未来を創るPRの力~早稲田大学商学部提携講座で講師をしてきました~
オズマピーアールは、2019年度より早稲田大学商学部提携講座「未来を創るPRの力 ~企業広報の実務の現場から~」を開講しています。5年目を迎える2023年も、春学期に講義を行いました。
本講座では、企業や団体の情報発信のあり方や、多様なステークホルダーとの良好な関係構築の重要性など、未来を担う世代の学生の皆さんにPublic Relationsを学んで頂いています。今年度は、新型コロナウィルス禍を経て4年ぶりに対面形式で授業を実施。約300名の学生の皆さんに全13回の講義を受講頂くことができました。
教室では、真剣なまなざしで講師の説明に聞き入る姿が見られ、また、講義後のレポートには、それぞれの視点で理解したことや経験に照らして感じたことが熱心に書かれており、広報への関心の高さがうかがえました。
本稿では、当社で本講座の運営事務局を務めた相崎・小笹(共に2022年度入社)が、講師を務めた社員に話を伺い、本講義を振り返ります。
講師を務めた社員
㈱オズマピーアール オズマヘルスケア本部 本部長 伴野 麻衣子
講義内容:ヘルスケアPRの「ミカタ」
入社以来、一貫して医療・ヘルスケア領域のPR業務に従事。数多くの製薬会社、医療機器メーカー、医療関連学会、医療系業界団体、ヘルステックベンチャーなど、幅広いクライアントを担当。医療・ヘルスケアPRの戦略立案から実行までを手掛けている。
ピーアールコンビナート㈱ PR本部PR2部 部長 杉山 太一
講義内容:PRパーソンの基本のキ「パブリシティ(メディアへの情報提供)」
これまで20年間、コミュニケーション戦略のプランニングから実施までを一貫して担当。中央省庁や地方自治体をはじめ、フード&ビバレッジ・商業施設・一般消費財などの幅広い案件を担当し、各業界のノウハウを蓄積。メディアプロモーターで培った「ニュース創出および情報発信設計」を活かした、“つながりのデザイン”が強み。
㈱オズマピーアール リレーションズデザイン本部 統合コミュニケーション戦略部 鳥居 保人
講義内容:デジタルPR
定常的な広報活動のコンサルティング、マーケティングPR 、コーポレートPRまで、多種多様な企業の様々なコミュニケーション活動を担当。パブリシティだけに囚われず、PR視点でのファクト開発をベースとしたクリエイティブ・PRアクション、ADを含めた統合コミュニケーションの企画/制作に注力。
■早稲田大学での講義にあたり、どのような準備をしましたか?
鳥居:私は普段、社会人向けの「デジタルPR」セミナーに登壇しているのですが、今回あえて学生向けに内容のレベルを変えたりせず、私が持っているPRの知識やノウハウをすべて出して伝えることを意識していました。その中で、分かりやすいように事例を交えて解説しました。
伴野:私は、知り合いの大学生にどういった内容であれば理解しやすいか、興味を持ってもらえるのかをヒアリングしました。学生だからといって簡単な内容にするのではなく、知らないことでも知的欲求を刺激するようなものにしたほうが良いのでは?というアドバイスもあり、その点を意識しながら内容を組み立てました。
杉山:“企業広報の実務の現場から”というテーマだったこともあり、一番意識したことは、どこにも載っていないリアルな情報を伝えるということです。現場ならではのナレッジや泥臭い部分だったり、教科書には書いていないPR会社のB面や、私なりのPR観を伝えたいと考えました。
■学生の皆さんの反応を受けて、率直にどのような感想を持ちましたか?
