- 運営しているクリエイター
#SARSCoV2
新型コロナウイルスはどこへ行くのか
<第14回>
日本では、2023年5月8日にCOVID-19が「2類相当」から「5類感染症」に移行し、季節性インフルエンザ並みの扱いとなった。それ以前は、毎日感染者数や死亡者数が報告・発表されていたものが、定点医療機関からの週1度の報告に基づいて感染者数が公表されるだけとなった。国内の全感染者数は正確には把握できず、「定点あたり」で増減を判断するしかなくなった。感染を防ぐための行動制限はなく、
奇妙な変異株オミクロン
<第12回>
日本では、2023年5月8日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が感染症法上の「第5類感染症」に移行してからも感染者数がふえつづけており、7月に入って日本医師会が「現状は第9波と判断するのが妥当」と発表した[1](ただし、数日後政府はこれを否定)。第5類移行で全数把握されなくなり、定点あたり報告数から推測するしかないが、6月、7月と明らかに感染者数は増加している。この波
パンデミックをもたらした「D614G変異」
<第11回>
SARS-CoV-2は変異しつづけている。初期に採取されたPANGO系統分類のA系統(A株)とB系統(B株)のうち、その後世界的に広がったのはB株だった。2020年のはじめ、そのB株からB.1株が派生する。はっきりとはわかっていないが、出現時期は1月はじめと考えられており、おそらく中国国内で出現して、それが旅行者とともにヨーロッパにもたらされた。イタリアでは、2020年2月から3
SARS-CoV-2の構造と感染メカニズム
<第4回>
19世紀後半、ロベルト・コッホによって炭疽菌や結核菌、コレラ菌のような病原細菌が発見され、細菌学が大きく発展した。しかし、細菌を捕捉するフィルターの濾過液に、なお病気の原因となるものが含まれていた。この細菌よりも小さい濾過性病原体は、ギリシャ語で「毒」を意味する「ウイルス(virus)」と名づけられた。ほとんどのウイルスはそのサイズが非常に小さいため、光学顕微鏡では見ることができな
雲南の廃鉱山から運ばれた新型コロナ近縁ウイルス
<第3回>
2012年、中国南西部雲南省にある廃銅鉱山の坑道で、コウモリの糞を集めていた作業員6人が重症の肺炎に罹り、うち3人が死亡した。なんらかのウイルスに感染したことが原因と考えられたが、その感染源として坑道をねぐらにするコウモリが疑われた。1000km以上離れた、湖北省の省都・武漢市にある武漢ウイルス研究所の研究チームがこの廃鉱山に入り、コウモリ(ナカキクガシラコウモリRhinoloph
COVID-19パンデミックのはじまりとひろがり
<第2回>
中国湖北省の省都・武漢市は、人口1100万人を超える中国でも有数の大都市であるとともに、北京、上海、広州、成都といった他の大都市とのあいだを高速鉄道が走り、国内外を結ぶ国際空港をもつ交通の要衝である。
2019年12月30日、この街で多数の肺炎患者が発生しているとの報告が、中国国家衛生健康委員会にもたらされた。翌日には、中国疾病予防管理センター(中国CDC)が武漢に調査研究チー
動物媒介か研究所漏出か──新型コロナウイルスの「起源」論争はつづく
<第1回>
700万人が命を落としたと推測され、世界中を混乱と恐怖に陥れた2019新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。本稿投稿時点(2023年4月25日)で世界保健機関(WHO)によるパンデミック宣言は解除されていないが(追記:2023年5月5日、WHOは「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を解除した)、世界は事実上「新型コロナ」以前の状態に戻った。ただし、完全に