2022映画私的ベスト10

※基本的に致命的なネタバレはしていませんが、一部内容に触れるため、作品の情報を一切いれたくないという人は読まないでください。

▼みた全ての映画の感想は
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第10位「ポゼッサー」


他人の意識を乗っ取り暗殺を行う女が、徐々におかしくなっていく映画

主人公は「他人の意識に遠隔で入り、暗殺後本人が自殺することでリモートから外れる」という完全犯罪を委託する会社で働く・・・という、ゴリゴリのSF的世界観のもと、容赦ないグロ描写、気味の悪い映像、意識を乗っ取る乗っ取られるという不安さ・・・などなど、脳にこびりつく演出や映像が印象的。それでいて、その映像に不快さはなくある種の美しさも感じてしまう、不思議なサスペンススリラー。


第9位「ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス」

アベンジャーズの一人であるドクターストレンジが、「マルチバース」という別の世界の脅威と戦う映画

過去のMCUや「ワンダビジョン」を見ている方がより良いと思うが、見なくても必要な説明はされるのでOK。「もし、自分がこうなっていた世界があったら・・・」という全人類の共感を得ながら、そこから生まれてしまう脅威にストレンジがいつものユニークな戦い方で立ち向かう。ヒーローものとして全く飽きずに見れる作りになっているうえ、「音符で戦う」をはじめとした、謎の戦闘を観られる、奇抜で独創的なアクションシーンに目を奪われる。

第8位「NOPE/ノープ」

謎の飛行物体を目撃したものたちが、その姿をカメラに収めバズるため、飛行物体と死闘を繰り広げる映画

「ゲットアウト」「アス」に続き、今最も世界で最新作が注目を集める監督の一人ジョーダン・ピール。謎のギャグ(ギャグなのか?)シーン、不条理なシーン、ホラー描写などで盛り上げに盛り上げ、「飛行物体を絶対にカメラに収めるチームアクション」へと変わる後半戦。冷静に考えると「この人たちはなんでこんなくだらないことに全力になっているんだろう」となるんだが、冷静どころか胸熱くなる謎映画。ラストの攻防戦は日本のアニメへのオマージュなどもあり、必見。

第7位「ナイブズ・アウト:グラス・オニオン」

とある島で旧友たちがパーティを行なっていたところ、殺人事件が発生し、主人公の探偵は犯人を探すが、徐々に思いもよらなかった事件の全貌が明らかになる映画。

「ルーパー」「最後のジェダイ」等アクション映画を撮れるライアンジョンソン監督が、個人的趣味である「ミステリー」を題材に撮ったシリーズ1作目の続編。「ボンドのダニエルクレイグが、豪華俳優の容疑者たちと推理バトル」という構造は前回と変わらないものの、前作が王道ミステリーだったのに対して、今回は多少ツイストのあるミステリー。「ギャグなのか、マジなのか」判断しかねる独特の感覚の編集のテンポ感に誘われつい観てしまうが、全てのシーンに意味があり、一瞬も見逃せない。「映画はこうでなくちゃ」と思わせるクライマックスと、今回もキレキレノリノリのエドワード・ノートン劇場が見どころ。意外なカメオ出演と、業界いじりネタはスパイスとして笑える人だけ笑ってください。

第6位「シャドウ・イン・クラウド」

時は第二次大戦中、とある秘密を抱えた女性軍人が飛行船内で恐ろしい怪物と対峙することになる映画

クロエ・グレース・モレッツが何やら訳ありの女性軍人を演じ、ほぼ飛行船内の密室での会話劇の前半と、「恐ろしい怪物」との攻防戦の後半戦という展開。非常に短い上映時間ながら、「映画だからこそできること、展開」が盛り込まれており、謎のカタルシスを得られる。破茶滅茶な展開なのに「物事に不可能も、限界もない」と心から思わせてくれる不思議な映画。

第5位「トップガン マーヴェリック」

伝説のパイロットが、次世代のパイロットたちを導きながら、不可能と思われるミッションに挑む映画

日本中が熱狂したスカイアクション映画。あまりの映像的快感に何度もリピートする観客がいたという現象も納得できるほどの、没入感と臨場感に驚く。前作の鑑賞が必須ではあるが、時代や世代を超えた共闘に1作目の世代だけでなく、2作目からの世代も胸熱くなる。よくよく考えると意味のわからない敵の要塞基地や、クライマックスの展開などなんのその。「考えるな、感じろ」を体現し、「カッコイイってこういうことだったよね」とトリッキーな映像ばかりになってしまった現在の映像の雰囲気にノスタルジックな風穴をあけた。90年代や、ゼロ年代には絶対に撮れなかったであろう撮影技法で、スカイアクションの臨場感を最大限まで高め、過去のスカイアクション映画の頂点に位置する戦闘シーンは必見。

第4位「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」

人類の攻撃を退け、平和に暮らしていたナヴィ族の家族たちだったが、新たな攻撃を前にして、家族・同種族・海の生命体たちとともに、もう一度人類との攻防戦を繰り広げる映画

前作が森が舞台だったのに対して、今回は海。海好きなキャメロンの趣味全開の海描写は凄まじく(海洋生物も全てオリジナル)、まるで惑星パンドラに自分がいるかのような臨場感。いわゆる戦争映画だった1作から、主人公に子供、敵にも子供ということで、次世代のティーンエイジャーたちが己の出自と向き合いながらアイデンティを探すという映画にジャンルが変貌しており、浮かび上がる物語の深さと切なさは1作目と比べても段違い。
1作目でそこまでなかった、SF的な近未来ガジェットが今回はワクワクするものばかりで、「これぞSF映画」という気分にもなれる。そういう意味で、船の転覆シーンなど、今まの「キャメロン映画」の集大成でもある。
主人公たちよりも、とある事情で複雑なアイデンティティとなってしまった「敵役」の生き方と、子供たちの生き方の矛盾さに歯がゆくも共感を覚えてしまう構造が粋。

