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アメリカ縦断ぼっち旅 7日目 公共交通機関だけでマウントフッドへ


薄暗い時間に起きる。
9月も半ばに差し掛かってくると、日が少しずつ短くなってくる。

フロントでロッカーの鍵を返却し、チェックアウトを済ませて、いざマウントフッドへ。
バスの乗り場をフロントに再確認。
これまた丁寧に教えてもらう。ほんと親切。



マウントフッドに行く経路は

①バスか路面電車でGreshamへ行く。
② Gresham駅のバスターミナルでSandy transit center行きのバスに乗り換え。
③終点のSandy transit centerに着いたら、 Mt.hood express というバスに乗り換え。
④tinberline (確か終点)で降りる。

Googleマップでtinberlineを目的地にして経路を検索するとすぐに出てくる。
3時間ほどかかるが、片道料金が5ドル50セントって、安すぎないか?


買い物でだいぶ重量が増したリュックを背負って、朝7時。出国時には上3分の1が空いていたのに、今はパツンパツンに上まで詰まっている。
最寄りのバス停には乗車券の販売機が無かったので、乗り込む時に運転手さんにお金を払う。
お釣りが出ないように、1ドル札とクォーターを多めに持っておいて良かった。
トライメットの乗車券は、一日券と2時間乗り放題券の二種類を選べる。今日はポートランドを出てしまうので、2時間券の2ドル50セントを支払う。
バス停の名前がどれも似ていて、どこで降りるかさっぱりわからん、、隣に座っているおじいさんにググった経路の画面を見せて、ここで降りたい、と聞くとそのバス停がきたら教えるよ。と言ってくれた。

おじいさんはしばらくすると、窓際にある黄色いコードを指でちょいと下げた。
次降りますサインが点灯した。
へぇー、なるほど。日本はボタンだけど、アメリカはコードなんだね。

降りる直前におじいさんが、
「降りて歩いたら右手に電車の停留所があるから」
と、さらに教えてくれた。その間運転手さんも待ってくれている。
ありがとー!と手を振って降りる。
みんな親切だなー。



言われた通りに歩いたけど、バス停やら停留所やらあちこちにあって、いまいちわからない。
線路の近くを掃除している、タトゥーががっつり入ったおばさんに
-Greshamに行きたいけどどこで待ったらいい?
と、尋ねると、これまた親切に教えてくれた。
-路面電車のチケットどうしたらいいの?
「バスのチケットを持ってるなら、そのままそれで乗れるから、ちゃんと持ってなさい」
と教えてくれた。
なるほどー。トライメットは、バスも路面電車も共通チケットなのね。安いし本数も多いから便利。

バスでもGreshamに行けるけど、乗り鉄としては路面電車に乗らない選択肢は無い。



電車が来て乗り込む。
検札機も無ければ車掌さんもいない。

町並みを眺めながら電車は進む。
華やかな街並みが、次第にグレー色の街並みに変わる。空模様もどんよりしてきた。



40分でGreshamに到着。
降りてすぐ、駅の目の前のバスターミナルで、Sandy 行きのバスを待つ。

待ち始めて間もなく、杖(というか、ただの棒切れ)をついて犬を連れたおじいさんに声をかけられる。
服装はアジア系のヒッピー風。犬は、丸々と太ったミニチュアダックスフント。
「Sandyに行くのか?」
-そうなんです、マウントフッドに行くので。
「それじゃこの場所で待ってればバスが来るよ。ずいぶん大きなリュックだね。山登るの?」
-そう、できたらキャンプもしたいんだよね。
他にもいろいろ話してくれたけど、歯がちょっと少ないので、発音がうまく聞き取れない。


すぐにバスが来た。

SAMと書いてある。サンディエリアメトロの略称らしい。
先程のおじいさんは、運転手のおばさんと仲よさそうに話している。
「彼女の運転はとっても良いんだよ。さ、乗った乗った。料金は1ドルだよ。」
安っ!料金ボックスに1ドル札を入れ席に座る。
おじいさんも肥えたダックスとバスに乗った。

30分程で、終点のSandy transit centerに着いた。
mount hood expressのバスは、そのすぐ横で待機していた。
わずかな待ち時間の間、バス停の休憩所に座っていた、別のおじいさんが話しかけてきた。昔、海軍に勤めていた関係で、日本に少しいたことがあるらしい。

私は世界中どこにいても、おじいさんやおばあさんに、よく声をかけられる。どうやらお年寄りに好かれる才能があるようだ。

おじいさんの話の途中で、出発するとアナウンスがあった。手を振って別れる。
思っていたよりも、乗り換えは簡単でスムーズ。

バスが走り出してすぐ、雲の隙間から青空がちらりと見える。が、標高が上がるにつれガスで真っ白になってしまった。

終点のTinberlineに着いた頃には辺り一面真っ白、雨も降っている、、、


ひとまずTinberline lodgeの中で、山の情報を集めてみよう。

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年配の観光客で、ロッジ内は賑わっている。
入り口すぐのところに水飲み場もある。
ここで飲み水を汲ませてもらおう。

レンジャーがいたであろう、地図を広げたテーブルがあるけど、誰もいない。
マウントレーニアみたいにフリーの地図もない。正確にはあるけど、本当に簡易的な、こんな感じ↓

