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ラプラス共鳴

宇宙シリーズ、地球、火星に続き今回は木星をテーマに。

「さあ、これで調整は完了した。あと何億年後に生まれてくるだろう生命はこの現象が”人工的”ということがわかるかな。」
「どうだろう、エウロパには氷の下に細胞のタネをまいてきたが。いずれにしても何億年後の話だ。」
ここは、遠い銀河系のエス星からやってきた宇宙船の中。太陽系が形成されて数億年が過ぎた時代、今後生まれてくるであろう知的生命体に興味深い宇宙の謎を残す使命をおびて、いろいろな銀河系をまわっている。すでに生命体が存在しているケースでは、かなり高度な謎を残すのだが、今回は、それほど難しい謎ではないものを選んだ。

エス星人たちは会話を続けた。
「まず、これらの衛星自体を発見するには数千年かかるだろう。」
「そうだな。」
「その後、数学や物理理論の発展などがなければ理解できないから、さらに千年ぐらいかかるか。」
「そのころになると、その生命体はこのあたりまで来れるぐらいになっているかも。」
「まあ、この現象を理解するには近くまでくる必要はないが。」
「”ラプラス共鳴”という3つの衛星がキレイな比率で惑星の周りをまわるこの現象は電磁波ベースの望遠鏡でなくても観測可能だからな。」
「そうだな。」
「今回は1:2:4という比率で調整した。つまり、一番外側の衛星が1周する間に、真ん中が2周、一番内側が4周する、ということだ。そして、惑星からみると、3つが同時に同じ方向に並ぶことなく、2つが同時に並んで、もう一つが反対側にきている状態にしている。こうしておくと、引力が偏り過ぎて不安定になることを防げる。この複雑な共鳴現象は自然にはほとんど起こり得ない。つまり、オレたちのような生命体がすでに太陽系にきていて、人工的につくった構造物ということに気づくかどうか。」
「この太陽系は中心の太陽の寿命もまだまだあるし、かなり環境としてはいいから問題あるまい。戦争とかしない限りは。」

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