第3位「さかなのこ」

「とにかく魚が好き」という子が、多くの人を振り回しながら、それでも誰かを救い前に進んでいく映画

「何気ない会話なのに、なんか笑ってしまうし、見てしまう」という沖田修一の魅力が炸裂しながら、「何かがたまらく好き」という事が人生、そして世界にどういう影響を与えていくのかを、その甘さも苦さもどちらも描く。「さかなクン」の自伝がベースであるが、自伝であるかどうかの部分は極限まで薄められており、「キャラもの」として普遍性がある形に。「横道世之助」で魅せたようなとにかく出てくるキャラクターが愛おしいという見せ方は維持しながら、「好きなこと」という万人が共感するテーマで一本筋が通る展開は今までの沖田作品はなかった傾向にも感じた。
誰かの想いで世界が少しずつ変わっていく、むしろ、変えたければ飛び込み進み続けるしかない と優しくも厳しく人生の指針を与えてくれる映画。

第2位「私ときどきレッサーパンダ」

突然レッサーパンダに変身してしまう女の子が、自分の特性と向き合いながら、自分の友人、そして親と対立しながら自分の青春を謳歌しようと奮闘する映画

「レッサーパンダに変身する」という突然の難題に対して、本人はもちろんのこと、友人たちが、そして両親がどのように反応するのか?という最初の部分が見どころの一つ。本人が隠したいと思うようなことに対して、周りの人間がどう思うのか、というテーマは、特に思春期の最中・越えてきた大人たちの共感を得るはず。
話の展開はそこから、主人公の趣味である「男性アイドルグループ」の楽曲とライブを巡る物語となり、さらには両親だけでなく、一族を巻き込む「一大ファミリームービー」へと変貌していく。
誰しもが持っている「自分の変えたいけど、どうしようもないもの」と向き合うのが、どう捉えればいいのか、というティーンエイジャーが抱える悩みが、実は老若男女の悩みに影響を与えている(受けている)というのが浮かび上がる構造は美しかった。
主人公の趣味である「アイドル楽曲」がただのスパイスではなく本編にちゃんと関わるところもうまい。
なお、サントラは売れっ子ルドウィグ・ゴランソン。TENETのゴリゴリのサントラから一転、ポップながらスリリングな活劇的な楽曲を楽しめる。

第1位「カモン カモン」

妹の子供を預かることになったラジオディレクターの男は、少し変わったその少年と交流する中で、自分や妹の人生を見つめ直す映画

親の介護の関係で疎遠になってしまった妹と、その息子を預かることで、再度のその関係を見つめ直し、ひいては世界の見方も見つめ直すという、展開は一見都合の良すぎるようにも感じる。しかし、主人公の職業柄挿入される「一般の少年少女たちの言葉」とともに描かれることで、どうしようもない日常を、みんな必死に生きていること、そして、それをゆっくりと進めていくしかないという事実に気づかれ、日々の尊さに想いを馳せられる。
少し変わった少年である妹の息子とともに、街をめぐり、「なぜ音を撮るの」という質問に対し、「ありふれたものを永遠にするのはクールだろ」と語る主人公の言葉は、映画、ひいては、我々の人生すべてにいえることでもあるが、そんなありふれた日常を進める事は全く容易ではなく、ギリギリのラインでみんなやってる、でも、進むしかないという点もこの映画はちゃんと押さえている。
主人公が活躍する活劇ではなく、ある種主人公も観測者として、映画の中にいるが、それも含めて観客は見る、という点で全編モノクロによる映像が効果的に感じた。
何より、劇中のサントラが凄まじく良く、映画が始まった瞬間「これは最高な映画な気がする」という想いにさせてしまう(そして、それはラストまで続く)ある種の音楽映画でもある(それでいて、日常の音を集めてるという対比も美しい)


映像エンタメで言えば、サブスク映像配信サービスのドラマシリーズにだいぶ世間の関心は持ってかれてしまっている気がする。そんな中、「2時間に映像・物語・音楽・芝居の全てを詰め込む総合芸術」たる映画がどうあるべきか、作り手も視聴者もその定義について無意識的でも考え始めている気がする分岐点的な1年だったのかもしれない。


2022年にみた 2022公開作品(劇場・レンタル・配信含む)
34作品

キングスマン ファーストエージェント
スパイダーマン ノーウェイホーム
フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊
さがす
ちょっと思い出しただけ
私ときどきレッサーパンダ
シンウルトラマン
トップガン マーベリック
ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス
呪詛
ザ・バットマン
グレイマン
シング2 ネクストステージ
アンビュランス
ワンピース フィルムレッド
コーダ 
ソニック・ザ・ムービー ソニックvsナックルズ
デイシフト
神は見返りを求める
ノープ
シャドウ・イン・クラウド
ピノキオ
13人の命
ライダース・オブ・ジャスティス
ハケンアニメ
ポゼッサー
哭悲
ビリーバーズ
カモン カモン
余命10年
ボイリング・ポイント
ベイビーブローカー
アバター ウェイ・オブ・ウォーター
ナイブズ・アウト:グラス・オニオン

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