
最近一部のフットサルチームについて気になるのは、サッカーチームにフットサルで負けると「球際」を言い訳のように理由とするチームが多いこと。
これは一体どのような観点なのだろうか。

球際はフットサルにおいても基本だとこちらは考えている。スライディングやショルダーチャージはとっくにルールに取り入れられておりそこに競技上の違いはないのではないか。 

彼らがどのようなスタンスでフットサルに取り組んでいるのかは不明だが、このあたりの解釈は明暗を分けている気がする。

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