「バカ」という言葉を聞くたびに、母を思い出してしまう
最近になってこそ、離れて暮らす母から優しい言葉をかけられるようになった。
「いつでも帰ってきていいんやで」
「無理はしたらあかんで」
「いつでも頼りや」
はがゆくて、スルーしたい気持ちを抑えつつしっかり受け止めるようにしてる。
「うん、困ったらすぐ頼らせてもらうな」
「なんかあったすぐ連絡するから、覚悟しててや〜」
昔も優しい言葉をかけられていないわけではなかったけど、種類が違ったように思う。
「成人したらさっさと家でて自立しいや」
「あんたは、橋の下に落ちてた子やねんで」
「バカやな〜」
「アホやな〜」
「あんたはほんまにやっかいな子やわ〜」
なんでだろう。
そんな言葉が、結構好きだった。
「バカ」という言葉で愛を伝えるシャイな母
これは、関西特有もしくは私の母特有かもしれないので、ちょっと説明を。
「バカやな〜」
という言葉は、
「あんたはバカやけど、ほんまにかわいいな〜」
という意味を含んでたんじゃないかと思っている。
小学校の授業参観日のこと。
母親は仕事の都合で遅刻して来ると知っていたので、私は何度も後ろをチラチラ。
随分立ってから走ってきた母親を見つけて、私は後ろ振り返って大きく手をふってしまった。
母親は顔を真っ赤にして照れ笑いしながら
「バ!!カ!!前、むきなさい!!」
って口パクで言いながら扉の影に半分隠れてた。
そのときの光景は今でも鮮明におぼえている。
周りがどう思ってたとしても、その時の照れた母はかわいくて、その空間はとっても暖かくて、なぜか誇らしさすら感じてしまう素敵な思い出になっている。
無計画な私が海外に行くと言い出したときのこと。
大学卒業後、就職もせずに
「6月からフィリピン行ってくるわ〜」
と言った私。今、思えば自分が親だったら許せるのかわからない無計画な発言である。
そんな私に、母はセロハンテープでぐるぐるにまかれたお金が入った封筒を
「死にそうなったら使うんやで。」
と言って渡してきた。
そこには、漏れなく「バカ」と書かれていた。
この拙い説明では、共感できない人もたくさんいるかもしれない。
ただ、言葉そのものよりも、そこに込められた気持ちを子供はちゃんと理解しているんじゃないかと思う。
逆も同じで、どれだけ優しい言葉をかけても気持ちがこもってなかったら子供はわかる気がする。
私が母になったときには、おなじように「バカ」とか言いながら、愛を伝えていくのかもしれない。
母の愛がある「バカ」をまだまだ聞いていたい。
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