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ボクのゴールデンなコロきゅう

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「さくちゃんは、なんども、生きてきたんだ。どれも、いっしょうけんめい生きていたんだよ」
 カメオツくんは、話した。
「前のボクは、どんなふうだったのかな?」
 ボクが聞くと、いろいろだよ、とカメオツくんはわらった。

「気になる! おしえてくれる?」
 そういったら、カメオツくんはまん丸の目をうごかした。

「小さなむらで、一番えらいひとだったこともあるよ。やさしくて、たたかいがうまくて、みんなにすごいって思われていたんだ」
「だから、ボク、たたかいごっこがすきなんだ!」
「りっぱな王さまのそばで、上手にダンスをする女のひとだったこともあるよ」
「やっぱりね! ボク、ダンスもだいすき!」

「でね、いつもあたらしく生まれるとき、さくちゃんは、こう思うんだ。せっかくあたらしいボクになるんだから、これまでにやったことがないことを、やってみよう、って」

 あー! わかるわかる。ボクって、そう思うよ! 
 カメオツくんにいわれて、うんうん、とうなずいた。

「たたかいも、ダンスも、たくさんやってきたから、さくちゃんはうまいんだね。でも、たっぷりしてきたから、もういいんだよ」

 ボクは、あたまの中にあるドーガのサイセイボタンをおしてみる。

 小さなむらにいた、たたかっていたボク。
 王さまのそばで、上手にダンスをしていたボク。

 少しもおもい出せないけれど、なんでかな、からだのまん中が、ぎゅっとなる。

「じゃあ、今のボクはなにをすればいいの?」
「それはね、さくちゃんがこれからじぶんで、おもい出していくんだ」
「えー? おもい出せるのかな?」
 ボク、すぐになんでもわすれちゃうからな。
 ちょっと、ジシンない。

「おもい出せても、忘れていたことをおもい出した! ってならないんだ。見つけたって! ってなるの」
 カメオツくんはいった。

「そっか。見つけた! ってなればいいってことか」
 たからさがしなら、たたかいよりもダンスよりも、もっとすきだ。

「カメオツくんは、ボクのこと、よーくしってるね」
「ずっとそばにいて、見ていたもん」
「どのときのボクのそばにも、カメオツくんはいたの?」
「そうだよ」
「だから、こんなにいっしょにいても、あきないんだね」

 ボクがそういうと、カメオツくんの色がかわった。
 いろんなグミをあつめたみたいに、カメオツくんはカラフルになった。

「いっこだけ、いっちゃうとね」
「なあに」
「さくちゃんは、じゆうになりたいんだよ」
「じゆうに? そらをとんだり?」

 ボクがそういうと、カメオツくんはおかしそうな顔をしてうなずいた。
「うみをわたって、いろんなばしょに、いってみたいっておもっているんだよ。そのためには、たくさんやらなくちゃいけないことがあって、さくちゃんは、どんどんいそがしくなるんだ」

「えー、いそがしいの、やだなー」
 おかあさんのベッドのうえで、ゴロゴロしたり、カメオツくんとあそんでいたい。

「今はそうおもっても、きっとたのしくなって、いそがしくっても、だいじょうぶになるんだ。そうすると、キミは、ボクが見えなくなる」
 カメオツくんのまん丸の目は、ボクをじっと見ている。

「えっ? カメオツくんのこと、見えなくなっちゃうの?」
 やだやだ! っていったら、ううん、とカメオツくんは短いくびをよこにふった。

「見えなくなったほうがいいんだよ」
「どうして?」
「そのほうが、さくちゃん、外へ出ていけるから」
「今は、コロきゅうでおうちの中にいるから、カメオツくんとあそべているの?」
「そうそう。コロきゅうがおわったら、どんどん、外へあそびにいくんだ。広いせかいを見るために、さくちゃんは生まれてきたんだから」

 カメオツくんはやさしく話すけれど、ボクはかなしくなった。
 ないてしまいそうになった。
 がまんしようとおもったのに、からだにチカラがはいらなくて、ポロポロと目からナミダがでてきた。

「だいじょうぶだよ、さくちゃん」
 カメオツくんの手が、ボクのほっぺたをさわる。
「ずっとそばにいるから」

 カメオツくんの手は、さわれないけど、さわれている。
 ふしぎだ。
 ちゃんと、あたたかい。


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小説を書いてます。『竜になれ、馬になれ』光文社刊。『有村家のその日まで』『わたしたちの願いは、いつも』(『小さいおじさん』改題)『くらげホテル』、wowow ×Hulu ドラマ『コートダジュールNo.10』5話脚本担当。エッセイhttp://www.boiledeggs.com

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ボクは6さい。4月から1年生…のはずだけど、コロきゅうだから、おうちでゴロゴロなまけてる。 なまけるのは、だいすき。 ちょっとさいきん、大きくなっていそがかったから。 ひさしぶりになまけてたボクのところに、カメオツくんが出てきてくれた。 カメオツくんは、ぼくのだいじなともだち。 いつからいっしょにいるのか、おもい出せないくらい、むかしからの、ともだち。 次男をモデルにした、小さな物語です。 GWに更新していきます。 2.3日に1度、くらい。 全部で6回くらいかな、と思っています。 読んでいただけるだけで嬉しい。 読んでくれた方の、ちょっとした娯楽になれば幸いです。

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