鳥居:質問や感想の質が高くて、PRやコミュニケーションの分野への関心の高さを感じました。私が大学生の時には、PRの「ピ」の字も知らなかったのですが、早稲田大学の学生の皆さんはPRという言葉に食いついて話を聞いてくれていましたので、ありがたいことにこの分野の認知度が高まっていると感じました。
伴野:社会課題に関心を持っている方が多いと感じました。私は不妊治療の保険適用の事例を話しましたが、多くの学生の皆さんが不妊や不妊治療を取り巻く課題に関心を持たれ、「制度を変える」「環境を整える」ために何をすべきかという視点を大事に、たくさんのコミュニケーションアイデアをあげていただきました。PRが世論形成に寄与することをしっかり理解いただくこともできたように思います。
杉山:私は昨年度も登壇させていただいているのですが、オンライン講義のみの経験でした。リアルでの講義は、学生の皆さんの反応をダイレクトに感じられ、とても刺激的でした。来年度も登壇する機会があれば、もっとインタラクティブなコミュニケーションを増やした双方向型の講義にも挑戦してみたいです。
■自身の「PRの軸」を教えてください
杉山:「共感」と「つながり」という2つです。PRは「良い状態でつながり続ける」ことだと思っています。つながりをつくるために必要なことは、気持ちを動かすことや、新しい気付きを与えることなどだと考えているのですが、それだけだとつながり続けることが難しいことも多いです。大切なのは、そのつながりの間に、継続的な「共感」を作っていくこと。「心」ですね、人と人ですので。
鳥居:言葉を選ばずに言えば、こだわりがないということです。言い方を変えると、手口ニュートラルに仕事をしたいです。私たちの仕事は、相手、つまり、企業や団体と、情報を伝えたい生活者がいる仕事ですので、自分の凝り固まったやり方にこだわるのではなく、その都度、相手を考え、手を変え品を変え、やっていこうと思います。
伴野:情報を受け取る側の方たちに思いを馳せること、そして、その一連のコミュニケーション活動に関わる皆さんがWINであるかどうか、を大事にしています。例えば、私はヘルスケア領域に携わっていますが、医療者ではないので患者さんの病気を直接的に治すことはできません。ただ、患者さんたちの置かれている環境を理解し、様々な方々を巻き込みながら大きなうねりを生み出すPRアクションが、患者さん、ひいては社会にとって良い環境を作りだすことに寄与できると思っています。
■「未来を創るPRの力」をテーマとした講義でしたが、PRでどのような未来を作っていきたいですか?
鳥居:誰もが選択肢を持って、選択できる未来を実現したいです。もちろんその選択を、「選ぶ」か「選ばない」かはその人次第です。ですが、少なくともその人の向かいたい方向に向けて、有効な選択肢として情報を届けられるようになりたいです。
伴野:PRには、ただ情報を伝えるだけではなく、その先に世の中を動かす力があります。講義でお話しした不妊治療の保険適用は、PRの力が国のルールを変えた事例の1つだと思います。そういった仕事を積み重ねていきたいです。
杉山:新しい気付きを与えるような案件をひとつひとつ積み重ねていけば、より良い未来ができるのではないかと思っています。生活がちょっと豊かになったり、手助けになったり、役に立ったり、少しずつでもそういった新しい気付きを継続的に生み出していく仕事をしていきたいです。
■これからのPRの未来を担う若者にメッセージをお願いします
杉山:PRの仕事は、正解がどこにも存在しません。様々な価値観を持っている仲間と集まり、話し合って、進むべき道や新しい道を決めていく仕事だと考えています。だからこそ、お互いの価値観を尊重し合えるような人でいてほしいですね。
鳥居:相手の目線に立てることがとても大事だと思っています。PRの仕事には様々な手法がありますが、どれもコミュニケーションです。当たり前ですが、これを言うと相手はどう思うのかを想像し続けることが基本です。PR会社としても、メディアや生活者がどう受け取るのか、相手のリアクションをデザインする力が必要です。
伴野:つねに状況を俯瞰できるといいなと。自分がなんらかの当事者になった瞬間に利害を考えがちですが、状況を少し斜めや上から捉えることで物事の本質は見えてくるのだと思います。PRは世の中の風を読む仕事です。状況の本質をとらえられる力が大事かと思います。
編集後記(相崎・小笹)
今回の提携講座を受講してくださった学生の皆さんにとって、実際に第一線の現場でPRに携わっている講師の話が、PRを理解したり、PRに興味を持つきっかけになっていたとしたら、嬉しい限りです。今回の鼎談では、提携講座の中では触れられなかった、講師陣のPRに対する想いもお伝えできたかと思います。運営事務局を担当した入社2年目の私たちにとっても、PRに向き合う姿勢など見習いたいことがたくさんありましたので、今後に活かしていこうと思います。