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3.喫茶店は人とつながる入り口

 大体、週2〜3回は喫茶店やカフェに行くようにしている。意識しないと一日中家から出ない、なんてことになりかねない。

 このエッセイは、自分が毎日何を思い考えているかを自分で知るため、そして友人・知人への近況報告も兼ねて書いている。
 日々の過ぎていってしまう小さなことをすくって、自分という棚にはなにが収まっているのか、棚おろしの意味をこめて綴りたい。

 お気に入りの店が何軒かあり、用足しのついでに気分によってふらっと立ち寄る。コーヒーを飲みながら、本を読んだり、携帯電話をいじったり、新聞を読んだり、考え方をしたり。
 でも実は、カウンターに座る常連さんと店主さんの話を、離れた席からこっそり聞くのが一番楽しみなのだ。

 常連さんはお年寄りが多い。話題の中心は健康のこと、最近はもっぱらワクチンのこと。他にはどこどこの誰々が最近はどうした、ということ。時々、政治のこと。

 そんな話を盗み聞きしながら、街の雰囲気を自分なりに把握するのが楽しい。(大きな声で話しているので、店内どこからでも聞こえてしまう。だから「盗み聞き」というのは少し違うかもしれない…)

 何度か来店し、毎回店主と常連客の話を傍観者として密かに楽しんでいると、ある喫茶店の店主さんが「今日はおひとりなんですねぇ」と声をかけてくれた。
 余談だが、この方、なんというか“シャキッ”としていて、働いている姿が気持ちよく、また常連客への話の返しも爽やかで、これまた密かに元気を頂戴しているのだ。

 そんな素敵な店主さんに、認識された…!

 今年の春に引っ越してきて、現在働いていないわたしは、まちに知り合いがひとりもいない。だから、誰かがわたしを認識してくれたのが思いの外うれしかったし、それが好きな店主さんだったからさらにうれしかった。
 店主さんとしては、「結構来店するけど変な人じゃないかしら」という視点だったかもしれないけど…笑

 「誰も自分のことを知らない街に行って、一から出直したい」と20代のころはよく思っていて、30代になった今、思いがけずそれが実現してしまっている。
 確かに誰も自分のことを知らないというのは爽快でもある。でも、いつまでもいつまでも、誰かの会話を第三者として聞き続けるのは、ちょっとさみしい。

 店主さんが話しかけてくれた時、ふいに会話の登場人物になった気がしたのだった。そろそろ、このまちに知り合いがほしいのかもしれない。

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