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Té de revelación「赤ちゃんの性別発表パーティー」👶

 コスタリカでもまだ珍しいTé de revelación「赤ちゃんの性別発表パーティー」に参加してきたのでその記録です。コスタリカでは出産の一月前あたりに開かれるベイビーシャワー(こちらもアメリカから入った文化)はよく見かけますが、こちらはなんと「妊婦が胎児の性別をその日に知る」というドキドキパーティー。安定期に入る前で妊婦さんずっとしんどそうなので誰が楽しむためなのかイマイチわからないままスタートです。

招待
 私が参加したのは、私が部屋を借りている家の大家さんの娘さんのパーティーです。この部屋に引っ越してきたのが2023年の1月なのでまだ4か月ほどの付き合いです。 
5月上旬、突然メッセージアプリに大家さんの息子さんの奥さんらしき人から招待状が届きます。「らしき人」と書いたのはかの人と面識はあったけれど電話番号の交換をしていなかったのでアイコンに見覚えがなかったのと、名前も省略されていたので招待状の中身を見て、義理のお姉さんがパーティーの主催者であることを理解したからです。
パーティーの開催日は約1週間後。参加希望の場合はその旨を連絡することと、会費2000コロネス(当時レートで約500円)が必要なことなどが書かれているが具体的にパーティーで何をするのかは明記されてはいません。
ピンクと水色の赤ちゃんゾウのイラストが描かれ「私はどっちでしょう?」と投げかけている。この時点で私は妊婦本人が当日「じゃじゃーん、赤ちゃんは…女の子です!!」とか発表するのかな、と想像していました。
ところがパーティーの前日に大家さんとおしゃべりしていたところ、なんとパーティーの日にちが変わったことを偶然知りました。娘さんが性別検査に行けず、延期になったのです。この時、検査を受けたら結果は義理のお姉さんに通知が行くように指定しているとのこと。これで妊婦本人も知らずにパーティーに参加するというわけです。
さらに会費は皆SINPE(シンペ)という送金システムを使って払うことも知ります。私はそのシステムの登録をしていないので現金で大家さんに払いました。

パーティー開始
 さて、今度こそパーティーの日。午後4時開始と書かれていたのでピッタリに着くように家を出ました。会場には大家さんの息子さんや親せきが集まっていました。その後もパラパラと人が集まります。ほとんどが女性です。しかし主役が来ません。準備のために早く来ていた大家さんも「娘は?まだなの??きっと寝てるのね」と言っている具合です。5時、やっと主役のおでましです。あまり体調がよくはなさそうで見ているこちらが心配になります。

乾杯と軽食
 ここで参加者全員にシャンパンが配られます、プラスチックのシャンパンカップには各々水色かピンクのリボンつき。ここで乾杯の音頭を取ったのは大家さんの次男のパートナー。元々頼まれていたのか、その場でなんとなく決まったのかはわかりません。生まれてくる子供が人生を謳歌できますように、神のご加護がありますように、そのような言葉がいくつか続き、参加者が皆「アーメン」と答えます。ここでクリスチャンではない私はアーメンを言うということを知らず、結局タイミングを掴めないまま過ぎていきました。乾杯の後は軽食のプレートが配られます。


妊婦さんに「一口くらい平気よ」と勧めてる人もいてびっくり


ブディン、アロジャード、クラッカー、エンパナーダ、ガジョも盛り合わせ。これらを片手で食べるのは至難の業

ドキドキ性別発表
ひとしきり軽食を楽しんだ後、本パーティーのメインイベント、性別発表の時間です。主催者がくす玉(飾られた四角い箱に紐が付いている)を持ってきて天井から吊るし、妊婦さんが紐を引くと…中からはピンクの紙吹雪とカードが落ちてきます。カードには「子供は女の子」の文字が。そして妊婦さんと旦那さんがカードを持って写真撮影によるスピーチ。出席者への感謝、望んでいた子供を授かれることの感謝が述べられます。折よくBGMは冬のソナタのテーマ曲が流れていたので出席者の涙を誘います。この臨場感、場の空気、得も言われぬ圧…感激するシーンなのでしょうけれど、妊婦さんとの付き合いが浅く、よく知っているわけでもない私はそこまで心動かされず…ひたすら(良かったねぇ良かったねぇ)とニコニコして乗り切りました。

キラキラのリボン吹雪が落ちてくる
女の子ならピンク、男の子なら水色と徹底して飾り分けられている

〆のタマルとレゼント紹介
 切り替えが早いのもラテンアメリカのいいところの一つです。うるうるタイムが過ぎたらラテンアメリカ版ちまきこと「タマル」が配られます。トウモロコシ粉を練り、野菜やお肉と一緒にバナナの皮で包んで蒸したものです。以前はクリスマスの時期のものでしたが今は年柄年中食べられるようになったそうな。コーヒータイムのお茶請けとしてもよく出てきます。お茶請けというにはボリュームがある気がしますが。
ちなみに出席者がタマルを味わっている間、妊婦さんのお兄さんと旦那さんは床に落ちた紙吹雪をせっせと掃除していました。紙吹雪といってもキラキラのビニール製なので踏んで滑って転んだら危ないからとか。マメです。

