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PrejectRCL ZET REQUIEM:NOVELIZED 01-紅を継ぐ者 小説本文パート

割引あり


PROJECT RCL ZET REQUIEM:NOVELIZED
第1章:紅を継ぐ者

●文:Hi-GO!
●執筆補佐:めたるすゾンリー/らいおね
●挿絵:Hi-GO!補欠ててんトナミカンジ

▼冊子版の通販▼
冊子版限定で『キャラクターデザイン資料』や『用語解説』
『ゲストイラスト』等のコンテンツが付属します。

※本作の制作経緯については別途記事をご用意いたしましたので、気になる方はご一読お願いいたします。



キャラクター紹介

▼シエル

illust:トナミカンジ

▼ブロッサム・シエル

illust:トナミカンジ

▼アルエット

illust:ててん

▼パッシィ

illust:ててん

▼ウェクト

illust:Hi-GO!

▼ロゼ

illust:補欠

▼グレイシア

illust:ててん

!ご注意!

こちらは
【PROJECT RCL ZET REQUIEM:NOVELIZED 01-紅を継ぐ者】
小説本文パートのみの記事になります。

挿絵はグレースケールから挿冊子版共にフルカラーとなりました。(2023/12)

『キャラクターデザイン資料』や『用語解説』『ゲストイラスト』等は冊子版のみのコンテンツとなりますのでご了承お願いいたします。

※note限定のコンテンツとして『あとがきコーナー』が付属します。

※EXからカットしたシーンの追加に加え、加筆修正と挿絵の追加を行っております。(EXの同パート部分に対し、約2倍での追加となります。+新規挿絵:6枚)


※誤字、誤表記、ご編集やご感想などお気づきの点が御座いましたら是非下記お問い合わせフォームよりご連絡をお願いいたします。


第1章に関しては『これまでのあらすじ』の一読を推奨いたします。


▼第2章はこちら


【データの閲覧に関する諸注意】

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FILE:Ⅰ

illust:ててん

「ガーディアンのシエル……いくら紅き英雄の意思を継ぐ、といっても所詮その程度なのね……」

金髪のポニーテールの少女に対し、刃を向けながら二つに結った黒髪の少女は呟いた。火の粉が舞い散る中、彼女が纏う純白の衣には煤一つ付いていない。片や金髪の少女は地面に膝をつき、傷を負った姿で、それは両者の力量差を明示しているかのようであった。

「そんなッ……! 全く敵わなかった……」

今、このエリア・ゼロと呼ばれる一帯は業火に包まれ、所属不明の武装集団によって取り囲まれていた。

住民の避難を優先すべく、陽動を一手に引き受けた少女のシエルは対峙した敵の強さに驚いていた。強い、というよりも次元が違う。背負っている覚悟、というべきなのだろうか?

対峙といってもほぼ刃を交えることなく、猛攻に対処する内に気付けば地面に膝を付いていた、というのが現時点での彼女の認識だ。

「あなた達は一体……?!」

白い少女は二つに結った黒髪の片方をかきあげると、刃を突き立てながら溜め息をついた。

「少なくとも今のあなた達にはこの世界は預けられないわ……」

他にも確認出来るだけで数名の侵入者が認められたが、もし一人一人が彼女ほどの力を有していた場合、今の彼女ではとてもではないが太刀打ちする術がない。

そして、現状の被害規模を見るにその確率は非常に高い。

「この世界……? どういうこと……?! 」

そもそも戦乱が落ち着いた世でこのような武装集団が存在していること自体が驚異だった。かつて戦ったネオ・アルカディアの戦士達も総じて屈強だったが、敵はそれに対抗できるだけの力を秘めている。

白い少女が再び口を開く。それは、彼女にとって思いもよらない言葉だった。

「我々は……『ゼロ・リバース』。あの紅き英雄の信奉者である……! 今からこのエリアを我が軍の統治下とさせて頂く……」

一体なぜこんなことになったのか……? 彼女は記憶を振り返る。

◆SCENE2

エリア・ゼロの開拓に合わせ、私設自警団『ガーディアン』が設立されたことに伴い、レジスタンスは解体され、かつてのメンバーは旧レジスタンスベースの維持と管理を委託されていた。

