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暖炉。

薪を集めに行った
伐採ではなく
購入だが
おじいちゃんの気に入りが
たくさんないので
購入場所をはしごする

安価な物から
高級なものまである
おじいちゃんは
気に入りがあると
値段は高かろうが
安かろうが関係ない

今回は何が気に入ってるか
「肌ざわり」がいいそだ

薪の質感?
ボクにはよくわからない
燃え方も違うとか
マニアックに語られても
さっぱり・・

唯一わかるのは
「桜チップ」これはわかる

しかし
叔母様たちが
近年暖炉を埋めるという

「火事」が怖いし
建物の老朽化ではなく
家のあるじが
ご高齢なので火の世話は危険

叔母様は叔父様と一緒に
去年はテーブル暖炉?を
持参した

小さくて
マンション向き
火を使う物と使わない物もある

しかし
おじいちゃまは
怒り爆発

「そんな年寄りじゃない!」

自身のおじいちゃまの代から
先祖代々大切に世話した
暖炉なので
「埋める」とかとんでもな

おじいちゃまは「火」が好きなのか
庭の枯れ葉を燃すために
庭に窯もどきがある
なんならそこでピザとか焼き芋も焼く
自分で焼いた茶碗などを楽しむ

ちなみに外に見せられるような
ものではない

しかし
いつも楽しそうだ
茶碗や皿は使えそうなものはないが
ピザはおいしくできたものも
何度かあって親族で楽しめた

おばあちゃまがそんなおじいちゃまの
横で庭の紅葉狩り

ユーカリやオリーブの木々の
土を盛ったりしながら

庭の道具入れから
吊るした玉ねぎや
ジャガイモを数個手に取り
「今夜はシチューにしようかね」

にこにこ笑顔
ボクにウィンクしながら
「おいしいのが食べたいなら
お手伝いして頂戴」
小さく小声で通り過ぎる

小麦粉をバターで溶かしながら
ミルクを注ぎ
手伝いをすすめる

勝手口の窓の外を覗くと
おじいちゃまはまだ何かしてる

「ばあちゃん、おじいちゃままだなんかしよる」
「そお。おじいちゃまに珈琲淹れて欲しいわって
お願いしてもらえるかしら?」

ボクは勝手口のふねに身を乗り出し
「じいー珈琲つくってと」
大声で叫んだ

「ぱこちゃん、お洋服が濡れてるわ
ふねに落ちますよ」

「え?」
ばしゃーーーっ

案の定
ふねに落ちる
残飯整理の鯉が驚いて
跳ねる

寒い
ガタガタ震えてると
おばあちゃまはお風呂をすぐ
用意しに
おじいちゃまは自慢の暖炉に
火を

叔母さんは血相変えて
飛んできて
「ほかには?どこか打ってない?
痛い?大丈夫?」
早口にまくしたてる

「ふねの鯉たちがクッションになってくれたから
鯉犠牲になってるかも」
「わかった見ておくから」

「ぱこちゃんお風呂ができたわ
いっしょに入りますよ」

おばあちゃまがニコニコ近づく
お風呂から出ると
みんな勢ぞろい

暖炉は温存することになっていて
おじいちゃまは自慢の珈琲を
みんなに振舞っていた

「ぱこちゃんはミルクたっぷり
はい、どうぞ、めしあがれ」

珈琲のほんのり香
ホットミルク

そうか暖炉
埋めなくてすんだんだ
よかった

今日はもう疲れました
おやすみなさい


追記
「ふね」が何かわからないと
名古屋の友人に云われるので
一応書き記します

ボクらの親族の間の言葉かなのかな
台所、キッチンの勝手口のすぐそばに
井戸などが残ってて
その汲みだし口に石臼みたいなので
大きくて長方形の水がためられる
ばしょがある

それを子供の頃から
「ふね」と呼んでる
野菜などを土を洗い流しを井戸水で
しながらその先が「ふね」
食器もそこで予洗いしたりする
残飯や野菜くずが流れ込む

黒い鯉が数匹中にいるけど
その子達が残飯を食べる

ふねの水は排水で用水に流れる
夏はふねにビンや缶ごと飲み物を
冷やす
すいかなんかも冷える

訊いたところ岐阜県の
郡上あたりに「ふね」と呼ばれる
ものはやはり勝手口あたりに
ある様子だ

ご先祖は岐阜の人かなぁ


読了ありがとうございます 世界の片隅にいるキミに届くよう ボクの想いが次から次へと伝播していくこと願う 昨年のサポートは書籍と寄付に使用しています 心から感謝いたします たくさんのサポートありがとうございました