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公立高校の教育困難校や進路多様校の成り立ちと現状、そして教員として働くこと

 高校といえば、クローズアップされるのは進学や大学との接続や大学入試のことで、この件に関して話題になることは少ないですが、教育の中では重要な課題であり、社会的にも理解を深めて充実させていく必要がある個人的には思っています。
 あまりうまく表現できないのですが、学ぶことが得意でない大人は、仕事や生活で自分に適合した選択ができず、つまずき、賢い消費活動ができず貧困に陥るみたいな、または、社会的に見て不利益を被っているみたいなことが起きていると思うからです。

公立高校に教育困難校ができる理由①【公立と私立】

 家計には余裕があり、「子どもには公立ではできない環境や特徴のある教育を受けてほしい」と考える保護者は、小学校やその前段階の時点で私立を選んでいます。家計に余裕がない場合でも、子ども優先で私立を選ぶ家庭もあると思います。

 親の意思が強すぎて、子どもと学校のミスマッチが起こるということはあるかもしれませんが、多くの場合はそれなりに学習ができるベースがある子どもたちなので、それなりに学習上、生活上の多くの課題はクリアしてくることでしょう。

 私立が教育上で優位であるとは思いませんが、とりあえず公立はお金の面では負担は少ないです。お金の面だけで公立を選んでいる家庭ばかりではありませんが、単純に、私立に通っていない生徒が公立に通っているということです。

 それでは、公立は私立に比べて劣っているのかという話になりますが、そうとも限りません。都市部はわかりませんが、地方の場合、いわゆる優秀な先生は公立のほうが多いと思います。何をもって優秀とするかですが、倍率は低くなったとはいえ、公務員の試験を通過してきています。もちろん私立にも優秀な先生はいらっしゃいますよ。気分を害された方すみません。
 
 しかし、近年は倍率が低くなることによる教員の質の低下は懸念しています。また倍率が低いからと言って試験内容を易しくしていく傾向にはなってほしくないと個人的には思います。

 私が住んでいる地方の場合、給料は公立のほうが高いです。都市部では私学の先生の給料のほうがいいのかもしれませんが、それは私にはわかりません。

 教育に対する「志」は私学の先生の方が高いと感じますし、フットワークも軽そうなので、公立の教員からすると羨ましく思うことも多いです。でも、給料は高くないのです。また私立は私立での内情も様々と漏れ聞こえます。公立の先生のスペックは基本的に高めだとは思うのですが、十分に活かされていない気がするので残念です。

 私の住んでいるところは、教科「工業」の教員免許で働くことのできる私立高校はありません。もしも私が普通教科の教員免許を持っていたら、どうしていたかなと時々考えます。 

 少し話が逸れました。
 
 高等学校においては、「高等学校等就学支援金制度」「私立高等学校授業料の実質無償化」があります。授業料に関していえば、私立高校も公立高校並みの経済負担となっているため、近年は、今まで公立を選んでいた家庭も、私立を選ぶ傾向にあると思います。私の地域では、公立から私立に生徒が流れています。

公立高校に教育困難校ができる理由②【入学時の学力層】

 中高一貫校を除けば、中学生には高校受験があります。普通科進学指向が強いため、いわゆるペーパーテストで点数が取れる生徒は、進学実績のある高校を選びます。ペーパーテストで点が取れれば良い人間だというわけではありませんが、少なくとも点が取れる学力層の生徒は、進学校に固まります。

 それ以外の学力層の生徒は、「自宅が近いから」、「受験勉強をしなくても、自分の持ち点や今の学力で入れそうだから」、「中学校の先生に言われたから」、「とりあえず高校は出たほうがいいと言われた」という理由で高校を選びます。学ぶ意欲はほとんどなく、学ぶ姿勢そのものが身についていないので、学べない、学びたくないという学力層の生徒が特定の高校に集中します。

