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「八郎」 読書感想文

お気に入りの本を一冊あげるなら、迷わずこのお話を選びます。人生の節目で、何度も繰り返し手に取ったとても大切な物語。今日は久しぶりに読書感想文です。

「八郎」作:斎藤隆介 画:滝平二郎

あらすじ

山男の八郎は心優しい大男。背が高く樫の木ほどもある。それでも八郎は、もっともっと大きくなりたかったのだ。そんな思いにどうしようもなくかられる時は、浜に駆け出し、「うおーい」と海に向かって叫ぶのだった。
ある日のこと。浜で1人の男の子が泣いていた。聞けば海の水が田に今にも被りそうで、村人達が大急ぎで水防ぎにかかっていたのだ。八郎は心優しい大男だから、泣いている男の子が可哀想で仕方がなく、「おらがしてけるべ。」と、山を担いで海へと投げ入れた。
しばらくは静かにしていた海だったが、田を全部飲んでしまおうと、再び荒れ狂い押し寄せてきた。八郎はそれを知り今度は自らが防波堤となるべく、海へと押し入っていくのだった。


斎藤隆介の世界

斎藤隆介さんの描き出す物語には、心優しい男がたびたび登場します。

小学校四年生の国語の教科書に載っている「モチモチの木」の主人公、豆太も、夜中に1人で用をたすこともできない怖がりにも関わらず、じさまの一大事には夜中の山を麓まで駆け降りる強さをもっています。山火事を防ぐために、その身を投げ出した三コも心優しい大男でした。

大きな頭に鳥が巣を作っても、黙ってそのままにしておく様な、男の子が泣けば自分も一緒になって悲しくなってしまう様な、そんな心優しい大男、八郎も、村人と男の子の幸せのためなら、命を投げ出しても惜しくない。とばかりに海へぐっぐっと歩を進めていくのです。


なんのために

自己犠牲が尊いことだと、お薦めをしたいわけではありません。でも八郎のその姿とみんなを思う心に、どうしても心揺さぶられずにはいられないのです。

心に残る言葉があります。それは、八郎が荒れ狂う波を胸で押し返しながら沖へと進み、海の底へ沈んでしまう前に叫んだ言葉。

「わかったあ!おらが、なして今まで、おっきくおっきくなりたかったか!おらは、こうしておっきくおっきくなって、こうして、みんなのためになりたかったなだ、んでねが、わらしこ!」


それぞれの道

人にはそれぞれ、与えられた人生があります。その道で命を輝かせ、光放つことはそのまま、関わる人達を中心に広がる、世界と未来を作ります。

わたしはそのことを子ども達に伝えたくて、このお話を読み聞かせ、時には学芸会の劇に仕立てて、八郎の生き様の擬似体験を試みます。

そして、そうする度に自分自身の人生を振り返り、何のために力をつけ、何のために心を磨いてきたのかと、思いを深めるのです。


斎藤隆介 滝平二郎の絵本

どのお話も大好きです。中でもお気に入りを3冊ほど紹介しましょう。

まずは上でも紹介をした、国語の教科書にも載っているお話「モチモチの木」。モチモチの木に火が灯る、その場面が本当に好きです。

「ソメコとオニ」は、ソメコとソメコに翻弄されるオニとの関わりがとてもほのぼのしていて、癒されるお話です。

「三コ」は、八郎と同じく心優しい大男。村人達のために、その命を投げ出します。涙なしには読めないお話です。


蒼き狼 冨田勲

蛇足ですが、わたしが「八郎」を劇にするとき、クライマックスに使う曲を付け加えておきます♪

「蒼き狼」です。押し寄せる波の表現活動をこの曲のイメージに合わせて振り付けをします。クライマックスのシーンにピッタリで、これ以上の曲はなかなか探せません。(ちょうど1分あたりまでが、イメージにピッタリです。)


今日は連休の中日♪皆さま方も、本にでも親しみながら、ゆったりと過ごすことができます様に。そしていつか、八郎の物語と出会う日がやってきます様に♪

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