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うーん、登山情報をレンジャーに聞きたいのに。
トイレに行ったり雨対策の準備をして待つ、けど一向に現れない。
多分、常駐していないんだな。

外に出ると、やっぱり真っ白。
雨対策をした登山客が、次々とロッジの外へと歩き出していく。

ここでザックカバーを忘れたことに気づく。
ポートランドで買えたのに。
すっかり浮かれて忘れていた。
中の荷物は、防水のスタッフバックに小分けして入れてるから、まぁ大丈夫かな。
でも、さすがに長時間のハイキングは厳しそう。

お昼の時間が近づいてきた。
だんだんめんどくさくなってきた。

…今日は登らずに近辺散策だな。


山頂の方へ向かう登り道の途中。
久々の60ℓの、荷物MAXの重いザックは体に応えた。
しかもこの一年で10キロ超太っているから、もう足取りが重いのなんのって。
ぜえぜえしてる私の横を、犬連れのおじいさんがさくさく通り過ぎていく。
もう、頑張る気が失せてしまった。


うだうだしていたら、トレイルのサインを見つけた。

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pacific crest trailと書いてある。
これ、有名な超ロングトレイルじゃないか!
ここで出会えると思ってなかった。(地図持ってんだからちゃんと読めよ)

ここを歩いてみよう。
トラバースっぽいからきつい登り下りなさそうだし。

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観光見物丸出しで、PCTの一部を歩いた。
スケールが大きい。
2650マイルのほんのちょっとだけど、とてもわくわくする。
だって、この道ずっと歩いて行くとメキシコやカナダに辿り着くんだよ。



14時頃になって、今晩の宿を探さねばと地図を見る。キャンプ場が、ロッジから少し下るとあるはずだ。

車道を15分ほど下ると車道の脇にキャンプ場を見つけた。
が、
チェーンで封鎖されている。
誰もいない。

慌ててネットで調べる。
なんと、3日前から夏休みが終わったので閉鎖しているらしい。

どーしよ…
もう15時。

ひとまずキャンプ場の中を歩いてみる。
もちろん誰もいない。
水も止められている。
トイレの紙は、まだ残っていた。
ついでに用も足しちゃえ。

水は2リットル持ってるし、ここで一泊できなくはない。
けど、ここは車道のすぐ側で、アメリカって銃持てる国だし、ルールを破ったら怖いお仕置きがあるかもだし…。なんか怖い。

グダグダ迷ってるうちに、グーとお腹が鳴った。
とりあえず昼兼夜ごはんを作ってみて、満腹になってから考えよう。
バーナーを取り出す。
火があったかい。寒くてボッチの寂しい心が救われる。

気温はどんどん下がり、16時過ぎでもう0度近い。

黙ってたらバレないしこのままテント張れそうだけど…氷点下に対応した寝袋ではない。

暗くなる前に決めないと。




悩みに悩んで、ブッキングドットコムを開いた。
山の麓の宿が予約できた。痛い出費。
上のtinberlineロッジから出るバスは、あと2時間待たなくてはいけない。
今いるキャンプ場から歩いてホテルまで下ると、2時間。

すぐに荷物をまとめて麓へと、車道を下り方面へ歩き出す。

途端に雨が降ってきた。
しかもだんだん本降りになってきた。
ザックカバー無いし、半ば駆け足で降りる。
大人しくバス待てばよかった…


雨は一向にやまない。

車道を走る車に、乗っけてってくれー、という期待と、でも怖い人だったらやだな、という不安を同時にぶつける。そんなん車が捕まるわけない。



ずぶ濡れになってきた。
水を含んだザックがずしり。
じわじわと薄暗くなってきた。
まだホテルまで1時間以上あるけど、わたし大丈夫かな?
時々木陰で気休めの雨宿りをしながら、小走りで車道を下っていく。
ええい、どうにでもなれ。


開き直ったとき

一台のキャンピングカーが、20mほど先に止まった。
もしかして?!
でも怖い人だったらどうしよう…

車に近づくと、若いお姉さんがドアを開けて
「come in!」
やったぜ、当たり!!

-車内濡らしちゃうけど大丈夫?
「大丈夫よ、犬がいるけど気にしないでね。」

ありがとー!
車に乗り込み、レインジャケットを脱ぐ。車内が濡れないように裏返してクルクルまとめる。

「こんな雨の中、こんな大きな荷物で、一人で歩いてるから心配したのよ。are you OK?」
-いろいろあって、でも大丈夫だよ。本当に有難う!
どうやらずぶ濡れで一人歩いている私が、相当可哀想な感じに見えていたらしい。


30代前半くらいの若い夫婦と、犬が一匹。
マウントフッドにLAの方から遊びに来たけど、天気が悪くて帰るところだったそうで。

ホテルの名前を伝える。
旅の話をしていたら、あっという間に着いた。
何度も何度もお礼を言って別れる。



奮発して予約したのは
best western Mt hoodというホテル。

朝食付きで、部屋もとてもきれい。
空調もしっかり効いてるし、快適この上ない。
フロントもとても親切だった。私が無知ゆえにつけたイチャモンにも、冷静に丁寧に対応してくれた。

濡れた衣服とザックを部屋中に広げて乾かし、お風呂で冷えた体を温める。
お土産たちは、無事。濡れてない。

明日天気が良ければ、また山に登ってみよう。

すっかり安心してしまって
すぐに眠りについた。

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