 正しい定義があるのかわからないですが、これが「教育困難校」に分類されると思います。学力を「層」で見るのはいかがなものかという意見もあると思いますが、これが現実です。学力の下位の層の学校は、ほぼ「教育困難校」です。反社会的な行為をするイメージがあるかもしれませんが、そればかりでなく、それほど騒がしくない「サイレント教育困難校」もあると思います。

 ちなみに私の担当教科の専門高校(実業高校)はというと、「教育困難校」の度合いがどんどん増していると感じます。いや、すでに「教育困難校」になっているかもしれません。ただし、専門高校の場合、地域によって差があります。

 反社会的な行為をする生徒は、中学校までも多くの指導が入って、高校でも引き続きという形で、そもそもの生活や家庭環境から考えて、高校での対応を考えていくという感じだろうと思いますが、その少し上の層というのは、中学校生活の日常で特に問題もなく、テストでの記号問題はそれなりに合わせて点数は低いながら取れるので、中学校であまり手をかけられていないと感じます。

 しかし、学ぼうとする意志や、学ぶ力は非常に低いです。このような生徒たちに授業するのは簡単ではありませんし、高校卒業後、進学するにせよ就職するにせよ生活するときに様々な困難があるだろうなと思います。

 高校の段階、本当はもっと早い段階で何かしらの支援を必要とする生徒が多いと感じます。

公立高校での勤務は、進学校か教育困難校か

 公立高校はもちろん異動があります。進学校に行く場合も、教育困難校に行く場合もあります。抱える悩みの方向性が違います。教材や授業に時間がかかるのか、生徒指導上のことで時間がかかるのか、勤務時間内でかける時間の割合が違います。

 以前の私の記事でも書いていますのでご覧ください。一番下にリンク先を入れています。

 進学校や大学で日本の先進的なブレインを育てようとする教育に対して目が向けられがちですが、それと同じかそれ以上に、教育困難校の教育も手厚くしたほうが良いのでは思います。教育困難校に充実した教育をすることで、社会を構成する人のボトムアップにつながり、長期的に見て社会や経済もうまく回って、より多くの人が豊かな暮らしができると考えています。

教育困難校の現実

 教育困難校についての良質な記事を書いていらっしゃる方を紹介します。「高校教師うたこ」さんです。的確な内容の記事が多すぎるので並べると大変なので、個別の投稿のリンクではなく、ユーザーのページをシェアします。(勝手にシェアさせてもらってます。)

 この方の記事を読めば、教育困難校の現実と課題がよくわかります。また、幅広い視野から教育を捉えていらっしゃいます。個人的にも新たな視点に気づかせてもらって、私の教育の知識や考えのアップデートにつながっています。

 「九九ができない、アルファベットが書けない」というのがとても印象的であり、現実であり、共感できます。

教育困難校は、進路多様校でもある

 私は専門教科「工業」です。他の教員免許は持っていませんので、勤務先は専門学科を設置している公立高校ばかりです。
 工業学科のある専門高校は、地域の地場産業にも多く影響されますが、地場産業が盛んではない地域では、教育困難校にどんどんシフトしていっていると感じます。正直言って、私の勤務校もそのような形だと認識しています。
 教科「工業」を設置してある高校は就職する生徒が多いです。そのことについての現実や課題を書いていらっしゃる方や記事を紹介します。

 高卒就職についての問題解消のため研究と提言の記事を書いていらっしる「TransactorLab」さん。

 高卒就職と社会とのつながりを良くするために、学校の側面、社会の側面から鋭く切り込まれて、具体的な解決策を提言されています。

 就職をする生徒が多い高校の現実は、当たり前のように大学に進学して就職した人からするとほとんどわからないものです。「高卒進路digital」さんの投稿は、進路多様校の知識のアップデートにつながります。

 次の記事もとても参考になります。高卒の就職について述べているじゃジャーナリストの方は少ないです。

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以下、今回の内容に関連する私の記事


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