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ついつい放っておいてしまいがちな初期症状。早期発見・治療に繋げる広報とは?

人生100年時代と言われるようになって久しく、健康課題が他人事では無くなっている現在。皆さんの周りにも、生活習慣病をはじめ、何かしらの身体に不調や病に悩んでいる人が増えているのではないでしょうか。
一方、健康診断などの定期検診で、たとえ「要検査」が出たとしても、なかなか再検査に行かず、不調を放置している…という人も、多く見受けられるように思います。

こういった課題に対して、コミュニケーション活動を企画・担当されている広報ご担当者の中には、日々、難しさやもどかしさを感じている人も多いのではないでしょうか?
今回は、早期発見・治療に繋げる広報のポイントについて、ご紹介します!

YUKI:心理学系大学院修了後、広告制作会社に入社。企業の採用案件や大学をはじめとした様々なクライアントのwebサイトやパンフレット、チラシなどのディレクションを行う。オズマピーアール入社後は、大手製薬会社や医療機器メーカー、行政とともに医療への関心を広げるPRプロジェクトを担当。


初期症状の放置が、働くみなさんの業務の質を下げている?!

わたしたちヘルスケア本部で行った調査によると、「要検査」などの異常所見があった場合についても、「面倒だから」「時間が無いから」といった理由で、二次検査に行かない人が3割近くいることがわかりました。

このように、初期症状や異常所見を“放置”してしまうことで、例えば就労している人にとっては、生産性が下がったり、ケアレスミスが起きてしまったり、しまいには大きなトラブルを招く恐れがあります。さらに、心身への負担も増加し、重症化のリスクに繋がります。
 
それにも関わらず、要検査対象者が、なかなか受診していないという事実が垣間見える結果となりました。

早期発見・治療ができないその理由は“病気の理解不足”と“きっと大丈夫”といった慢心にあった!

では、なかなか病院に行かない人たちに、早期発見・早期治療を促すには、どのような啓発を行っていくといいのでしょうか?特に生活習慣病(放っておいても「今は」なんともないけれどもゆくゆくは命に係わる病に繋がる可能性がある病気)などの早期発見・治療を促したい広報担当者が抱えやすい課題と、情報づくりのアプローチについてまとめてみました。

例えば、これまでお仕事をともにしてきたご担当者からいただいた課題は、以下のようなものでした。

そもそも情報が届かない

病気に関する情報は、少し検索しただけでも、膨大な量が溢れている。そのため、ただ単に情報を発信するだけでは、どうしても埋もれてしまい、メディアにも取り上げられにくい。数ある情報の中から自分たちの発信したい情報を患者さんや予備軍の人たちに届けることが難しい。

専門用語が難しい

ヘルスケア企業や医療従事者の中で当たり前のように使用している用語は、実はそこまで浸透していない。ある程度の前提知識が必要なため、そのままの形で発信しても、医療・ヘルスケア業界外の人には重要性が伝わりにくい。例え情報に届いたとしても、直感的に理解いただける形になっておらず、どうすればいいか、表現方法に迷っている。

患者さんの危機感が薄いことがある

生活習慣病をはじめとした慢性的な病気の患者さんは、「自分はまだ大丈夫」「もし自分がなったとしてもなんとかなるのではないか」といったやや楽観的な考えをもっており、どれだけアラートを鳴らしても、なかなか危機感を持ってもらいにくい。また「自分は病気ではないので関係ない」など、今健康な人にとってはどこか他人事に映るため、そのような人々に対してどのようにして情報を届けたらよいのかわからない。実際に患者さんからお話を伺った際には、「自覚症状もなく、なぜ自分が・・・」と、まさか自分が患者になるとは思ってもみなかった、と言った発言も。

このように情報の届きにくさや翻訳の難しさ、そして患者さん自身の危機感の薄さが、医療・ヘルスケアPRの難しさ、さらに早期発見・治療の遅れに繋がっているのかもしれません。

数ある医療情報の中から、患者さん、潜在患者さんに届く情報をつくる!

そのような病気の早期発見や予防意識を高める広報PRには、どのようなやり方があるのでしょうか?
一部、過去に弊社が担当したアプローチ事例をご紹介します。

“多様なエンタメ性”を取り入れて興味喚起を行う

情報をストレートにお伝えするのではなく、例えば、「クイズ」や「マンガ」といったエンターテイメントを取り入れることで、一見難しい医療情報に触れるハードルを下げていきます。これにより、医療・ヘルスケアに無関心な層が、少しでも関心をもっていただけるトリガーやスイッチになることを狙っていきます。

イメージが湧く“ネーミング”に専門用語を翻訳

病気や症状など、啓発したい物事について、思わず気になってしまうようなネーミングを行います。その際、全体像やアピールしたいポイントをぱっとイメージできることを意識することで、啓発活動全体への理解も促します。
例えば、「●●疲労」「●●現象」「●●活」など、既に馴染みのある単語と組み合わせることで、わかりにくい医療専門用語を、生活者にとってイメージしやすく、わかりやすい情報に翻訳する効果も期待できます。

患者さんの心理に寄り添いながら、意識・行動変容を促す

例えば、二次検査に行きたくてもなんとなく面倒くさい、という患者さんに対して、果たして「悪化する危険があるので絶対に行きましょう!」という呼びかけは響くでしょうか?
ヘルスケア本部では、行動科学を活用した一つのやり方として、患者さんの心理に寄り添って行動変容を促す、ナッジを用いたご提案も行っています。これまで褒美や罰を使わずに行動を促す手法を用いたり、「仕掛学」と共創したりするなどの取組を行いました。未だ顕在化していない本音、声なき声を聴き、アプローチを設計します。

参考記事:
【ヘルスケアPR×ナッジ Vol.1】ヘルスケア領域と好相性!ナッジでできることはどんなこと?
“やりたくなる小学校のトイレ掃除”を「仕掛学」で共創! 大阪大学 松村教授と考える ブルーレット50周年企画『トイレモンスターズ』(前編)

さまざまな関係者(ステークホルダー)と協業し、プロジェクトの輪を広げる

啓発イベントや制作物といったアウトプットだけでなく、「プロジェクト全体にどのような人々を巻き込み、共感の輪を広げることができたか」という過程も重要。関わりしろを設計し、さまざまな人を巻き込んでいきます。関係者が増えてプロジェクトの輪が広がっていったことで、関わっている一人一人の満足感も向上していきます。

これらのアプローチに共通するのは、「多くの人が興味を持ち、理解しやすく、自分ゴト化しやすい情報にする」こと。正しい情報を正しく知っていただくには、ただストレートに情報を掲載するのではなく、「あれ?もしかしてこれって私も当てはまるのでは…?」と思えるように、情報を翻訳することがポイントです。

次回以降、ヘルスケア本部が実際にお手伝いした事例もご紹介予定です。お楽しみに!

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