6.トイレを好きになればこっちのもの
夫が消臭剤を手づくりする、と言い出した。彼はInstagramで、家を快適にする豆知識アカウントをフォローしているらしい。
このエッセイは、自分が毎日何を思い考えているかを自分で知るため、そして友人・知人への近況報告も兼ねて書いている。
日々の過ぎていってしまう小さなことをすくって、自分という棚にはなにが収まっているのか、棚おろしの意味をこめて綴りたい。
彼が消臭剤を欲している理由は、寝室のにおいが気になるからだ。窓のすぐ外にトイレの浄化槽があり、窓側で寝ている彼は「夜になると臭くて眠れない」と度々訴えていた。
(わたしは窓から離れて寝ているせいか、そもそも鼻がそんなに効かないのであまり気にならなかった。)
手づくりの消臭剤、本当に効くのだろうか?買ってきた方がいいのではと思ったが、夫はおしゃれじゃないものを窓際に置く許可が、わたしから下りないと思ったようで手づくりすると言った。
それで、つくった消臭剤がこれだ。
カチカチになるタイプの保冷剤を常温にし、中身をビンに入れる(好みでアロマオイルやハッカ油などを数滴垂らす)、作り方はシンプルだった。おはじきは彼なりのおしゃれで、素朴さがわたしは気に入った。消臭もされている、気がする。
そんなに簡単にできるのであればわたしも作りたいと思い、翌日100円均一で材料を購入し、作ってみた。結構気に入っている。
トイレに置いたのだが、消臭以上の効果があった。トイレという場所が好きになったのである。
これまで、あまり好きになれなかった我が家のトイレ。家自体が築30年以上と古い(そこが良いところでもあるが)ので、トイレはギリギリ洋式だがそれなりの代物だ。用を足す時も快適とはいえず、そうじも必要最低限だった。
そんな中、手づくりのものを置いたことで、急に“トイレをもっと素敵にしたいぞ欲”がムクムクと湧き、細かいホコリを取り、隅々まで掃除機をかけ、ピカピカに便座を磨き、トイレットペーパー在庫の重ね方を変えたりした。
それまで化学的な香りが漂っていたが、気にならなくなった気がする。
トイレに行くのが楽しみになったのだ。
家の中で好きじゃなかった場所を好きになれたのは、なんだかうれしいし、“こっちのもの”“勝った”という感じがある。
なんでも買ってくれば簡単に済んでしまうが、自分が手間をかけたもの、気に入ったものを家の中に増やすのは、価値観を変えるんだ…と驚いた。
なにかつくることは好きだが、自分のためにつくることにあまり意識が向いてこなかった。これからは自分の生活を気持ちよくするためにつくるのもいいんだな、なんて思っている。
(そして消臭剤をつくると言った夫を見直したのであった。)
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