そうしてエリア・ゼロの一角に停まっている飛空挺『ガーディアンベース』内部の研究室で、今日も科学者のシエルは新技術の研究に打ち込んでいた。

ガーディアンベースというのは、自警団の活動のために用意された巨大な空飛ぶ船のことだ。船内部には司令室兼ブリッジに始まり、各メンバーの私室に治療室や貨物室、そしてこのシエルの私設研究室に至るまで、あらゆる設備が揃っている。すべて船単独でのミッション遂行をサポートするためのものだ。

また、ベースで各地を飛び回る最中に偶然発見された『サクラ』という植物の街道への植栽と通常よりも早い栽培にも成功した。そして今、開花真っ盛りの頃合いで暖かい陽気であった。

エリア・ゼロ自体の復興度合いだが、当初は風車をはじめとする木造の建築物が景観の大半を占めていたのに対し、ここ数年の発展を経て、人工素材を取り入れた施設の建造にも着手し始めている。今では民家レベルでも本格的な設備や機材が利用可能なまでに復旧が進んでいた。

戦乱の後の荒れ果てた世の情勢を危惧したシエルは、かつての災厄で猛威を振るったマザーエルフの座標を定期的に確認し、彼女の力が悪用されぬよう、安全確認も兼ねて保護観察をしていたが、その反応が最近消失してしまった。

更に、旧レジスタンスベースとの連絡が途絶えたとの連絡が入ったのは、チームで調査を開始しようとした矢先のことだった……。

◆SCENE3

illust:Hi-GO!

「ウェクト博士、モデルBのアップデートプランを確認してもらえる? 連絡がつかないみんなを探すためにも一刻も早く仕上げてしまいたいの」

白衣に身を包んだシエルの言葉を聞いて立ち上がったのは最近研究に加わった『ウェクト』という、同じく白衣を纏った長い白髪の初老の風貌をしたレプリロイドだ。頭部には分厚く黒いバイザーをしており、その表情を窺うのは難しい。

「なるほど、このプランなら今までの出力を更に越えつつもエネルギー消費を抑えることができますな。さすがシエル嬢……!」

どうやら彼は稼働時間も相当なもので、なにやらネオ・アルカディアの創設時の出来事も直接見聞きしているという。謎の多い人物だ。

「しかしそうですな。このプランのままですと、全体のエネルギーの持続時間の問題が懸念されますな。何か対策は?」

「痛い所を突かれてしまったわ……私もその点は改善案をまだ練りきれていないの。今のここの設備の限界もあるけれど……」

「心配ご無用、改善案ならもちろんワシの方でご用意させて頂いておりますとも。どれ、ちょっと失礼……」

今二人がやりとりしているのは、『リバースメタル』という装置についての議論だ。既に実用化の段階にも入り、実戦投入もされたものの、改善点は未だ多く、その最適化プランを巡っての話し合いが日夜行われていた。

このリバースメタルはかつての英雄達の力を擬似的に再現し、各地で勃発する紛争への抑止力として投入するための装備として研究が開始された。しかし、現存しない英雄達はデータ不足が著しく、進捗も思わしくなかった。

そこにある日ウェクトがシエルを訪ねてきたことで状況は一変した。なんとあの紅き英雄のオリジナルボディの遺物の発掘調査に成功したという。かつて『オメガ』と呼ばれた英雄の遺物は『聖遺物』と名付けられ、研究成果は飛躍的に向上。リバースメタルの試作機は実用段階に達し、今に至る。

「ウェクト博士、おかげでそろそろ実証実験を開始できるわ」

「承知した。ではリバースメタルを……」

そう言ってウェクトはまるで『サクラ』のような色と形をしたリバースメタルをシエルに差し出す。これからリバース・システムの検証、すなわち戦闘に特化した形態への『変身』を行うことになる。

「ありがとう」

illust:Hi-GO!