多くの場合、万能ソースの「サルサリサーノ」をかけて食べます

 どうやらタマルは「〆の軽食」の役割を果たしていたらしく、各々タマルを食べ終えると急に緩んだ雰囲気になりました。ピンクと水色のぞうさんイラストで飾られたお菓子を持って帰る人あり、その場で食べ始める人あり。この時点で午後7時。この緩い雰囲気の中、今度は「プレゼント紹介タイム」が始まります。中には子供が男の子だったら青基調の飛行機などの飾りをあしらった包装、女の子だったらピンクを基調とした花や妖精をあしらった包装と両方用意している出席者までいました。プレゼント紹介の際「さっきここでこっそり包みなおしたのよ!」と種明かししていました。中身はおしりふきやベビーオイル、赤ちゃん用の洋服、靴下などが多かったです。
これでパーティーのイベントは全て終了。お開き感が漂い、迎えが来た人からパラパラと帰る人が出てきます。

とてもかわいいラッピング。お持ち帰りは難しいのでその場で食べるしかない。
義理のお姉さんが夜中1時までかけて用意したらしい。

お片付け
 7時半。突然妊婦の親戚の一人が飾りつけの風船を割り始めます。それはもう自身の役目とばかりに手に持った棒でパンパン割っていくのです。まだ出席者の半数近くはおしゃべりしてその場にいるのですが、メインイベントが終わったので片付け初めて良しということなのでしょう。そのような打ち合わせがあったのか(たぶんない)、サインでもあったのか(恐らくない)、私にはわかりませんでしたが、風船割りを合図に段々と片付けムードに変わっていったのです。簡易テーブルを畳んだり、キラキラリボンカーテンを外したり、ゴミを集めたり。
 私は自分にできる片付けを手伝い、あらかた終わったところで帰りたかったのですがコスタリカの夜8時は真っ暗。いくら会場から家まで歩いて10分弱とはいえ、夜道を一人で行くのは危ないからみんなで帰ろうということでなんだかんだ家に帰りついたのは9時過ぎ。午後4時からほぼ座って食べ通し、しゃべり通しの5時間でした。

感想
 集まっておしゃべりをするのが大きな娯楽であり、それは「ちょっとコーヒー飲みにおいでよ」ということもあれば、名目のあるパーティーならさらにおしゃれする楽しみも増えるのがラテンアメリカ。出席者のほとんどが妊婦さんの友たちと親戚の女性です。妊婦さんの伯父の奥さんと娘さんも参加していて、当の伯父さんは家でサッカー中継を見ていたそうです。この国での女性同士の繋がりは強固です。
 私は唯一の外国人だったので皆さんにたくさん話しかけてもらえ、おかげで楽しいひと時を過ごすことができました。私は現在独り身ですし将来的に子供を持つつもりはないのですが、「いつか君に子供ができたら性別発表パーティーは僕らが開催するよ!」と言ってくれた際「ありがとう。でも私は自分自身の子供を持つつもりはないんだ」と返しました。何て返すのが正解だったのかはわかりません。「ありがとう」だけだったら恋人の有無やどんな人が好みなのか根ほり葉ほり聞かれそうです。相手が返す言葉を一生懸命探している風だったので「出産怖いからね!だからここにいる全ての母親を尊敬しているよ」と付け足したのですが、「健康であるのに子供を欲しがらない」という考えは小数です。コスタリカでは子供の養育が両親に義務付けられているのでたとえ離婚しようが、未婚で出産しようが母親は経済的に困りません。未婚の母はそこら中にいます。以前は世間体もあったらしいですが、現在は寛容になってみたいです。そして家族の繋がりが大事なこの国で子供を欲しがらないという考えは珍しいのでしょう。
「コスタリカも少子高齢化」という記事に書きましたが、コスタリカも少子化は進んでいます。一人っ子、多くても二人兄弟が一般的になりつつありますが、それでもこの養育義務のおかげか、家族親戚のサポートを頼りにできるおかげか、「一人の女性が生涯産む人数」は減っても「子供を産む女性の人数」が減っている印象はありません(正確な数字は調べていませんが)。
 今回の主役の妊婦さんは、この後ベイビーシャワーも開催予定らしいです。生まれる前にお祝いのプレゼントを渡したり名前もしっかりつけて、その性別に合わせたイメージカラーで洋服を揃えたり、日本とはだいぶ異なるお迎え体制を身近に見られる貴重な機会、無事に生まれてくるまでそっと見守らせてもらおうと思います。

お菓子は各自1つずつ取っていくスタイル
大量の風船で飾りつけられたドリンクバー。

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