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子どもの発音 何科に相談?

発音の発達

子どもは皆,スイカを「ちゅいか」,仮面ライダーを「ためんだいだー」のように発音している時期があります.園の先生に,「そろそろ言語聴覚士のところに行って,練習するといいかもしれませんね」と勧められても, ある男の子のお母さまは,「〇〇〇でちゅ(です)」が可愛らしくていいと,ドンと構えておられました.たしかに,特定の音が未習得でも,成長にともなって自然に習得する場合もありますので,あまり急ぐ必要はありません.

どこで相談?

5〜6歳になって,こうした幼児音が残っている場合は,大丈夫かな? と気になる保護者もおられると思います.子どもの発音病気ではないので,どこに相談したらいいか分かりにくいですが,たとえばカゼなどで小児科耳鼻咽喉科を受診したとき,あるいは歯科で相談すると,言語聴覚士のいる病院や小児の発達を専門とするセンターなどを紹介してくれます(医療保険の適用となります).

発音の誤り

発音のことを,医師や言語聴覚士(ST:スピーチ・セラピスト)は構音(こうおん)という用語を使い,相手に伝わるように子音,母音を発音できない場合を ”構音障害” と呼びますが,子供の発達過程でみられる音の誤りは,言語聴覚士が練習をお手伝いすることで正しい音が可能になることが多いので,障害という用語はふさわしくないと考える人もいます.その代わりに,未熟構音,誤り構音,不正構音という用語も提案されています(長澤,『構音障害の診断と指導』,学苑社,1991 : 112).

発音の練習

発音の練習に取り組めるようになるのは,通常の発達過程を歩んでいるお子さんでは4歳前後からです.
サ行音,ラ行音などは,この年齢では未習得の子も多いので,これらの音だけが未習得の場合は少し様子をみてもいいということになります.

また,構音の誤りとは別に吃音(きつおん)という症状もあり,2歳以降でよくみられます.同時に吃音と発音の誤りがみられる場合は,吃音への対応を優先します.練習時には子どもにある程度,発音の仕方を意識してもらう必要がありますが,吃音では発音自体をあまり意識しすぎないほうがいい場合があるからです.

通常,子どもの構音練習は,STと一緒におこなう週1回程度の練習と,家庭での練習(STとおこなった練習で可能になった動作の定着を図るための反復練習)をセットにして進めていきます

開始年齢・練習期間

発音の練習は何歳になっても始められますが,言語聴覚士は理想的には小学校入学までに練習が終了するとよいと考えています.同年代の子どもの多くが就学年齢までに発音の習得が完成することと,小学校になると終業時刻が延び,通園しているときのほうが練習に通う時間的余裕があるからです.

練習に要する期間は,練習が必要な音の数,子どもさんの学習の進み具合によって幅があります.最近,私が担当したお子さんは,年長組の11月に紹介を受けて練習を開始し,コロナの感染拡大の影響で途中,来室できない時期がありましたが,ひとりは練習音がサ行音のみでしたので2月中に終了し,もうひとりはサ行音とカ行音の練習をしていますが3月中には練習を終了できそうです.

発音の習得が進まない原因にはさまざまあり,練習終了までに,長い場合には数年間かかる場合もあります.ご心配な場合は3歳半から4歳ぐらいで一度ご相談いただくとよいかもしれません.医師,言語聴覚士が,練習をせず,しばらく様子をみていてよいか(いわゆる経過観察),すぐに練習を始めるとよいかを判断します
小学校,幼保育園によっては,公的な「ことばの教室」も設置されており,そこで指導を受ける子もいます.ことばの教室では,通常,指導は小学校,園の教諭が担当します.                (了)

小児の構音については下記のテキストにも少し書きました.言語聴覚士学生で持っている人はご参照ください.


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