シエルはリバースメタルを受け取った右手を前に突き出し、左手を添えて構えた。

〈適合者確認……〉
〈リバース・システム起動開始……〉
〈トランスフィールド展開……〉
〈システム・スタンバイ〉

リバースメタルから次々と女性の声でシステム音声が放たれる。

「よし……! いきます! リバースッ……オンッ!!」

シエルが叫ぶと、リバースメタルを中心に彼女の周囲が眩しく光り、エネルギーの力場が形成され、ほとばしる粒子がラインを描いて宙を舞う。程なくして彼女の体は紅い花びらを思わせるドレスのようなアーマーに包まれていた。それはさながら、あの紅き英雄を彷彿とさせる。

彼女の変身した姿からこのリバースメタルはモデルB《ブロッサム》と名付けられている。実際、花弁を頭髪にした女性のような形状をしているからだ。

「よし、メタルとボディの同調率は問題なし。出力は最大の7割程度ですかの。ところで、お体の方はいかがですかな……?」

実は見た目こそ人間とほぼ区別がつかないが、シエルは今、機械の体で過ごしている。まず、エネルギー機関『システマ・シエル』の発展系の『システマ・ブロッサム』という大規模エネルギー発生装置の開発にあたり、『マザーエルフ』のような特別なサイバーエルフを組み込む必要があった。そして、その代替案を模索していたところ、生きた人間の肉体をコアとして利用できることが判明した。

「ありがとう、大丈夫よ」

この事実に対し、彼女はレプリロイドの肉体に人格を移し、『ヒューマノイド』化することで、自らの肉体を差し出し解決を図ろうとした。将来的に人とレプリロイドの格差を埋めようという願いもあり、かつて人間であったドクターバイルを機械化したものと同じ技術を用いて人の魂を機械に移しているような状態である。

「むしろ睡眠や食事もいらなくなったし、お陰で無理や無茶が前より効くの。今はこの体になってよかったと思えるわ」

加えて、彼女はかつて『蒼き英雄』の複製体を手掛けたこともあり、そのノウハウはヒューマノイドボディの製作に大いに恩恵をもたらした。モデルBの各部にもその意匠の影響が散見される。

「なにより今すぐにでもみんなを探しにいきたいしね」

こうして、人間としての彼女の体はガーディアンベースに搭載されたシステマ・ブロッサムのプロトタイプにエネルギーコアとして搭載されている。この技術は人とレプリロイドがいつか本当に平等かつ対等に並ぶための礎でもあり、同時に人間を次の段階へと導く進化の鍵でもあるため、生体と機械のボディの双方からできるだけデータを取りながら移植の精度を上げたいというのも実情だ。

「それに、『本体』の方とのリンクは問題ないわ。とても安定してるの……」

そして『ブロッサムの実情は表立って発表できるシステムではない』と判断したシエルによって、128桁の暗証コードを備え、その理論は封印されている。ちなみにガーディアンベースに搭載されているシステマ・ブロッサムはヒューマノイド化したシエルとリンクしており、万が一破壊及び停止した場合、機械の体も機能停止してしまうため、あえてベース内に設置されている。

「ふむ……ワシが気にしておるのは『変身』の負担も含めてのことなんじゃがな……」

シエルは機械の体だからこそ可能なリバースメタルによる戦闘用の形態変化『変身《リバース・オン》』現象の披検体としても、自らの体を差し出しており、同時に私設自警団のガーディアンの司令かつ、切り込み隊長としても日々活躍している。

「お主は慣れない体で、しかも更にあの『紅き英雄』のデータを反映させたリバースメタルによる変身までやってのけておる……今までは騙し騙しじゃっただろうが、流石にそろそろ体を休ませんと、気が気でなくてじゃな……」

illust:Hi-GO!

