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新型コロナウイルスはどこから来てどこへ行くのか

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2023年5月8日をもって。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は「5類感染症」に移行し、社会は「新型コロナ以前」に戻りつつある。しかし、新型コロナウイルスによる感染者は…
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#パンデミック

19世紀の「ロシアかぜ」の原因はコロナウイルスか?

<第8回>

 スペインかぜに先立つこと四半世紀、記録が残る最初の呼吸器感染症パンデミックとされるのが、19世紀末、1889年〜1893年にかけて世界中でおよそ100万人を死亡させたといわれる「ロシアかぜ(Russian flu)」である(表参照)。ただし確実とはいえないが、歴史上の文献からは、インフルエンザによるパンデミックが1510年以降、何度か発生したと考えられている[1]。

 ロシアかぜ

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100年前の「スペインかぜ」パンデミック

<第6回>

 インフルエンザウイルスによる歴史的なパンデミックが、1918〜1919年にかけて流行した「スペインかぜ」だ。スペインは発生国でもないし、最大の流行国でもなかったが、ヨーロッパは第一次世界大戦の真っただなかで、参戦国では報道統制により感染者や死者の報告が公表されなかった。それに対して中立国であったスペインでは統制がなかったため、まるでスペインだけで流行していたように見えた。それで、ス

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雲南の廃鉱山から運ばれた新型コロナ近縁ウイルス

<第3回>

 2012年、中国南西部雲南省にある廃銅鉱山の坑道で、コウモリの糞を集めていた作業員6人が重症の肺炎に罹り、うち3人が死亡した。なんらかのウイルスに感染したことが原因と考えられたが、その感染源として坑道をねぐらにするコウモリが疑われた。1000km以上離れた、湖北省の省都・武漢市にある武漢ウイルス研究所の研究チームがこの廃鉱山に入り、コウモリ(ナカキクガシラコウモリRhinoloph

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COVID-19パンデミックのはじまりとひろがり

<第2回>

 中国湖北省の省都・武漢市は、人口1100万人を超える中国でも有数の大都市であるとともに、北京、上海、広州、成都といった他の大都市とのあいだを高速鉄道が走り、国内外を結ぶ国際空港をもつ交通の要衝である。

 2019年12月30日、この街で多数の肺炎患者が発生しているとの報告が、中国国家衛生健康委員会にもたらされた。翌日には、中国疾病予防管理センター(中国CDC)が武漢に調査研究チー

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