【2023年度】国家公務員採用総合職試験:経済区分第一次試験解説(経済理論)
このnoteでは、2023年4月9日に開催された、国家公務員採用総合職試験、経済区分第一次試験の解答・解説を行います(経済理論についての問題を中心に解説します。時事系の問題については本noteで解説を掲載する予定はありません)。もし内容に誤りやご不明点がありましたら、TwitterのDMにまでご報告頂けますと、大変助かります。
なお、経済区分の解説ではありますが、法律区分や政治・国際区分の共通問題も含んでいるので、その他の区分を受験された方についても確認や復習にお役立て頂ければと思います。
【2023年度公務員試験解説リンク】
難易度の評価
★ Cake 一般的な知識のみで解ける問題
★★ Normal 一般的な知識についての簡単な応用問題
★★★ Hard 一般的な知識についての厳密な理解を必要とする問題
★★★★ Savage 専門的な知識を必要とする問題
★★★★★ Ultimate 専門的な知識についての深い理解を必要とする問題
ミクロ経済学(No.1~8)
No.1 最適消費(一括課税vs物品税)★★
まず政策(ア)について検討する。消費者に対し一括所得税を課すことは、消費者にとっては課された税額の分だけ(可処分)所得が減少することを意味する。したがって、30の税収を得るために30の一括所得税を課されると、消費者の(可処分)所得は$${I'=150-30=120}$$となる。これをもとにコブ=ダグラス型効用関数の最適消費の公式に代入すると
$${x_{ア}^{*}=\frac{1}{1+2}×\frac{120}{5}=8}$$ $${y_{ア}^{*}=\frac{2}{1+2}×\frac{120}{10}=8}$$
と求まる。これを効用関数に代入すると
$${u_{ア}^{*}=8×8^{2}=512}$$
と計算される。
次に政策(イ)について検討する。消費者に対し従量的な物品税を課す政策は、消費者にとっては課された単位税額分だけ価格が上昇することを意味する。ただ、本問ではこの単位税額が当初不明なので、一旦$${t}$$としておこう。すると消費者にとってのY財の価格は$${p_{Y}=10+t}$$となる。これをもとにコブ=ダグラス型効用関数の最適消費の公式に代入すると($${I=150}$$であり、X財の価格は変わらないことに注意)
$${x_{イ}^{*}=\frac{1}{1+2}×\frac{150}{5}=10}$$ $${y_{イ}^{*}=\frac{2}{1+2}×\frac{150}{10+t}=\frac{100}{10+t}}$$
と求まる。ここで政府が30の税収を得るためには$${t×y_{イ}^{*}=30}$$とならなければならないため
$${t×\frac{100}{10+t}=30}$$
$${\Leftrightarrow 100t=30(10+t)}$$
$${\Leftrightarrow t=\frac{30}{7}}$$
と求まり、これを$${y_{イ}^{*}}$$へ代入すると
$${y_{イ}^{*}=\frac{100}{10+\frac{30}{7}}=\frac{700}{70+30}=7}$$
これを効用関数に代入すると
$${u_{イ}^{*}=10×7^{2}=490}$$
と計算される。
No.2(法律区分No.44 政治・国際区分No.53)最適消費(給付金vs現物給付)★★
まず政策を行わない当初の状態について考える。所与の値をコブ=ダグラス型効用関数の最適消費の公式に代入すると
$${x^{*}=\frac{1}{1+1}×\frac{2000}{100}=10}$$ $${y^{*}=\frac{1}{1+1}×\frac{2000}{200}=5}$$
と求まる。これを効用関数に代入すると
$${u^{*}=10×5=50}$$
と計算される。
次に政策Bについて検討する(政策Aを後回しにする理由は、単に政策Aよりも政策Bの方が単純なため)。追加的な所得給付は、消費者にとって給付された分だけ所得が増加することを意味する。したがって、追加的に4000の所得を給付すると消費者の(可処分)所得は$${I'=2000+4000=6000}$$となる。これをもとにコブ=ダグラス型効用関数の最適消費の公式に代入すると
$${x_{B}^{*}=\frac{1}{1+1}×\frac{6000}{100}=30}$$ $${y_{B}^{*}=\frac{1}{1+1}×\frac{6000}{200}=15}$$
と求まる。これを効用関数に代入すると
$${u_{B}^{*}=30×15=450}$$
と計算される。よって政策Bによる当初の状態からの効用水準の変化は
$${\Delta u_{B}=u_{B}^{*}-u^{*}=450-50=400}$$
となる。
最後に政策Aについて検討する。消費者にはY財と交換できる引換券が給付されるが、問題の仮定に消費者はこの引換券を確実に使用し、引換券は売却できないとあるので、Y財20単位と交換できる引換券を給付する政策は、実質的に消費者にとって20単位のY財を初期保有していることと同じである。この20単位のY財の市場評価額は$${p_{Y}×Y=200×20=4000}$$なので、単純に考えると政策Aと政策Bは同値の政策である。しかし、政策Bのもとでの消費者の最適なY財の消費量は$${Y_{B}=15}$$であるため、政策Aのもとで政策Bと同じY財の消費量を実現するためには、5単位のY財を市場で売却しなければならない。本問はY財が市場で売却できない旨の仮定が置かれていないため説明が不十分のように思えるが、以下ではY財が市場で売却できないことを仮定して議論を進める(Y財を市場で売却できるならば、$${\Delta u_{A}=\Delta u_{B}=400}$$となる)。コブ=ダグラス型効用関数は原点に向かって厳密に凸な無差別曲線をもたらすので、最適消費量から消費量が乖離するほど、消費者の効用水準は低下する。したがって、市場でY財を売却できない消費者は、「仕方なく」Y財の最適消費量を20とする。つまり
$${y_{A}^{*}=20}$$
一方で、当初からある所得2000はすべてX財の購入に充て
$${x_{A}^{*}=2000÷100=20}$$
となる。これを効用関数に代入すると
$${u_{A}^{*}=20×20=400}$$
と計算される。よって政策Aによる当初の状態からの効用水準の変化は
$${\Delta u_{A}=u_{A}^{*}-u^{*}=400-50=350}$$
となる。
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