〈そうよ、シエル! 目を離すとすぐ無理ばっかりするんだから!〉

突如リバースメタルの内部から声が上がった。

「パッシィ……!」

「ほれ、彼女もこう言っとるぞ?」

パッシィというのは、リバースメタルの中に格納されたサイバーエルフで、かつて紅き英雄を復活させるため、その身を犠牲にして消滅したが、なんとウェクトが遺物と同時に持ち込んだものだ。本人曰く旅の中でたまたま見つけたとのことではあるが現在はリバースメタルのサポートAIのような役割を果たしている。

実際、先ほどの変身時のシステム音声も彼女の声で再生されている。

「言われてみればここ最近関節部の動きや、脚部の動きのバランスにズレは感じるわね……あなたの言うとおりメンテナンスが必要かもしれないわ」

〈ほら! 言った通りじゃない!〉

本来サイバーエルフは、その能力を発揮すると消滅してしまう有限的な電子生命体であった。しかし現在では技術の刷新によって継続的に能力を発揮できるようにもなり、また一方で、レプリロイドにとっての『魂』のような側面が存在することも研究の過程で明らかになっている。

「ワシもこれでも永い間レプリロイドをやっておるからのう、今のお主よりその体のことは解ってしまうんじゃよ。どれ、今日はワシが面倒見るとするかの」

「ありがとう……申し訳ないけどお願いするわ」

〈うんうん、ウェクトの言うとおりね。機械の先輩の言うことは聞いておくものよ〉

シエルもまた、人の身でありながら『魂』の部分をエルフ化して今のレプリロイドとしてのボディに移植しているというのが実態である。とはいえ、体と精神の同調はたやすいものではなく、そういった面でも消耗は免れないのが現状だ。

「リバースメタルの調整ならワシにまかしておけばよい。たまには何も考えず、ゆっくり眠るのも大切なんじゃぞ」

「わかってはいるけど、中々難しいものね……」

〈まだマザーエルフの反応が消えたことが気になってるの?〉

「ええ……レジスタンスベースからの定時連絡が途絶えたのもそれからなのよ……」

「マザーエルフの調査に今まさに出掛けようというタイミングじゃったからの。出端をくじかれたとあっては気の休まらんのはわかる……じゃが……」

〈さすがに休まなきゃダメだよシエル。いくら睡眠がいらない体になったからといって限度はあるんだから!〉

「そうじゃ。なにせレプリロイドはそもそも人間を模して作られているのじゃからな。スリープすることで頭の情報の整理も必要なんじゃよ」

〈はいはい終わり! それじゃシエルおやすみ。私も休もっと!〉

こうして変身を解いたシエルは半ば追いやられるようにボディのメンテナンスを兼ねてカプセルで眠りに入った。

彼女達がなぜリバースメタルの最適化を急いでいるのか、それは新たなる驚異の可能性が浮上したからである……。

◆SCENE4

バイル事変の折、知り合った『ネージュ』という人間のジャーナリスト。今はガーディアンの一員として諜報活動を務めているのだが、彼女の調査報告によると最近エリア・ゼロ以外の集落に異変が起きているという。

謎の空中要塞による各地の制圧……誰が一体どのような目的で遂行しているかまでは掴めず、現場には反転したZのマークが何かしらの形で残されていたという。そして、少なくとも近い内にエリア・ゼロへの侵攻が行われるのはほぼ確実と見られていた。

不幸中の幸いだが、今襲撃を受けている集落の抵抗が続き、まだ陥落するまでには時間が掛かるということで、その残り時間をガーディアンの武装強化に充てることとなっている。既に装備の新調は済み、残すはリバースメタルの調整のみだった。

元々ネオ・アルカディアの残党との小競り合いも絶えない状況だったため、戦力の強化は避けられない事態ではあったが、ここ最近の謎の新勢力の台頭に加え、マザーエルフの反応消失と、旧レジスタンスベースからの連絡も途絶えたことでシエルは忙殺され続けていたのだ。

そんな中の、束の間の休息である――――

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