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あなたのプロジェクトを遅らせる組織の「重力」

プロジェクトがなかなか進まない。
一度起こした意思決定が覆る。
案件は進行しているが、何のためにやっているかが分からない。
その原因は、もしかすると組織の「重力」が引き起こしているのかもしれない。

私はこれまで新規事業の立ち上げプロジェクトや、ビジネスとエンジニアリングをブリッジする仕事を担当してきた。
その中で理不尽なことがいくつも起こった。

・現場と乖離した目標が降りてくる
・誰も幸せにならない施策が進む
・他部署の人間の目の敵にされる

理不尽は、不思議の裏返しだ。
なんでこうなったんだろう?と首をかしげる。
でもそう思ったときには時すでに遅し。
現場が混乱していたり議論が紛糾していることが往々にしてある。

その原因を考えたところ、ある結論に辿り着いた。
組織には見えない「重力」があるのだと。

あなたもしくはあなたの組織はどの「重力」に強いだろうか?

ぜひ、以下の質問に答えてみて欲しい。

自分もしくは自分の組織に最もあてはまる番号を選んで欲しい。
1番目に当てはまる、2番目に当てはまる、など順位をつけても良い。


高い目標を設定されると燃える
数値で管理するのが好きだ
分析したり、意思決定するのが得意だ

人間全般や感情、感覚についてよく考える
数値に見えないものが好きだ
いつの間に探索したり、思考している

相手に配慮しながら物事を進める
自分のため、もしくは誰かのためになるかを考える
コミュニケーションをとったり、誰かを応援するのが好きだ

どれがよく当てはまっていただろうか?
その答えは、あなたもしくはあなたの組織がどの「重力」に強いかを表している。
「重力」が1つしか働かないことはあまりない。
同時多発的に、かつ組織や人によって異なる重みによって引き込み合い、ジレンマを生み、分断を引き起こす

①成長の重力

市場や事業を拡大させるために背負う必要がある重力。
数値を分析したり、原因を特定したり、ベターな意思決定をする動きはこの重力によるもの。
基本的には合理性のかたまりだが、この重力を極めると経験とセンスで投資判断という形で、表出する場合がある。
相性が良いのはロジカルシンキング。

②価値の重力

カスタマー、クライアントの立場である人間が背負う。
商品の価値を言語化したり、インサイトを突き止めたり、気持ちの良いUIをつくる動きが当てはまる。
ブレイクスルーや新しい市場の開拓につながる重力だが、中途半端に重力に引かれたり、思い込みで動いたり、計画性がなかったりで頓挫することもある。
相性が良いのはデザインシンキング。

③人間の重力

人間関係、感情、モチベーションに関わるすべての人間が少なからず背負う。
自分もしくは誰かにとって気持ちの良い状況を把握したり、適応したり、育成するのに向いている。
①成長の重力・②価値の重力と違い個々人の細かい重力が互いに影響し合い、複雑性が高いのが特徴。
コーチングやメンタリングといった考え方と相性が良い。

極論、これらの重力がバランス良く引き合っているのが理想の状態だ。
ただ、火タイプ・水タイプのような感じで、組織や人間によって得意領域や強い重力が異なる。
例えば、リクルートという会社は強力なKPIマネジメントとモチベーションを軸とした人材管理が特徴的な会社だ。
つまり、①成長の重力×③人間の重力を強力にすることで成長してきた。

よりエンドユーザーに近い職務、例えばデザイナーやコピーライター、エンジニアは②価値の重力に強いことが多い。
また、カウンセリングや折衝に長けている人は③人間の重力に強い傾向がある。

セールスであれば、相手が引かれている重力に沿ってコミュニケーションを取ったり、決済プロセスを支援する必要があるだろう。
企画・設計職であれば、①成長の重力と②価値の重力の最適なバランスが求められる。

しかし、重力に引かれすぎるとプロジェクトや組織に支障が起こることがある
①成長の重力に引かれすぎるとKPI偏重になり、マイクロマネジメントに陥り、本来実現したい世界観から遠のいてしまうことがある。
②価値の重力に引かれすぎると誰もが欲しがるが持続可能性がない、拡大しにくいサービスになる可能性がある。
③人間の重力はもっとも危険だ。
嫉妬や自己保身が組織の進みを阻害する、心理的安全性が確保できず、相互不信に陥ることが考えられる。

そもそも今何の重力に苦しめられているか?
という観点は自分の苦しみを明らかにする上でも大切だし、組織が見えない間に起こしている大きな波を理解することにもつながる。
その重力を自覚し、一歩引いて距離をおき、自分が何をしたいかを考える時間も大切だと思う。


重力を理解する上で役に立った本はこちら。

ハウ・トゥ アート・シンキング

各重力に対応する思考法の変遷、重力から距離を置いて自分起点で「ゆらぎ」や「衝動」を捉え直す考え方がわかる。

ティール組織

組織の進化の歴史をマフィアや大企業の実例に沿って説明している箇所の納得度が高い。ただティール組織を実現するにはあらゆり重力から解放される必要があるので、個人の求められるタレントとスタンスの要求度合いが高い。

天才を殺す凡人

個人のタレントとタレントの育み方を学んだ。「凡人」という言い方はあまり好きではないが、組織で起こる重力と相性の良いタレントは近い気がする。


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