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牛乳煎餅(東京都大島町)

原材料:牛乳、小麦粉、砂糖、卵、バター
製造:善菓子屋
販売:アンテナショップ 東京愛らんど
https://www.tokyoislands-net.jp/shop

東京から南に約120kmに位置し、高速ジェット船に乗れば最短1時間45分で行ける島、大島。雄大な三原山の自然と温泉、黒い砂でおおわれた砂漠とビーチが楽しめる火山島だ。

私の父はかつて畜産の仕事で大島に頻繁に出張していた。おみやげの定番は牛乳煎餅と椿油だった。牛乳煎餅は原材料が牛乳、小麦粉、砂糖、卵、バターと大変シンプルで、ほんのりとミルクが香るやさしい甘さ。名前には煎餅とあるけれど、どちらかというと固めのクッキーのような味が楽しめる。

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大島には、酪農が重要な産業だった時代もあった。

明治時代、産業の少ない離島では畜産業が注目された。大島の気候と風土がホルスタイン種の飼育に適し、一時はホルスタイン島と呼ばれていたほど盛んになり、最盛期の昭和元年には1,200頭あまりの牛が飼育されていた。

酪農は大島を支える一大産業として成長した。「大島牛乳」や「大島バター」は島の特産品として知られていたが、2007年に消費量の減少、大手メーカーとの価格競争などにより牛乳やバターを製造販売していた会社が経営困難で倒産。

しかし、2008年に地元有志が「こどもたちに大島で搾られた美味しい牛乳を飲ませたい」と集まり「大島牛乳」「大島バター」の復活をめざして立ち上がり、再び店頭に商品が並ぶまでになる。

そんなアツいストーリーを背景に持つ大島牛乳を使用した、牛乳煎餅。御神火のおかげさま、アツい煙を胸に抱き続けながら、いつまでも作り続けてくださることを切に願う。

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「御神火(ごじんか)」とは畏敬を込めた三原山噴火口の呼び名。
善菓子屋の牛乳煎餅には大島民謡「大島節」の出だしの一節が焼かれている。

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「私しゃ大島 御神火育ち 胸に煙は 絶えやせぬ」

大島里喜の歌声がNHKラジオで放送されたのをきっかけに、それまで島外であまり知られていなかった「大島節」は日本全国に広がり、大島の観光資源化に貢献した。

現在、来島者は減少し停滞傾向にある。時代の変化の影響を受けやすい観光産業だけれど、島好き旅好きとしては大島の観光業の行く末が気がかりで応援したくなる。個人的には大島の観光といえば、なんといっても三原山が織りなす生きた大地だ。噴火して黒く固まった溶岩の流れや、大きな火口、黒い砂漠など、始祖鳥が飛んできそうなジュラシック・パーク感を楽しめる景色は、都会の日常などぶっ飛んでしまうほどの迫力がある。まるで地球の表皮がめくれて中が見えてしまったかのような、自ずと「御神火」と呼びたくなってしまうパワーを感じずにはいられない。

そんな妄想旅をしつつ、御神火とホルスタイン牛をイメージして牛乳煎餅をかじり、コーヒーを入れて、午後のひとときを美味しく過ごした。


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